最愛
私には、最愛がいる。
最愛、という言葉はふさわしくないかもしれない。
彼以外、私の世界に誰もいらないのだから。
毎日、早朝に出勤する彼にあわせて起きて。
ブラシで彼の髪を梳いて
玄関先でハグをして、キスをひとつ唇に送り、見送ったら二度寝。
目覚ましの音で起きて、身支度を整えて仕事に向かう。
帰宅したら、お風呂に入って。
家事や資格試験の勉強をしつつ、趣味のゲームに没頭する。
ぴこん、とラインの通知が来て、スマホを確認するといつものスタンプがひとつ。
『これから帰ります』
スタンプに返事をした後、彼の為にお風呂の用意をして、家のドアが開くのを待つ。
おかえりのハグ。
ただいまのキス。
こんな生活を、40代のオジサンとオバサンが、延々と続けているなんて。
世間の若い子達に知られたら「年甲斐もなく」なんて言われるのだろうか。
まぁ、誰がなんと言おうと、欠片も気にはしないけれど。
愛してる。
愛してる。
愛してる。
貴方以外、私の世界に誰もいなくていい。
貴方がいてくれるなら、私はそれだけで、ううん、それが、一番幸せ。