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『流星のリビオン』  作者: 髙橋彼方
第二章『新たなる旅立ち』
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『新たなる旅立ち』2

 シュライが店を去った後、ドラゴンローズの皆は改めてリュカの優勝と流星候補生になったことの祝杯をあげていた。


「俺は、やるからには一番になるぜぇ!

 エリート共を蹴散らしてやる!」


 酔ったデイヴは椅子の上に立つと、雄叫びを上げる。


「うおぉぉぉぉぉぉお!

 リュカ、やってやろうぜ!」


 リュカは周りの客が迷惑そうにしているのを気にして顔を赤くさせると俯いた。


「もう! 飲み過ぎだよ!」


 そう言うと、マイカがデイヴを無理やり椅子から下ろす。


「見てるこっちが恥ずかしくなる」


 マイカに叱られるとデイヴはしっぽりと酒を飲み始める。

 すると、テリーがライムの方を向く。


「明日の昼、三時に迎えが来るって言ってたな。

 今日のうちに機材を運ぶ準備をしないと」

「そうだな……」


 ライムが立ち上がると、一同は一斉に注目する。


「明日から、このドラゴンローズは地球防衛軍に所属し、新たなフェーズに入る。

 だが、これからもチームの方針は変わらない。

 俺らは家族だ! 何かがあれば全力で助け合う。

 そして、やるからには高みを目指す!

 エリート共にドラゴンローズの力を見せつけてやるぞぉ!」

「「「「「「オォォォォォォ!」」」」」」


 一同は雄叫びを上げると会計を済ませて店を出て行った。



 基地に戻ると、一同は夜通しで荷物をまとめていた。

 その中でも、特にバッカスは周囲に注意しながら精密機器をケースにしまっていく。


「そのデバイスはシャットダウンするまでコンセントは抜くなよ」


——ブチッ……。

 コンセントにマイカが足をかけてしまい、勢い良くコンセントが抜けた瞬間、部屋の中でも特に大きな黒いコンピューターの電源が切れてしまう。


「あっ。 ごめん……」


 マイカはバッカスに向かって申し訳なさそうに手を合わせる。


「気にしないで。 なんとかするよ」


 バッカスは深くため息を吐くと、黙々と作業に戻った。

 皆が黙々と作業する中、リュカは工具箱を持ってリビオンが置かれた倉庫へ向かった。



 真っ暗な深夜の倉庫にリュカは入ると蛍光灯のスイッチを押す。

 すると、灯に照らされたボロボロのリビオンがポツンと佇んでいた。

 リュカは激しい戦闘を乗り越えてきたリビオンを感慨深く見つめる。


「遅くなってごめんな! 今から修理するから」


 工具箱をその場に置くと、棚から部品をかき集めて黙々と修理を始める。

——ガシャッ!

 リュカがリビオンのボンネットを開けると、エンジンの一部が焼け焦げていた。


「今日は本当に踏ん張ってくれてありがとな。

 一番のMVPはお前だよ」


 そして、エンジンの部品を外して替えのパーツを付けていく。

 ふと、リュカはリビオンの窓から見えたコックピットにぶら下げられたドックタグを眺めると色々な感情が押し寄せた。


 もう直ぐに、ここからも出ていくんだね……。


 辺りを見回すと、壁にリュカが今まで違法レースで得た沢山のトロフィーやメダルが飾られていた。


「今日まで本当に長かった……」


 再び、リュカはドックタグを見つめると笑みを浮かべる。


 こんなチャンスは二度とは来ない。

 絶対に流星へなって見せる!


 リュカのリビオン修理とメンバーの支度は夜明けまで続いた……。




× × ×




 日はすっかり昇り、皆は基地中央にあるリビングにライムを囲むように集合していた。


「もう、あと一時間程で防衛軍の迎えが来る。

 念のためだが、忘れ物は無いか?」


 マイカの号令を聞くと眠い目を擦りながら一斉に頷く。


「よし! じゃあ最後に先輩へ挨拶に行くぞ」


 そう言うとライムはリュカに向かって微笑む。

 それに対してリュカも微笑み返した。



 基地を出ると、リュカたちは谷を登ってリュウジの墓に向かった。

 墓に着くと、リュカはポケットからドッグタグを取り出して自身の首に着ける。

 そして、各々がお供え物を墓に置くと手を合わせた。

 一同が顔を上げると、リュカが墓の前で腰を下ろす。


「皆んな、少し一人にしてくれる?」

「ああ。分かった」


 ライムたちは墓に向かってお辞儀をすると、谷を少し降りたところまで移動し、リュカを待った。

 リュカはお供物に置いた瓶コーラの栓を二つ開けると、一つを墓の前に置く。

——キーンッ!

 瓶と瓶で乾杯させると、リュカは自分のコーラを一口飲んだ。


「お兄ちゃんとは、コーラよく飲んだよね……」


 墓に向かってリュカは微笑みかける。

 そして、脳内で過去に自分が上手くいかずに拗ねていると、リュウジが励ましながら一緒にコーラを飲んだ記憶を思い出していた。


「軍の仕事が大変だったのに、その合間を縫って私の練習に毎日付き合ってくれてさ。

 リビオン候補生になるって決めてから適正テストのA +判定になるまで本当に大変だったよね……」


 リュカは少し寂しそうに俯く。


「お兄ちゃんと過ごした時間は本当に楽しかったな」


 リュカは墓に向かって昨日のデッド・ワイズ・サーキットで貰った黄金のメダルを胸ポケットから見せるように出す。


「昨日、デッド・ワイズ・サーキットで何とか一位になったんだ!報告に直ぐ来れなくてごめんね。

 でも続きがあって、お兄ちゃんの生徒だったシュライって人に会った。お兄ちゃんが軍でやってた仕事についても色々聞かせてもらったよ。

 あと、私が戦場に出されないようにしてくれていたことも……。

 本当に守ってくれてありがとね」


 リュカは色々な思いが込み上げ、天を仰いだ。


「それで、シュライの誘いを受けて私も遂に流星候補生へなったんだ。

 ここまで来れたのはお兄ちゃんにお母さん。それに、私をここまで支えてくれた皆んなが助けてくれたからだよ」


 リュカは着ているドラゴンローズの作業着を見つめる。


「一度は諦めてしまっていた夢だけど、このチャンスで絶対に掴んでみせるよ!

 それまで、ここで待っててね」


 手に持っていたコーラを飲み干すと、墓の前に置いたもう一つも飲み干して立ち上がる。


「じゃあ、行ってくるよ……」


 リュカは墓に向かって手を振ると皆が待つ方へ向かった。



To be continued…

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― 新着の感想 ―
リュウジの思い、リュカとライムたちの絆…とってもいいですね。胸が熱くなりました。 リビオンによるレースシーンは迫力があって手に汗握りました…! この先、リュカがどう成長していくのか楽しみです。 ありが…
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