いつか辿り着く場所は
「なあんもないね」
夜がつぶやく。
砕けたアスファルトもなくなっていき、食料も少なくなってきたころだった。生き残るのであれば、まっすぐ走り続けるより、木が生い茂り、アスファルトがある場所を走って行った方がいい。それは二人ともわかっていることだ。それなのに、ひたすらに走り続けているのはなぜか。
「ね、このまま走っていてもいいの」
夜にずっと思っていたことを質問する。
この世界がこうなってしまった時から、夜は私に判断を任せてきた。行き先や車の調達や、食料、飲料の調達だって。全て私に。
私たちは付き合っているわけではない。私はよこしまな感情を抱いているけれど、夜は私に対してどんな感情を抱いているのかわからない。昔から一緒だから、少しばかりはいい感情を抱いてくれているはずだけど。こればかりは夜から聞いてみないとわからないことだ。
きっと、もう終わりが近づいてきている。聞けるチャンスはもう二度とないだろう。
「うん」
夜は答えた。
「どこまで行くの」
「世界の果てまで、旭と行きたいの」
一瞬意識が飛んでしまった。
それはもう告白ではないのかと、うぬぼれてしまいそうになる。私たちは最後まで一緒にいていいのだ。こんなに嬉しいことはない。
私たちはただひたすらに、世界の果てを目指していく。