収穫祭のハーベストランチ
収穫祭が始まった神都はいつも以上に活気に溢れていた。
それは朝の市場も例に漏れず、商人たちが声を張り上げて商品をアピールしている。
店先にはカボチャやサツマイモ、キノコや魚といった秋の味覚が豊富に揃い、色味も美しい。
「収穫祭だし、何か限定メニューでも出そうかなぁ」
フロガがそんな独り言を呟く。
収穫祭、といえばやはりカボチャだろうか。
カボチャのグラタンやカボチャプリンなんかは子供も大人も幅広く楽しむことができる。
夜には挽き肉とカボチャを甘塩っぱく煮たり、ニンニクで炒めたりして、酒のつまみとして出そうか。
カボチャ尽くしのハーベストランチもいいだろう。
大体の構想ができたフロガは、早速カボチャを購入し、持ってきた魔具の中にしまった。
他にもいくつか食材を購入して店に戻り、裏庭の小さな畑からハーブやら野菜を採ってきて、厨房で調理を始める。
ハーベストランチはカボチャのポタージュ、カボチャサラダを添えて、メインはコロッケかグラタンにしよう。
鍋型の魔具に切ったカボチャと調味料を入れれば、ポタージュは簡単にできあがる。
「流石にカボチャが被りすぎるかな……」
独り言をまた呟く。
メインだけは別のものにしようか……。
料理を考えながら手早く下準備を進めていくと、店のドアが開いた。
天狐が帰ってきたのだ。
抱えている大容量のリュック型魔具を厨房の入口に下ろすなり、大量のカボチャを見て首を傾げた。
「なんでこんなにカボチャがあるんだ」
「今、収穫祭だろ。 うちも何か作ろうかと思ってさ」
「収穫祭……? ああ、そうだったか」
天狐が興味なさげに顔を背ける。
去年の収穫祭では、天狐は体調を崩して寝込んでいたし、一昨年は旅をしていたから収穫祭がどういうものか知らないのだ。
それに人が大勢集まる場所も天狐は嫌いだ。
恐らく、祭りというものに興味がないのだろう。
「おまいり町にいっぱい屋台が出てるってお客さんが言ってたし、休みに行ってみる? 珍しい食べ物もあるんだって」
「ふうん。 いいかもな」
祭りに興味はないのかと思ったが、耳がピンと立ち、尻尾がユラユラと揺れているのを見るに、意外にも乗り気の様子だ。
その様子に、フロガは思わず笑ってしまう。
「なんだよ」
「いや、別に。 そうだ、ポタージュスープ飲んでみてよ」
できたてのカボチャのポタージュスープに焼いたバケットを添える。
試作したカボチャサラダと、ベーコンも一緒に並べた。
「……甘くて美味い」
天狐の口元が緩み、尻尾がふわふわ揺れる。
甘い物が大好きな天狐だ。 嫌いな訳が無い。
「おやつはカボチャプリンとクッキーにするね」
「上出来だ。 フロガ」
「どういたしまして」
珍しく褒めてくる天狐の顔は満足げに笑っていた。
その顔を見ていると、なんだかフロガまで嬉しくなってしまう。
「クッキー、多めに焼いてテイクアウトとして出そうかな」
「多めに焼くなら私によこせ」
「お客さんの為に作ってるの。 お前の分はおまけ!」
それを聞いた天狐の口が尖るがそれは無視する。
「カボチャの限定ランチ、メインもカボチャだと諄いと思う?」
「そんなもの、カボチャが好きな奴が注文するんだから全部カボチャでいいんじゃないのか」
「それもそうだな。 よし、じゃあメインはグラタンにしよう」
肌寒くなってきた秋の収穫祭。
温かいグラタンをメインにしたハーベストランチは喜んでもらえるだろうか。
そんなことを考えながら、フロガは料理の下準備を進めた。
*****
ハーベストランチは思っていたよりも好評で、あっという間に売り切れてしまった。
女性や子供に人気だったのは勿論、男性客も意外にこのランチを気に入ってくれたようだ。
最後のハーベストランチを注文した中年の男が魔具で支払いを済ませながら、空になった皿を見つめる。
「美味かったなぁ。明日もあるの?」
「収穫祭の期間中はずっとやりますよ。 内容は日替わりですが」
「そうか! じゃあ、明日も来ようかな」
「是非。 あと、これはおまけのクッキーです。 良かったら食べてください」
「へえ、嬉しいねぇ! うちの子に土産ができたよ」
クッキーが二枚入っている小袋を渡すと、男は目尻の皺を深めて嬉しそうに笑った。
「やっぱり収穫祭には菓子がないとな。 助かるよ、マスター」
「……? ありがとうございました」
助かる、とはどういう意味だろう。
不思議に思いながらも、店を後にする男を見送った。
その後も客足は絶えず、テイクアウト用に出したクッキーも好評で、次々と売れていく。
一品料理をテイクアウトで買いに来た主婦も、レジの隣に並べられたクッキーを見るなり手に取った。
「あら、クッキーもあるのね。 一つ貰おうかしら。うちの子が喜ぶわ」
大体の客はそんな事を言いながら買っていく。
クッキーは二枚で五十クルタと手を出しやすい価格にしている。 それに、子供はお菓子が好きだ。
夕飯までの、ちょっとした間食として出すのだろう。
(子供たちが喜んでくれるといいな)
フロガはそう考えつつ、会計を終えた女性の背中に向かって笑顔を向けた。
ランチの営業が終わり、夜に向けての仕込みと少しの休憩をとる。
天狐と一緒に軽い夕食を済ませ、仕込みをして、店のメニューを夜仕様に変えれば開店準備は完了だ。
店を開けると、早速一人目の客が来た。
仕事帰りの青年だ。
カウンター席につくなり、青年はエールを注文する。
「なんかおすすめある?」
「収穫祭なので、カボチャの一品料理をいくつか用意してますよ」
そう言って、フロガはエールを渡すついでにメニュー表の裏側を青年に見せた。
パンプキンスティック、カボチャのにんにく炒め、カボチャのミートパイ等々。
青年は少し悩んでから、パンプキンスティックとミートパイを注文した。
「あとエールもう一杯!」
「かしこまりました」
青年に二杯目のエールを渡し、調理に取り掛かる。
パンプキンスティックは細く切ったカボチャを揚げて塩を振ればすぐに完成だ。
次にミートパイだが、パイとは言ったもののパイ生地は使っていない。 他の国ではシェパーズパイと呼ばれている料理をカボチャでアレンジしたものだ。
甘辛く炒めて香辛料を効かせた挽き肉の上にマッシュしたカボチャを敷き、チーズを乗せて窯で焼く。
この窯に使われている火は天狐が魔法で付けたものだ。
普通の火であれば、このまましばらく待つのだが、魔法で付けた火を使えば料理が出来上がるのも早い。
出来上がった二品を持って行くと、すぐに次の客が来た。
常連のドッドウェルだ。
「よお、マスター。 とりあえずエールね」
「こんばんは、ドッドウェルさん。 収穫祭用にカボチャの料理を始めたんですけど、どうですか?」
「へえ、カボチャかー! 収穫祭といえば、秋の味覚と酒だよなぁ」
ドッドウェルの言う通り、収穫祭が始まってから酒の注文が多くなった。
この時間帯なら、ディナーの方が出ていたのに今は殆どの客が必ず酒を注文する。
「あんた、それ美味そうだね。 俺も同じやつにしようかな」
カウンター席に座り、青年の食べているミートパイを指差す。
話し掛けられた青年は笑顔で頷き、「甘辛くてエールに合うよ」と言ってから、エールを一口飲んだ。
「じゃあ俺も同じやつ頼むよ、マスター」
「はい。 ちょっと待っててくださいね」
程なくして、熱々のミートパイがドッドウェルの前に置かれた。
焼かれたチーズとカボチャの香ばしい匂いだけで酒が飲めそうだ。
「うまそー! いただきまーす! うまーい!」
置かれてから口の中に運ぶまでが恐ろしく早かった。余程空腹だったのだろう。
冷ます事もせず、熱々のまま勢いよく食べる姿に、フロガは思わず心配になってしまった。
口の中は大丈夫だろうか。
「マスター、これうまいよ!」
「よかった。ありがとうございます」
「エールもう一杯ね!」
「かしこまりました」
一気に飲み干したエールを追加し、ドッドウェルはミートパイをパクパクと口に運ぶ。
この様子を見ると、口の中は問題ないようだ。
エールが来たついでにもう一品頼もうかとドッドウェルがメニューを眺める。
ふと、隅に「クッキーの持ち帰りあります」という文字を見かけた。
「クッキーなんて珍しいね。 収穫祭だから?」
「いえ、特に意味はなかったんですけど……収穫祭とクッキーって何か関係あるんですか?」
「なんだ、知らないのか? 収穫祭の期間中は、夢にカボチャ顔のオバケが出るらしいぜ」
「カボチャのオバケ、ですか……」
それは初耳だ。
ドッドウェルが言うには、枕元にお菓子を一つ置いておけば夢の中にオバケは現れないらしい。
どこにでもある迷信の一つだが、この話を怖がる子供達は収穫祭中は必ず親にねだってお菓子をかってもらい、枕元に置くのだとか。
だから、今日はクッキーが売れたのかとフロガは納得した。
「ちなみにカボチャオバケの話を人から聞くと必ず夢に現れて、夢の中や現実でイタズラされるそうだ。 起きたら物の配置が変わっていたりするらしい」
「へえ、伝染する系の話ですか。 面白いですね」
「だろ〜? 俺、神都に来たばっかりだからさ、こういう話いっぱい集めてるんだよね。 俺の所にもオバケ来るかな!?」
そう言いながらドッドウェルは目を輝かし、追加でソーセージを注文した。
作り終える頃には数人の客が来店していて、皆一様に収穫祭用の料理を注文する。
昼のランチに引き続き、夜もメニューは好評だ。
ついでに酒の勢いも止まらず、フロガまで客から勧められる始末だ。
更には一度帰ったドッドウェルが、どこかから拝借してきた大きなカボチャを抱えて戻って来た。
「カボチャオバケを捕まえたぞ!!!」
そう言い残すと、ドッドウェルは再び帰って行った。
もちろん、ドッドウェルが持って来たのは顔が彫られたただのカボチャである。
そんな騒動もあったが無事、閉店時間を迎える。丁度材料もクッキーも無くなった。
こんなに好評なら、明日もクッキーを焼こうか。
フロガはそう考えつつ、戸締まりをして二階へ向かった。
──リビングのソファには天狐が狐の姿で眠っている。
九本の尻尾で顔と身体を包み、丸くなっている姿は大きな毛玉のようだった。
夏が終わり、少しずつ寒くなっていく中で、天狐の毛並みも徐々に質量を増して更に柔らかくなっていく。
そんな天狐を抱き上げて、寝室へ一緒に連れて行った。
ベッドへ下ろし、フロガもその隣に寝転んでランプを消す。
振り返ると天狐がいつの間にかヒトの姿になっていて、重い瞼を開いた。
「酒臭い」
「ちょっと飲んだからね」
収穫祭だからマスターも飲もう、と客に誘われたのだ。
誘われれば飲むしかない。
酔わない程度に飲んだつもりだが、その匂いに天狐は眉根を寄せた。
しかしそこまで嫌ではないようで、フロガの胸に顔を埋めて再び目を閉じた。
「カボチャの匂いもする」
「カボチャ料理、好評だったよ。 クッキーもね」
「そうか」
天狐の柔らかな髪を撫でて、抱き締める。
大きな耳に顔を寄せると、クッキーやカボチャとは違う甘い香りが鼻腔を満たしていった。
やがてウトウトと眠くなってくるが、フロガはふとドッドウェルの言っていた迷信を思い出した。
「天狐、収穫祭中の夜にはカボチャオバケが夢の中に出てくるらしいよ」
「は?」
「夢の中と……現実にも出てくるんだって……この話を聞くと絶対出てくるらしいから……気を付けろよ……」
「……あ? おい、フロガ」
呼び掛けたが、フロガは既に寝息を立てていた。
「……なんで今その話した?」
そう呟いて、天狐も眠りについた。
子供に言う事をきかせるための、馬鹿馬鹿しい迷信だ。
そう思って、天狐は気にも留めなかった。はずだった。
*****
その夜、天狐は夢を見た。
暗い空間の中で、遠くに光がぽつんと見える。
そこに向かって歩いていくと、光の下に扉が見えてきた。
扉を開けるとそこは、小さな部屋だった。
なんとも可愛らしい装飾が施された部屋には長テーブルがあり、その上には様々なカボチャ料理とお酒が並んでいる。
「なんだここは……」
これからパーティでも始まるのだろうか。
戸惑いながら、部屋の中を見渡していると、ふと背後に気配を感じた。
反射的に素早く振り返る。
「ば……馬鹿な……っ!」
そこには、カボチャを被った人形の何かが立っていた。
目と鼻と口が彫られているが、中は真っ黒の空洞で何も見えない。
首から下は黒いケープで覆われていて、人であるかどうかも怪しく思えた。
「カボチャオバケ……」
呆然と立ち尽くして見つめていると、カボチャはゆっくりとこちらに近付いてきた。
思わず後ずさるが、背中に壁が当たった。
逃げ場がない。
そう思った瞬間、天狐は目を覚ました。
「……夢か」
変な夢だった。
背中には薄っすらと汗が滲んでいて、顔が熱い。
隣ではフロガが健やかな寝息を立てていたのだが……妙な違和感を覚えた。
そっと布団を捲くって確める。
違和感の正体は簡単だった。
フロガが服を着ていないのだ。
しっかりと六つに割れた腹筋と逞しい胸板が捲った布団の隙間から見える。どうやら、身に付けているのはパンツだけのようだ。
暗い布団の中でも映える星花柄のパンツは、何時ぞやにフロガが神都の土産屋ではしゃぎながら買ったものだった。
そんな星花パンツ以外の服はベッドの下に脱ぎ散らかされている。
「昨日は何もしていないはずだ……」
その証拠に天狐はちゃんと寝間着を着ている。
いつもと同じ、黒色の薄いワンピースは一つも乱れていない。
念の為、ワンピースの中を覗いてみたがそういった形跡はなかった。
(まさか、これがカボチャオバケの……)
そこまで考えて、天狐は頭を振った。
ありえない。 ただの子供騙しの迷信だ。
そもそも誰かが家の中に侵入したのなら、天狐かフロガのどちらかが気付く。
どうせフロガは酔っ払って服を脱いだのだろう。
そう思うことにして、天狐はベッドから這い出た。水でも飲んで落ち着こうと思ったのだ。
寝室のドアノブを回し、リビングの奥にあるキッチンへ向かおうと暗い中で足を進める。
ふと、テーブルの上に丸くて大きい何かがあることに気づいた。
なんだか嫌な予感がする。
近寄ってみて、それを認識した瞬間、天狐は全身の毛を逆立てた。
「───っ!!」
悲鳴すらあげなかったが、思わずそれをテーブルごとひっくり返す。
どすん、という大きな音と共にそれはゴロゴロと転がり……天狐の足元まで来た。
「ぴゃっっっっ!!!!!」
狐の鳴き声というものは、犬のような猫のような、はたまた海洋生物のような、何とも不思議な声である。
発音も独特で、よく言われている「コンコン」ではなく「コャン」と言った方が近い。
そんな何とも言えない悲鳴と、テーブルがひっくり返った音を聞き付けたフロガがパンツ一枚のまま走ってきた。
「どうした!? ……天狐?」
驚いて尻もちをついている天狐と、ひっくり返ったテーブル。 そしてその脇に落ちているのは、大きなカボチャだった。
丁寧に顔が彫られたそれは、収穫祭中によく見る鬼火を象ったカボチャのオバケを真似たものだ。
「なんでこんなものがあるんだよ!!!」
若干涙目になっている天狐が叫ぶ。
フロガはそのカボチャを手に取ると、ゆっくりと首を傾げて少し考える素振りをした。
「あ、思い出した。 ドッドウェルさんの忘れ物だ」
「誰だ」
「常連さんだよ。酔っ払って帰ったと思ったら戻ってきて置いたまま帰っちゃったんだよ」
「なんでそれがここにあるんだ?」
「……なんでだろう? 俺が持ってきた?」
「知るか!! そんなもん、さっさと捨ててこい!!」
「お客さんの忘れ物なんだから、捨てられないよ」
そう言ってフロガはテーブルを定位置に戻し、再びその上にカボチャを置いた。
恨めしそうに天狐がそれを睨みつけているのを見て、フロガはまた首を傾げる。
「どうしたんだよ、天狐。 ただのカボチャだろ」
「お前が馬鹿な話をしたせいだ……」
「ああ、カボチャオバケの……」
「それ以上言うな」
必死の形相で耳をぺったりと後ろに倒す天狐を見て、フロガは察した。
カボチャオバケの夢を見たから、こんなに怖がっているのか、と。
「なるほどね。 大丈夫、俺はカボチャの夢見てないし、ただの迷信だよ」
「……そんな事わかってる」
「枕元にお菓子を置いておけば出てこないそうだから、飴でも置いておこう」
未だに耳を倒している天狐を宥めるように、棚の中から飴を一つ取り出す。
それから天狐の肩をポンと叩いて、寝室へ戻ろうと促した。
「……もうすぐ明け方だ。 狩りの準備をする」
「変な夢見て疲れただろ。 今日は良いから一緒に寝よう」
ほら、おいで。 と、フロガが手招きする。
少し考えた天狐だったが、その後ろについて行き、大人しくベッドの中に入った。
枕元に飴を置き、散らかっている衣服を着直して、フロガもベッドへ入る。
「そういえばお前、なんでパンツしかはいてないんだ」
「え? お前が脱がせたんじゃないの?」
「なんでだよ。 脱がすわけないだろ」
天狐が不思議そうにたずねると、フロガが少しだけ視線を逸らした。
「いや……その……最近あんまり構ってなかったから、そういうことかなって」
「……寝てる奴を襲う程飢えてない。 やっぱり自分で脱いだんじゃないのか」
「そうだな。 ちょっと飲みすぎたのかも」
そう言うと、フロガは天狐を抱き寄せて背中を撫でた。
腕の中の暖かさに安心したのか、フロガを眺めていた天狐が目を閉じる。
気持ち良さそうに身を捩り、やがてゆっくりと意識を沈めていく。
その様子を見届けてから、フロガも二度目の眠りに落ちた。
次の日の夜、天狐は枕元にクッキーを置いた。
あの迷信を信じている訳では無いが、念のためだ。
ドッドウェルが忘れていったカボチャがそのままリビングに置いてあるのも気になる。
あのカボチャを見ていると、まるで昨夜見た不気味な夢の中から出てきたような気すらするのだ。
リビングに続くドアをしっかりと閉め、毛布を被って、きつく目を瞑る。
二度寝したときはカボチャの夢を見なかったし、思い込みや不安が夢に影響してしまったのだと思いながら、天狐は眠った。
しかし、そんな天狐の思い虚しく二度目の悪夢が始まった。
悪夢の舞台はこの家だ。
昨夜のカボチャオバケが、天狐を探して家の中を徘徊している。
そして、カボチャオバケが天狐の近くまで来た瞬間…………そこで天狐は目を覚ました。
「───っっっ!!!!」
声にならない悲鳴を上げて、天狐が飛び起きた。 冷や汗をかきながら胸を押さえ、荒くなった呼吸を整える。
その最中で、天狐は昨日と同じ違和感に気付いた。
──枕と毛布が裏返っている。
他にも、サイドテーブルやスツールも同様に逆さまになっているのだ。
一体どういうことなのか。
枕元にお菓子を置いたのに、カボチャオバケが現れたのか……?
「そんなはずはない。 そんなものいるわけがない」
天狐は言い聞かせるように呟くと、眠るフロガの腕を持ち上げて胸板に顔を寄せる。
昨日よりも強い酒の匂いがしたが、そんなことにも気付かないほど、天狐は動揺していた。
──更に次の日の夜。 枕元には大量のクッキーと色とりどりの飴やマカロンが所狭しと並べられていた。
もういい加減にしてほしい。
天狐はそんなことを思いながら、毛布を被る。
今度の夢は、この部屋の中。
眠っていた天狐が目を覚ますと、いつも隣にいるはずのフロガがいない。
リビングへ続くドアの隙間から、光が漏れている事に気付いた天狐はゆっくりと身体を起こす。
フロガが営業が終わって、戻ってきたところなのだろう。
リビングから微かに聞こえる足音とフロガの声に安堵し、ベッドを出て顔を見ようとリビングへ続くドアを開ける。
「フロガ……」
声を上げた瞬間、ゴツンと天狐の足に何かがぶつかる。
それは、あのカボチャオバケの首だった。
「びゃっっっっ!!!!」
悲鳴を上げる天狐。
いつもなら、ここで目が覚めるはずなのに、一向にその気配がない。
バクバクとうるさくなっている心臓、滲む冷や汗、見つめてくるカボチャオバケ。
──これは全て現実だ。
そう直感した天狐は足元のカボチャオバケを蹴り上げて、顔を上げた。
天狐の大きな瞳が、更に大きく見開かれる。
「フロガ……何してんだ、お前……」
天狐の呟きに、フロガが振り返る。
ほんのりと赤く染まった顔、手には酒の瓶、テーブルの上には何故か大量のお菓子が綺麗に並べられていた。
なんてことはない、酔っているのだ。
しかも、近年稀に見る程の泥酔である。
「わあ〜、てんこぉ。 かわいいねぇ」
ふらつく足取りで、フロガが天狐の大きな耳に顔を寄せ、くんくんと匂いを嗅ぎ、頭を撫でた後に尻尾ごと強く抱き締めた。
「尻尾もふもふだねぇ、かわいいねぇ」
天狐は全てを察した。
この二日間の怪奇現象……というほどの物ではないが、謎のイタズラは全て酔っ払ったフロガがやったものだ。
収穫祭で浮かれた客達に酒を勧められ、少し飲むつもりが、いつの間にかタガが外れて飲めるだけ飲んでいた。
きっと、そんな所だろう。
「おい、フロガ」
「なに? チューする?」
「しない」
即答すると、天狐は思い切りフロガを突き飛ばす。
よろめいたフロガはそのまま後ろにあったソファに倒れ込むが、そこに向かって天狐はキッチンから持ってきた水をぶっかけた。
「うぅ……」
酔いが醒めてきたのだろう。
徐々に冷静さを取り戻していく様子のフロガを見て、天狐は大きくため息をついた。
「醒めたか」
「気持ち悪い……」
「吐くならトイレにいけ」
トイレに駆け込んだフロガが戻ってきたのは、三十分程経ってからだった。
ぐったりとした表情で、とぼとぼと歩いてきたフロガが天狐の隣に腰をおろすと、そのままソファにうなだれる。
「ごめん……」
「お前、昨日も飲んでたのか」
「そうだな……飲んでた」
「枕や家具ひっくり返したのはお前か」
「え? ……そうかな……そうかも……」
うなだれながら答えるフロガに、天狐は二度目の大きな溜め息をつく。
人騒がせな男だ。
やはり、カボチャオバケなんていなかったのだ。話の伝染なんてしていないし、結局酔っ払いの戯言にすぎない。
床に転がるカボチャが空洞の瞳を向けているが、もう怖くも不気味とも思わなかった。
今は只々邪魔でしかない。
「あのカボチャ、いつまで置いておくつもりだ」
「ドッドウェルさん、昨日も今日も来なかったんだよ。どうしたのかな……」
「知るか」
そう言って天狐は立ち上がり、寝室へ戻ってしまった。
しばらくソファでうなだれていたフロガも、後を追うように寝室へ行き、天狐の隣に潜り込んでくる。
「おやすみ、天狐」
「酒臭い……離れろ」
絡んできたフロガの腕を振り解こうとしたが、無理矢理抱き込まれてしまった。
諦めて力を抜くと、フロガの寝息が聞こえてくる。それに釣られて眠気に襲われた天狐は、瞼を閉じて眠りについた。
翌日の夜。
枕元にあったお菓子は綺麗に片付けられて、大体が天狐の腹の中に収まった。
いつもならフロガに怒られるのだが、数々の奇行で天狐を悩ませてしまった負い目なのか、フロガは何も口を出さなかった。
お菓子もたっぷり食べて、天狐は久し振りに気持ち良くベッドに入る。
あの目障りなカボチャはまだあるが、もう怖くない。
今日はきっと、悪い夢は見ないだろう。
──天狐が眠っている中、ヴァルムの営業は終わりを迎えていた。
店の片付けを終え、戸締まりを確認している最中に、店のドアベルが鳴る。
「すみません、今日はもう……」
言い掛けたところで、フロガは言葉を止めた。
訪ねてきたのが、ドッドウェルだったからだ。
「ドッドウェルさん!」
「ごめん、閉店なのはわかってるんだ」
申し訳なさそうに眉を下げて、手には何かが入った紙袋をぶら下げている。
「マスター……俺、ここにでかいカボチャ忘れていっただろ?」
「ああ、あのカボチャですね! 今持ってきます」
ようやくあのカボチャを返すことができる。
眠っている天狐を起こさないように、リビングの隅に転がっているカボチャを拾い上げ、店まで持って行って、ドッドウェルに手渡した。
「悪かったね、マスター。 これ、俺の知り合いの物でさ、めちゃくちゃ怒られたよ」
「そうだったんですか。 すみません、妻が足を引っ掛けまして……壊れてたりしませんか?」
「ああ、良いんだ。 むしろ、壊れたほうが……」
何か言い掛けたドッドウェルが唇をぎゅっと噤む。
聞き返そうとフロガが口を開きかけたが、それを遮るように、ドッドウェルは手に持っていた紙袋を差し出した。
「これ、良かったら飲んでよ。 イタの珍しい洋梨酒なんだ」
ドッドウェルが差し出した紙袋の中には、細い瓶の酒が二本入っていた。
黄色く濁ったその酒は甘酸っぱく、洋梨の果汁がたっぷりと入ってるそうだ。ヨーグルトのようなトロリとした舌触りは、イタの方では女性に人気のデザート酒なのだとか。
「へえ、美味しそうですね……あ、でも……」
「ん? どうした?」
「俺、最近お酒でやらかしてまして……怒られるかな」
「珍しいね、マスターが酒で失敗するなんて」
「昨日は別なんですけど、一昨日は俺もそんなに飲んだつもりはなくて……。 それで妻に呆れられてしまったんです」
「へえ……」
ドッドウェルが、少しだけ目を伏せる。
何か言いたげだが、それを言葉にすることはなく、代わりに小さく微笑んでみせた。
「これ、上手い酒だからさ、奥さんにお詫びとして飲ませてよ!」
「いただきます。 ありがとうございます、ドッドウェルさん」
ドッドウェルはカボチャを抱えると、ドアへ向かう。
しかし、ふいに立ち止まって振り返った。
「なあマスター。 俺がカボチャを忘れて行ってから、何か変な事起きなかったか?」
「え? 変な事……? いえ、なにも……」
「そうかい、そりゃよかった。 いや、何でもないんだ。 じゃあおやすみ、マスター」
ドッドウェルはそれだけ言うと、店をあとにした。
──天狐は今夜も夢を見た。
暗い無機質な部屋の中で天狐は一人でいる。
家具らしきものも、生活感も一切無いそこは、部屋というよりは牢獄のようにも思えた。
ひとつだけある窓の外は青空が出ていて、爽やかな草原が広がっているのだが、この部屋には一切光が差し込んでいない。
不気味で仕方がなかった。
狭くて何も無い空間なのに何かが迫ってくるような気がしてならない。
早くここから出たい。
その一心で天狐は壁を触り、出口を探したが、それらしき物は見当たらない。 窓も割ろうと試みたのだが、何をしても傷ひとつつかないのだ。
次第に焦りを覚え始めた時、どこかから声がした。
『天狐』
複数の声だ。
大人の男と女が恐らく十数人……どれも全て聞き覚えのある声だった。
(嫌だ……)
その声を聞いた瞬間に、酷い嫌悪感が込み上げてきた。
逃げなれければと思うのに、恐怖が全身を支配して動くことができない。
目の前の窓から見える草原は、まるで絵画のように草一つ動くことが無く、それが更に恐怖を煽った。
後ろからゆっくりと近づいてくる足音に反応して、大きな耳が恐怖に垂れ下がる。
今すぐ走って逃げなければ。
そう思った瞬間だった。
「天狐」
その声はすぐ後ろからした。
びくりと跳ねた肩を掴まれ、振り向かされる。
そこにいたのは、フードを深くを被った黒い服の者たちだった。
人数は恐らく十を超えている。
皆、フードの中の顔は部屋が暗くてよく見えない。
辛うじて見えるのは、間近で天狐の肩を掴んでいる男の瞳。
その瞳を見た瞬間、天狐は息を飲んだ。
「これは……夢だ……」
天狐が呟く。
すると、男は頭を振った。
「天狐、甘い夢を見ていたようだね」
「違う」
「違わない。 こちらが現実だ」
「黙れ」
必死で絞り出した声は震えていた。
声だけではない、足も腕も身体全体が震えている。
そんな天狐の様子と反抗的な言葉に、男はまた頭を振った。
「私によくそんな口が利けたな」
先程よりずっと低いトーンの声に、天狐の身体がびくりと跳ねる。 目頭が熱くなり、身体の震えが止まらない。
「この、役立たずの化け物め」
そう言って男が拳を振り上げた。
瞬間、天狐は目を覚ました。
心臓が早鐘を打っている。
呼吸が荒い。
汗が止まらない。
本当に今のは夢だったのか?
この目を閉じて開けば、またあの場所にいるのではないのはないのか……。
未だ拭えぬ不安感から、瞬きすらも恐ろしいと思った。
そんなとき、寝室のドアが開いた。
「あれ、天狐まだ起きてたのか」
ドアの向こうから現れたのは、フロガだった。
寝巻きに着替えており、手には水の入ったコップを持っている。
「また怖い夢でも見たのか?」
優しく尋ねる声に、天狐は胸が苦しくなった。 今声を出せば、きっと情けない震えた声が出てしまうだろう。
黙って俯いていると、フロガが顔を覗き込んできた。
「おい……顔色悪いぞ」
驚いたフロガの手が頬に伸びてくる。 反射的にそれを避けた天狐が、ハッと息を呑んで顔を上げた。
怯えを含んだ琥珀色の瞳と青白い顔に、フロガが眉根を寄せる。
「どうしたんだよ、天狐」
「……なんでもない」
「何でもない事ないだろ。 そんな顔して」
そんなに酷い顔をしていたのだろうか。 と、天狐は再び顔を伏せる。
しばらく黙っていたが、やがて小さく口を開いた。
「昔の夢を見た」
「昔って、封印される前の?」
「ああ、そうだ」
あのときも、夢を見ていた。
安らぐような音を聞き、美しいものを見て、美味しいものを食べる夢。
まるで、今過ごしているこの時のような。
何も言わずに見つめているフロガを、天狐は見上げる。
「ここは現実か?」
思わずこぼれた問いに、フロガが少しだけ目を見開く。
それから小さく息をはいた。
「当たり前だ。 天狐、手を出して」
不思議そうな顔をしながらも、天狐は素直に手を差し出す。
その手を包んでそっと握ると、フロガは微笑んだ。
「ほら、ちゃんと温かいだろ。 夢だったら、体温なんかわからないよ」
フロガの高い体温が掌から伝わってくる。
その温もりは、強張った身体を解してくれるような気すらして、天狐はゆっくりと力を抜いた。
「さあ、寝よう。 あのカボチャも返したし、きっともう悪夢は見ないよ」
「ようやく取りに来たのか……」
思えば、あのカボチャが来てから悪夢を見始めた。
怖い話を聞いてしまったから、きっと意識してしまっていたのだろう。
安堵の色を浮かべる天狐を、フロガは横になるように促した。
「今週は夜の営業は休もうか。 最初から一緒に寝ていれば怖くないだろ」
「……そんなことしなくていい」
「俺が心配なの。 元はと言えば俺があんな話をしたのも悪かったし」
そう言って、いつものように天狐を抱き寄せた。
温かな腕の中は異国の花のような香りがする。 これは石鹸の匂いなのか、フロガの身体から発せられているものなのか、どちらかはわからないが、天狐はこの匂いが好きだ。
心地良さそうに目を瞑る天狐を眺めながら、フロガが続ける。
「昔……俺が辛かったとき、お前もこうしてくれただろ」
「そうだったか。 覚えてないな」
「俺は覚えてるよ」
懐かしむように目を閉じ、フロガはぼんやりと呟く。
天狐はそれに答えることなく、胸の中に顔を埋めて穏やかな心音を聞いていた。
やがて、どちらともなく眠りにつく。
この日から、天狐は悪夢を見ることはなくなった。
*****
大きなカボチャを抱えて、ドッドウェルは帰路を歩く。
今日は大好きな酒を飲むのを我慢して手土産を買い、無くしたカボチャの行方を追った。
まさか行きつけの食堂にあるなんて、とんだ失態を犯してしまった。 と、ドッドウェルは深い後悔と申し訳無さに苛まれ、肩を落とす。
「本当に何もなかったのかなぁ。 でもマスターは元気そうだったし、大丈夫だよな」
そんな独り言を腕の中のカボチャに向かって呟く。
ドッドウェルが心配するのも無理はない。
このカボチャは、とんでもない代物なのだ。
西区の魔法技術研究所を通り過ぎ、その裏側の更に裏側にある無機質な黒い家が、ドッドウェルが居候しているところだ。
「ただいま。 カボチャ回収してきたぜ」
重い鉄のドアを開けると、そこは住居というよりは研究所と何ら変わりのない部屋であった。
よくわからない色の薬品、解読不可能な書物、布が被された蠢く箱。何一つ視界に入れたくないが、これでもかと言う程に主張しているそれらは嫌でも目につく。
「おかえりドッドウェル。 私は別にそれを回収しなくても困らなかったのだがね」
そんな奇妙な物の中心に置かれた椅子に足を組んで鎮座する男が一人。
長い黒髪を三つ編みにし、エメラルドグリーンの瞳はどんよりと曇っている。
ドッドウェルと同じ顔、同じ姿をしたその男は、ドッドウェルとは全く異なる冷たい発声で、彼を出迎えた。
「そうは言うけどよお、クリフ。 このカボチャ、人を襲うんだろ」
「正確には近くにいる者の夢を侵食し、その夢でターゲットを発見し、現実世界で刺し殺すというものだ。 カボチャが先に刺されてしまうと機能しなくなるという欠点はあるが、このただのカボチャから身体が生えてきて明確に殺意を向けてくるんだぞ! 素晴らしいと思わないか、ドッドウェル!?」
「意味わかんねーし、急に早口でテンション上がって気持ち悪ぃよ」
「意味がわからない、か。 仕方がない。 君にはレベルの高い話なのだからな……」
一瞬で抑揚した声は一瞬で元の冷たさを取り戻した。
エメラルドグリーンの瞳が、興味なさそうにドッドウェルからそらされると、再び机の上にある書物に移される。
「とにかく、こんなもんその辺に放っておくなよな」
「私は君が持って行ってくれて感謝しているんだよ。 未遂に終わるなどと思っていなかったからね」
「なんで未遂におわったってわかるんだよ」
「カボチャオバケversion2がつまらなさそうな顔をしている」
「いつの間にそんな名前ついてたの?」
ドッドウェルが問うが、それに返答はなかった。
変わりに深い溜め息がクリフから漏れる。
「それにしても、天才であるこの私が作ったカボチャオバケから逃れるなんて、面白そうな奴だな。 どこの誰なんだ?」
「絶対言わねえ。 いいか、俺の聖地に手ぇ出すなよ」
「ふふふ。 それはどうかな」
声は笑ってはいるが、顔も目も笑っていない。
この男……クリフ・リンドールは錬金術師である。
自分の作ったものに絶対の自信を持っている彼は、いつも実験と称して奇妙な物や薬をつくるのだが、どれも物騒なものばかりだ。
今回のカボチャも、一見はただのカボチャであったが非常に危険なものだった。
「あんたの趣味に口出しするつもりはないけどよ、自分の範囲内でやれよな」
「ドッドウェル。 実験というのは、時に外部の協力も必要なのだよ」
「うるせいよ。 じゃ、俺はもう寝るからな」
「君、私の姿形を真似るのであれば、頭脳まで引き継げないものかね。 あまりにも頭が悪すぎる」
「そいつは無理だな。 あんたみたいなイカれた思考になりたくないんでね」
クリフが明らかに残念そうな顔をする。
そしてすぐに無表情へ戻ると、黒い白衣を靡かせて、カボチャを大きなゴミ箱の中に入れてしまった。
そんなクリフに呆れながら、ドッドウェルは自室の扉を閉めて、ベッドへ寝転がる。
「あいつの姿真似、そろそろ辞めて別のやつにしようかな……」
ドッドウェルがぼやく。
しかし、それをしないのはクリフといるのが面白いからである。
ヒトの姿形を真似る魔物であるドッドウェルは、ハムロ鉱山跡で過ごしていた。
食べなくても腹は空かないが、冒険者の所持品を漁ることを趣味としていたドッドウェルはヒトの生活に大いに興味があった。
そして今、ドッドウェルの暮らしは非常に充実している。
お気に入りの店はいくつも見つけたし、選ばなければ労働があり、金が手に入る。
金が手に入れば、また美味しい酒が飲めて飯が食える。
面白い同居人と、美味い飯と酒。
こんな幸せな生活ができる事を気付かせてくれたクリフに、ドッドウェルはミジンコ程度の感謝をしているのだった。




