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『流星のリビオン』  作者: 髙橋彼方
第二章『新たなる旅立ち』
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『新たなる旅立ち』1

◆第二章『新たなる旅立ち』


 リュカは突然の状況に思考回路が追い付かず、唯々と立ち尽くしていた。

 シュライは困惑するリュカに優しく笑みを向ける。


「兄さんに当時は世話になった。

 いや、防衛軍全体のヒーローだったな……。

 君なら皆が歓迎するぞ!」

「兄を知っているの?」

「ああ、勿論だ。

 元流星候補生だった俺には、リュウジさんは今でも変わらず尊敬すべき先輩だし、一番目指すべき存在だ」


 リュカは久しぶりに兄の名を聞いて目を見開く。


「君が知っての通り、リュウジさんは当時の流星たちの隊長だった。

 そして、俺のような流星候補生の指揮官だった……」

「えっ?」

「知らないのも無理は無い。極秘事項だったからね。

 銀河連邦軍の猛攻で次々に優秀な人材を失って、候補生育成プロジェクトは頓挫寸前だった。

 これに危機を感じた防衛軍は、兵士の空いた枠に幼い候補生までも戦場へ送る決定をしたんだ」


 リュカは気付いたようにハッとした表情を浮かべる。


「何か思いつくことがあったみたいだね」

「私がその頃、適正テストでA+判定を受けても候補生通知が届かなかった……」


 リュカの一言にシュライは優しく微笑む。


「きっと、裏事情を知っていたリュウジさんがテスト結果を防衛軍に報告しなかったんだろう。

 それに、俺を含めたクラスB(・・・・)の候補生はリュウジさんのお陰で生き残れたんだ」

「クラスB?」

「ああ。候補生たちは軍の宿舎に着いて直ぐにクラス分けされ、リュウジさんが教えていたのはクラスBだったんだ。

 リュウジさんは防衛軍の決定に猛反対していて、俺らが出動しなくていい様に毎日戦場へ出た。

 そして、毎回他の流星の何倍も結果を出して戻ってきた。

 あの人が居なかったら俺は今、こうして君と喋れては無かっただろう」


 自分の知らない兄の一面を聞いてリュカは目を輝かせる。


「もし、この誘いを了承してくれたら、特別候補生として君には直ぐに俺が引き継いだクラスBへ来てもらう!」


 リュカは目を見開き、自分の手を見つめる。


 リュウジが居たところへ行ける……。


 ふと、視線を感じてリュカが振り向くと、ライム以外のメンバーが羨ましそうに見ていた。

 リュカは視線を感じてメンバーを確認する。


「みんな……」



 まだ孤児院を脱出して直ぐの頃、リュカたちはリュウジの墓を作って定期的にお参りをしていた。

 リュカは墓の前にリュウジが好きだったコーラを置くと手を合わせて拝む。

 そして、帰り道にデイヴがボソッと言う。


「俺も流星って呼ばれてみてぇ」


 すると、リュカがデイヴの方を向く。


「私もなりたい。 そうなれば実質的に、この世界で最も優秀なパイロットだもん」


 そんな二人を見てバッカスたちもウキウキと笑みを浮かべる。


「なら、俺も世界一優秀なメカニックになってやる!」

「私も!」

「俺も!」


 皆が盛り上がる中、ライムだけが口籠もっていた。


「どうした?」


 デイヴが問いかけると、ライムは重い口を開く。


「流星にはなれない……」

「おい、それはどういうことだ?」

「私たちは孤児院を抜け出して此処にいる。

 つまり、私たちにこの世界では基本的権利が無い」


 一同はライムの話を聞いて俯いた。



 自分たちを見つめて悩むリュカにライム以外のメンバーは感情を押し殺して笑みを作る。それは、リュカが自分たちには挑むことすら許されない夢を掴んで欲しかったからだった。

 すると、デイヴがリュカの肩に手を置く。


「なあ、リュカ。

 このチャンスは絶対逃しちゃダメだ」

「え? でも……。

 私にはここで一番のレーサーに……」


 リュカが最後まで言い切る前にバッカスが割って入る。


「それなら、もうリュカは達成しているだろ。

 チャンピオンになったんだから」


 それに続いてマイカとテリーも優しく声をかける。


「俺らなら大丈夫!」

「心配しないで行っておいで」

「みんな……」


 心が揺らぐリュカにライムが歩み寄る。


「アイツらは優秀なパイロットが欲しいだけだ!

 本当にお前を求めていたなら、なんで孤児院に居た時コイツは来なかったんだ?

 よく考えろ。答えはお前が決めて良い。

 だけど、兄貴の話に釣られて行くのはやめるんだ」


 リュカは俯いて考えると、ライムに笑みを浮かべる。


「私、流星になりたい! 流星はこの世界で最も優秀なパイロットだから!」


 ライムは納得したように頷くとリュカの肩を両手で力強く握る。


「絶対、流星になれよ!」


 リュカはシュライを真剣な眼差しで見る。


「でも、条件がある! 

 ここにいるドラゴンローズのメンバー全員を連れていって!

 じゃないと行かない」


 一同はリュカの発言に目を丸くさせた。

 そして、再びリュカは振り向くと優しく微笑む。


「だって、私はみんなと一緒に一番(・・)へなりたいから」


 シュライは腕を組み、上を向いて悩む。


「わかった。上官に駆け寄ってみるよ」

「それじゃダメ! 今約束して!」


 シュライは無線を取り出すと笑みを浮かべて喋り出す。


「ですって。

 どうしますか上官殿?」

『チッ……。

 まぁ、他の者もこのレースで勝ち残るほどの実力者だ。連れてこい」

「了解しました」


 無線を切るとシュライはリュカにOKサインをする。


「「「「「「よっしゃあ!」」」」」」」


 ドラゴンローズは、この時をもって地球での基本的権利を獲得し、地球防衛軍の一員となった。



To Be Continued…

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