ヲタッキーズ160 推し変の記憶
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第160話「推し変の記憶」。さて、画廊のオーナーが殺されますが、現場で犯人を目撃したと思われる男が記憶喪失で発見されます。
容疑者として、暴力事件が絶えないアシスタント、モデル、バイヤーなど美術界の奇人達が集い、捜査は難航しますが、さらに国民的有名メイドが絡んで…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 氷の弾痕
スーパーヒロイン殺しだ。ラギィ警部より先に現場に着く。黄色い規制線テープが張られパトカーの赤いランプが回転。
何処からともなく現れた犬が、僕の脚にじゃれつく。
「テリィたん、片膝ついて犬にプロポーズ中?」
「おはよう、ラギィ。君を待ってたんだ」
「2人はお似合いだったのに」
ラギィは万世橋警察署の敏腕警部。アキバでのスーパーヒロイン絡みの事件は、大抵僕達と万世橋との合同捜査となる。
「この犬、飼ってもOK?」
「あら?私はテリィたんのヨメ?」
「"現場ヨメ"だ」
違うわ、とつぶやきながら画廊の階段を登って逝く。2段飛ばしで急いで後に続きながら、背中に向かって話しかける?
「明智小五郎と名付けて現場に同行させルンだ」
「そんなのダメょ」
「絶対かわいいよ。帽子をかぶせ虫眼鏡も持たせる」
登りきったトコロに死体がうつぶせで倒れている。
「芸術に前のめりな性格なのかな?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ピクタ・フィン。43才。"blood type BLUE"。放火魔です」
「侵入の形跡なし。22時14分に隣人が音波銃声を聞いてる」
「とっくに画廊を閉めて、遅くまで何を?」
ヲタッキーズのエアリとマリレから状況報告を聞く。彼女達は僕の部下で、まぁそのメイド服。ココはアキバだからねw
アキバに開いた"リアルの裂け目"の影響で腐女子のスーパーヒロイン化が頻発、関連する事件の対応で僕達は多忙だ。
「アシスタントによると20時の閉店だって」
「防犯カメラは?」
「アレは偽物」
マリレが天井のカメラ(の模型?)を指差す。
「幸運な犯人ね」
「違うょラギィ。きっと下調べしたンだ」
「あら?ココで"推し"と深夜デートだったのカモ」
死体を囲む。
「抵抗の痕がある。腕や手に傷。逃げようとして背中から撃たれた。9ミリHz弾で2発。犯人はテリィたんの3時方向から撃ってるわ」
僕のタブレットから超天才ルイナの声。大統領補佐官の要職にある彼女は時折"リモート鑑識"として手伝ってくれる。
「放火魔がパワーを使う前に音波銃で射殺されてる。顔見知りの犯行ね」
「誰かと会う約束をしてたのかな?」
「私は何も聞いてないわ」
振り向くと黒いコートを着た高身長グラマラス。AV系。
「私は、ギャラリーのアシスタント、ダリス・タリス。昨夜は20時には帰ってました」
「ダリスさん。万世橋のラギィょ。貴女は、いつからAVを、じゃなかった、アシスタントを?」
「2ヶ月前。夜は美術学校に通ってるの」
なるほどセリフ棒読みw
「今宵も授業でした?」
「YES。授業がある時は仕事を早退スル。今宵もさっきまで授業中だったわ」
「画廊オーナーのフィンさんに敵はいましたか?顧客や画家などで」
少し考えてから媚びるような口調。やはりキカタン?
「特にいないとは思うけど…ギャラリーの顧客リストを渡しましょうか?」
「お願いします」
「テリィたん、問題発生ょ。音波銃を撃った後の薬莢カートリッジは5発分を回収したけど、肝心の音波痕は4つしか見つからナイの」
タブレットからルイナの"リモート鑑識"だ。スーパーヒロインも倒せる音波銃は後に拳銃の弾痕に似た音波痕が残る。
ソレが…
「遺体から2つ。狙いが悪かったのか、周りの壁に2つ。それぞれ音波弾道分析にかけるけど、恐らく凶器の銃と一致スルわ」
「壁の血痕も画廊オーナーのフィンのモノだけょ?」
「2人目の被害者は何処?」
いや、被害者が出てるかは不明だろw
「5つ目の音波痕は何処だ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「わかった!5発目は、氷の弾丸ならぬ"氷の音波"だったに違いない!」
「しっ!静かに…わかったわ、通して。テリィたん、画廊オーナーのフィンさんの奥さんが来るわ」
「ラギィ。氷の銃弾みたいに、発砲後に溶けて消えちゃう音波だょ。コレはアキバ版"氷の微笑"だ。ねぇ聞いてる?」
マグカップを持って立ち上がるラギィ。
「いいえ。まるで聞く価値ナイし」←
「今のトコロ画廊には別の血痕は見つからない」
「鑑識が2度入ったけど、5発目は見つからない」
ヲタッキーズが次々報告スル。勢いづく僕。
「ほら、やっぱり"氷の音波"だ」
「でもね、テリィたん。氷だって音波が当たれば痕は残るでしょ?」
「その痕も氷で出来てルンだ」
顔色1つ変えズにラギィが無視←
「他には?」
「殺害の1時間前、フィンの電話に非通知の着信があったみたい。着信は秋葉原D.C.だけど、衛星携帯で海外の番号からだった。スマトラのパレンバン王国」
「大変。インドネシア系は犯人引き渡し条約がナイわ。令状を取るのがウルトラ面倒ょ」
ラギィは思い切り大きな溜め息をつくw
「フィンの顧客リストに該当者がいないか調べて…あとテリィたんはジョークを謹んで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ヲタッキーズ、ちょっち良いか?」
メイド服のエアリ&マリレに制服警官から声がかかる。
「なぁに?目撃者?」
「いや、違う。ちょっと待っててくれ…聞き込み中にギャラリー付近にいるの見つけたンだ。ところが、財布もIDを持ってナイ」
「じゃ本人に聞けば?」
制服警官は両肩をスボめてみせる。パリの警官みたいw
「名前も住所も本人に聞いたさ。ところが、不思議なコトに何も覚えてナイそうだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「夫に敵はいたか?ウチの旦那は敵だらけょ!特にアーティストからは憎まれ放題。いつも誰かに責められてたわ。もっと自分の絵を売り込めとか、売ったら売ったで、もっと儲けを寄越せとか」
万世橋の会議室。フィンの妻は泣きながら激怒してるw
「フィンさん。お気持ちはわかります」
「この偽パイもどうしろと言うの?私は嫌だと言ったのに、旦那が手術しろって!」
「フィンさん、教えてくれ。旦那を背後から撃つほど恨んでた人はいたか?コレは、とても冷酷な殺し方だ」
質問しながら、ティッシュの箱を妻に渡す。
「…ロッコょ」
「ロッコ?彼もアーティストですか?」
「アシスタントょ」
「アシスタントはダリス・タリス氏では?」
「ダリスの前のアシスタント。数ヶ月前にクビにしたわ」
「なぜ?」
「お金でモメた。そしたら、奴は激昂して夫を脅迫してきたけど、どうせノミみたいな男だと夫は無視してたわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ノミが撃つ銃弾なら見つからないカモな」
捜査本部でつぶやくと、即ラギィが反応w
「氷の弾にノミの銃?テリィたん、執筆でスランプ?」
「あのさ。夏目漱石も猫の話でベストセラーを描いた。執筆に論理は無用ナンだ」
「そう…エアリ、フィンを元アシスタントが脅迫してた。ロッコ・ジョズを調べて」
エアリがメイド服を翻し出掛けて逝く。
「あれ?マリレが相手をしてるのは誰?」
「強盗に殴られて記憶喪失になった男らしいわ」
「…消えた銃弾より、消えた記憶の方が面白そうだな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部の会議室。
「メイドさん。君もホントは忙しいんだろう?…きっと僕もな。おや、吸入器か」
「どーやら、貴方は喘息持ちだったみたいね」
「最高だな」
自虐的なセリフ。記憶喪失マンは遠い目をスル。
「(ヤダ。母性本能くすぐられてる?)吸入器は貴方が持っていた方が良さそうね。他には、丸めてクシャクシャのコンビニ袋と鍵か。ねぇホントに何も覚えてないの?」
「うん。ぶっ飛んでるょな」
「どうもー…この人、ホントに記憶喪失?」
このタイミングで割り込む僕。男は僕を見上げる。
「そうさ。でも、耳は聞こえるけどね」
「ソレは良かった。テリィだ。(国民的w)SF作家」
「僕は…自己紹介が出来ないンだ」
握手しながら、心底もどかしそうに話す。
「今、一緒にポケットを探っていたのょ。何か出てくるカモしれないでしょ?」
「どうやら、僕は読書家みたいだな」
「お?ドストエフスキーの"罪と罰"?名作じゃないか。とても、趣味は良いな…あれ?ちょっち見せて」
分厚いペーパーバックの真ん中がエグれてるw
「9ミリHzの音波痕?氷の弾痕が見つかったぞ」
第2章 記憶喪失マン
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風にしたらヤタラ居心地良くて客の回転率は急降下。メイド長はオカンムリだw
「犬を飼えば、犬が買い物袋を持ってくれる。そうすれば、買い物も楽チンだぞ」
「アラサーだからっておばあちゃん扱いしないで。私だって、テリィたんと同じ位、犬が欲しいわ。でも、マックでトレイを片付けないテリィたんが公園で犬のウンチを片付けるとは思えないわ」
「トイレでさせれば良いンだ」
僕のナイスな返しを聞こうともせズ、お出掛けするスピア。
僕にヒラヒラと手を振り、ドアを開けたら…ミユリさんだw
「ミユリ姉様?!朝帰りですか?」
「もう、お昼だけど。うふっ」
「TOのテリィたんの前で大胆!少しオープンにし過ぎカモ!」
ミユリさんは、僕の推しで、僕はミユリさんのTOだw
「もう行かなきゃ!姉様が楽しそうで良かったわ!」
何となく波乱を予知したスピアはお出かけスル。
「テリィ様、ごめんなさい。でも、秘密にしてられなくて」
「朝帰りってコトは、初恋のチェドと一晩中おしゃべりをしてたのかな?」
「おしゃべり以外にも、です!」
何とMOON WALKでカウンターの僕の隣の席にw
「そろそろ"冬のメイドミュージカル"プロデューサーの奴が、どういうつもりなのか僕から聞いてみようか?」
「テリィ様。もう楽し過ぎて、そんなコト、どーでも良いのです。先ずはキャンドルの灯りでディナー。その後、乙女ロードで馬車に乗って"初ふーふーあーん"をしたIWGPで朝を迎えたのです!」
「何10年もデートのパターンを変えてナイのか?進歩なさ過ぎだろ」
ミユリさんは、アキバが萌え始める前から池袋でメイドしてた筋金入りだ。で、昨夜は池袋時代のTOと会ってたのだ。
「女子の夢です。テリィ様が何をおっしゃっても関係ありません。こんな気持ちになったのは、もう記憶がないわ!」
「最近、記憶喪失が流行ってるな。じゃソロソロお出かけスルょ。遅くなるから先に寝てて…」
「あぁ太陽が黄色いわ」
聞いてナイ笑。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「ラギィ、記憶喪失マンと一致スル指紋はないし失踪届も出てナイわ」
「OK、マリレ。正体不明の目撃者ね。ついでに、何を見たかも不明w」
「鑑識によれば、5つ目の音波痕も同じ音波銃から撃たれてた。で、その現場に彼もいた」
ラギィは疑惑の目を向ける。ムキになって反論するマリレw
「彼は殺されかけて、本のおかげで助かったのょ?」
「分厚いロシア文学で良かった。薄っぺらいSFのパルプフィクションだったら死んでた」
「彼のコートに火薬の痕や血痕がないかを調べましょう。顧客とアーティストの顔写真も再チェック!」
立ち上がったラギィは、コーヒーを運んで来た僕と衝突!ツルペタなラギィのブラウスの胸にコーヒーをぶちまけるw
「ああっ!」
「コーヒーを淹れたんだ…」
「そのようね。どうもありがとう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"から精神科医のホロウ博士が来署。
「記憶には3種類あります。言語を理解するのは意味記憶。ソコに貴方は異常ありません。2つ目の記憶は手続き記憶。何度も繰り返してカラダが覚えてる記憶です。歩けてるってコトは、この記憶には問題がナイと言うコトです。恐らく、自転車にも乗れるハズ」
「では、彼は3つ目の記憶に問題が?」
「YES。3つ目の記憶は、エピソード記憶です。エピソード記憶とは、今までに経験したコト全てです。話したコト、見た映画、関わった人。そして、自分の名前」
博士は、探るような目で記憶喪失マンを見る。
「センセ。もし僕が勝負師なら…もしかしたらマジでギャンブラーだったカモしれないンだけど、どっちに僕は賭けるべきかな?記憶が戻る。それとも戻らない?」
「何とも言えません。戻るコトも戻らないコトもアルし、1部が戻るコトもアリます」
「僕が記憶を失った原因は?」
無邪気に尋ねる記憶喪失マン。
「頭を強く打った痕があります。通常、頭部の強打と心的外傷が合わさって記憶喪失に至るケースは多い。韓流ドラマは大体このパターンです」
「心的外傷?音波銃で撃たれたコトとか?」
「ソレで臨死体験をしたのなら」
記憶喪失マンは、邪心のない笑みを漏らす。女子イチコロ?
「…センセ。彼を事件現場に連れて逝けば、何か思い出したりスルかな」
「あり得ます。あり得ますが、記憶喪失はかなり複雑です。1度"外神田ER"に連れて行って良く診てみたい」
「もちろん。でも、その前にいくつか質問を。それじゃあ名前は…なんて呼べば良いのかしら?」
記憶喪失マンも途方に暮れる。
「僕もわからない」
「センセ、彼は手続き記憶には異常は無いんだょね?ラギィ、ちょっち良いかな?」
「え。テリィたん、何をスルつもり?」
僕は、彼の前に色紙を出しサインペンを握らせる。
「君は地下アイドルだ。ココにサインしてくれ!」
サインをしながら…ハッとスル記憶喪失マン。
「一体どうなってルンだ?何だか気味悪いょ!」
「コレはモノホンのサインね?」
「何度もサインしてるからカラダが覚えてルンだ」
うなずくホロウ博士。
「名前を忘れているのに…脳は謎です」
「残念だが、字が汚くて読めない。医者のカルテみたいだ」
「最初の文字は"ヒ"みたい。次は"ロ"かしら?何か思い出さない?」
記憶喪失マンは、首を横に振る。
「いいや…何もわからないw」
「OK!じゃ君のコトは"ヒーロー"と呼ぶょ!」
「英雄か!悪くナイな!」
記憶喪失マンの顔がパッと輝き、場の空気が和む。彼には、そーゆー"パワー"がアル。もしかして、僕に似てるカモ←
「ねぇ!この男に見覚えはある?」
「いいや。誰?美味しいの?」
「ピクタ・フィン。貴方が撃たれた画廊のオーナー」
すかさず手配書の画像を見せるラギィ。
「この人も現場にいたのか?」
「YES。そして、彼も撃たれて…死んだわ」
「まさか!」
絶句スル記憶喪失マン。その時、ちょうどエレベーターが着きゾロゾロと人が出て来る。その中の1人を指差すラギィ。
「彼はロッコ・ジョズ。あの画廊で働いていた」
「見覚えがアルかい?」
「…自分が情けなくなって来るな。すまないが、全く記憶がナイんだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ロッコ・ジョズは、自分の音声に聞き入る。
"俺は尽くしたぞ!フィン。お前のために法律まで犯したのにクビにしやがって。殺してやる。背中を1発ズドンとな!"
万世橋の取調室。机上のICレコーダーをエアリがオフ。
「スゴいわ!わぉ!ソレで、ようやく実行したワケね?ロッコさん」
「メイドさん、わかるだろ?俺は怒りを発散しただけだ」
「で、どんな法律を犯したの?」
溜め息をつき黙秘するロッコ。
「そ。上等だわ。じゃ後は法廷で頑張って」
エアリは、ファイルを閉じて立ち上がり回れ右w
「ま、待て!おい、法廷って何だょ?」
「脅した相手が殺されたのょ?当然でしょ?」
「…偽造だ」
エアリの背中に告白。微笑むエアリ。怖い顔して振り返る。
「フィンに言われ、高級絵画の偽物を描かされてた。俺も必死で金が必要だったんだ」
「何のための偽造かしら」
「フィンがモノホンと偽りバイヤーに売り飛ばす」
身を乗り出すエアリ。
「バイヤーって誰?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「パレンバン王国の総領事バヒル・ハルンだって」
「あら。殺害直前にフィンと電話してた人だわ。偽造品をつかまされて激怒?」
「最悪ね。外交特権がアルから簡単には話さナイわ」
取調室から出て来たエアリをみんなで囲む。
「ギャラリーの顧客やアーティストのID写真を確認してみたけど"ヒーロー"はいなかったわ」
「じゃあナンで"ヒーロー"はギャラリーにいたの?」
「頭を打った以外"ヒーロー"は健康体だそうょ。まぁその、記憶はナイんだけど」
母性本能くすぐられ型の発言多数。ラギィのまとめ。
「マリレは"ヒーロー"と現場に行って来て。何か思い出すかもしれない。あと、フィンのアシスタントのダリウスに連絡してバヒル・ハルンの資料を用意してもらって」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マリレは記憶喪失マンとギャラリーへ。
「ホントに僕がココにいたのかな」
「大丈夫。焦らナイで(あぁ母性本能くすぐられるわw)」
「ココで突然!頭が割れるように痛くなって、赤い閃光が走って記憶が戻るとか期待してたけど」
微笑むマリレ。
「そりゃSF映画の見過だわ…テリィたんみたい」
「うーん何もよみがえらないょ」
「無理しないで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現アシスタントのダリスが、バヒル・ハルンの資料を持参。
「ソレにしても不思議ょね。ヒトの記憶が抜け落ちるナンてコトが起こるとは」
「貴方、バヒル・ハルンに見覚えは無いの?」
「ナイわ。私も日が浅いから…コレ、頼まれてた奴の資料」
封筒ファイルをラギィに手渡す。
「彼が、この3年間で何を買ったかがわかる。しかし、まだ信じられナイわ。フィンさんが贋作売買をしてたナンて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ダリスを帰して捜査会議。
「バヒルはフィンから何枚も買ってるわ。元アシスタントであるロッコによれば、その何れもが贋作の可能性が高い」
「お?ジルズ・マタソだ。1億円はスルな…200万円で売ってるけど」
「でも、ロッコは1枚10万円くらいで描かされてる。ナンて美味しい商売なの」
母性本能をくすぐられない死体には容赦ナイ。
「ヘタすりゃ何億円も騙し取ってるわ。許せない!」
「その仕返しに殺されたのょザマーミロ!」
「でも、なぜ"ヒーロー様"まで狙うの?卑怯ょ!」
いつの間にか"様"がついてるw
「ソレは"ヒーロー様"に聞くしかナイな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通り地下にあるSATO司令部。
南秋葉原条約機構は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗する防衛組織でヲタッキーズを傘下に置く。
「私も外交特権は大嫌いょ。ソレとパレンバン総領事のバヒル・ハルンだけど"異次元人"だから。恐らくマルチバースの何処かと通じてる」
銀ラメのコスモルックに紫ウィッグのレイカはSATOの沈着冷静な最高司令官だ。つまり僕達の雇主で今、業務連絡中w
「何だょソレ。次元庁マターじゃ警察の手には負えないじゃナイか。"ヒーロー"のコトはどーする?もう巷じゃ"様"がついてルンだぜ?」
「記憶喪失マンのコト?マリレがメロメロなんだって?」
「帰る家がないんだ。このママじゃホームレスの施設に入られてしまう。重要な証人を失うぞ」
この手の話に慣れっこのレイカはサラリと逃げる。
「御屋敷に泊めれば?ココはダメょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
タライ回しが始まる。憤慨するマリレ。
「おかしいわ!ナンで御屋敷が満員なの?しかも、夜通し満員ってどーゆーコト?」
結局、万世橋のギャレーに泊まるコトにw
「五つ星ホテルってワケには行かないけど、私も何度もココで徹夜してる。ぐっすり眠れるハズょ」
「ホームレスに囲まれて寝るより、ずっと良いや。ありがとう、マリレさん」
「(名前で呼んでくれたキュンw)遠慮しないで!」
くたびれたソファに毛布を敷く。甲斐甲斐しい←
「しかし、自分の命が狙われたと思うと恐ろしいょ。その理由もわからないし、今も犯人は野放しだ」
「絶対に捕まえてみせるわ。けど、そのためには、先ず貴方の正体を知りたい。万世橋は明日の朝、マスコミに貴方の写真を流すわ」
「スルーされたら?」
怯えた子犬の目。マリレのATフィールド完全消滅w
「何かしら必ず反応がアルわ」
「他の人も自分も知らない。僕は一体誰ナンだ!」
「私は諦めないって約束スル」←
記憶喪失マンは、眩しげにマリレを見上げる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、夜通し満員?のハズの"潜り酒場"。
メイド&スク水の2人組が盛り上がってるw
「ミユリ姉様!ハッカー仲間が言ってたけど、チョコには気分を高める成分が入ってルンだって!ねぇチョップドチョコレート、取って!ゴーストワールドも」
「ソレは良いけど、私は熟成されたブドウの方が好みょ。ボトルに入った奴ね」
「ラムレーズンじゃダメ?」
深夜、僕が御帰宅スルとメイド服のミユリさんと、スク水のスピアがアイスクリームのヤケ食いをしている。ブラボー!
「アイスの狂い食いに、どーして僕を呼ばないかな?!」
「テリィたん、喜べ!姉様がジェドと別れたからスイーツセラピーの真っ最中ょ!」
「ハレルヤ!あのロマンチックなデートの直後に?馬車や朝焼けが窓を染めるgood-by morningは?」
既に完全やけっぱちモードのミユリさんが切り捨てる。
「テリィ様、あんなのおとぎ話ですぅ!」
「でも、ミユリさんはおとぎ話が好きナンだろう?」
「想像と違いました」
しめしめ。僕も大スプーンで参戦。定番チョコミントから。
「今どき車の運転はしないし、ヘモグロビンは高いし、ソレに笑い方が真似できないけど、ガチョウみたいなの!」
「ミユリさん。コメディみたいな別れの理由だ。今朝は熱烈に恋してたのになぜ?」
「テリィたん、ヤメて。トキメキが消えて、考え直しただけょ。わからない?」
ワカラナイ!因みに、スピアは興奮スルとスク水になるw
「テリィたん、黙ってアイス食べる?食べない?」
「だから、今は嘆くことに集中したいのです、テリィ様」
「つまり、アイスを食べるコトで、女子の悲しみは消えるってワケだ」
メイド&スク水は異口同音。
「その通り!」
第3章 消えた記憶の断片
聖都アキバの夜明け。摩天楼の谷間をよじ登るようにオレンジ色の太陽が昇る。朝焼けに染まる電気街。そして万世橋。
コーヒーを求めラギィがギャレーに入ると既にモヌケの殻。
「おはよう、マリレ。ヒーロー様は?(ってか何で毛布とかたたんでるの?女房気取り?もしや、昨夜は…)」
「爆睡してたわ。英語で能力テストを受けたら、数学でかなりの高得点だったの!」
「というコトは、エンジニア?ロケットサイエンティストで金融系が得意とか」
意味不なマリレのドヤ顔。ラギィは持て余すw
「単なる数学ヲタクかも。確か今日は絵の能力をテストね。画家だった可能性もあるから」
「絵?じゃ私がモデルになるわ。ヌードもOKょ。きゃ!恥ずかしい」
「(脱ぎたがってる?)噂をすれば、今朝のニュースにヒーロー様のコトが流れてるわ。何か反応は?」
ラギィは、ギャレーのTV画面を見る。
大きく"記憶喪失マン!"の見出しw
「今のトコロ、スマホ放送局"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"に寄せられた反応はナシ」
「すると、手がかりは彼だけね」
「じゃ脱ぐわ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、レースクイーンのコスプレだ。
ムダにパラソルを片手にカメラ目線w
「マリレ、ハルン総領事とは話せるようになったのか(ってか何やってンの?)」
「テリィたん、話しかけないで…でも、だめそうょ」
「マリレさん、少し休憩しよぅか?」
その言葉とは裏腹に熱心にデッサンを続けるヒーロー様。
スケッチブックを覗き込んだら…ヒドい!君はピカソか?
「彼は…内面を捉えてルな(多分w)」
「まぁ画家ではなさそうね。きっと他に才能がアルのでしょう(女たらし?スーパーヒロインたらしとかw)」
「でも、記憶する才能は無いみたいだ」
ココで、またまたムダに胸キュンなセリフを吐くw
「彼よっ、間違いナイわ!ああっ神様!」
ヒステリックな女子の、ほとんど雄叫びが上がる!
「何事?」
「いよいよ正体が明かされるぞ」
「記憶喪失マン様、彼女に何か見覚えは?」
ストレートな長髪を金に染めたデーハー女子だ。
一眼見て全員がドン引き。ヒーロー様も含めてw
「全く見覚えがナイょ」
ところが、デーハー女子は…
「あぁジエル!信じられないわ!私よっ!」
いきなりXOXO。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「トリィ・ウスチ。ヒーロー様の"妻"だって」
"関係者"の間を名刺がめぐる。一方で…
「もう2度と会えないと思って怖かった。良かった!ホントに良かったわ」
熱烈なキス。目を背ける僕達(某レースクイーン含むw)
「ホントに何も覚えてないの?」
「彼は記憶喪失ナンだ」
「そーだと思ってた!」←
調子の良い女だ。ところが…
「おい、ヒーロー。どーした?泣いてるのか?」
「そうみたいだ。涙が出てる」
「喜んでる?!喜んでるのね!あぁジエル!」
抱きしめるトリィ。戸惑うジエル?怒り立つマリレw
「ねぇヒーロー様!ホントに彼女との絆を感じてるの?」
「うーん何だか感情がコミ上げて来るンだ」
「でしょ?心から愛してるわ。2人で乗り越えましょう。何があっても!」
両手で顔を覆うマリレ。レフリーがブレイクする。
「ウスチさん。貴女、結婚何年目ですか?」
「2年と10ヶ月です」
「彼は…えっと、ジエル…?」
息せき切って応えるトリィ。
「ウスチよっ!彼はジエル・ウスチ!スゴい!私のコト、覚えているのね?」
「ハックション!ゴホゴホゴホ!」
「どーしたの?大丈夫?」
大クシャミに続き激しく咳き込むヒーロー様。
「愛が勝利スルわ!問題ナイ!」
「喘息の発作だ」
「ポケットに吸入器があるハズ!」
世界一甲斐甲斐しいレースクイーンがポケットを探る。
僕はトリィのコートの襟の裏から茶色い毛を1本摘むw
「ウスチさん。猫、飼ってる?」
「8匹。セレブでしょ?」
「もしかして"旦那さん"は猫アレルギーでは?」
絶叫するトリィ・ウスチ。
「マジ?ウッソォ?!」
「ウスチさん。結婚するって本当ですか…じゃなかった、結婚してるってウソですか?」
「良いじゃない!ほっといてよっ?」
瞬時に般若の面にスイッチ、吠えるトリィ・ウスチw
「あのね!私だって結婚しようと思えば出来る!ソレとも、私が結婚しちゃイケナイの?えっ?どーなのよっ?!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「彼女は10年以上、精神科施設に出入りを繰り返し、あらゆる人格障害を患っている。残念だわ」
「しかし、記憶喪失の奴って意外とモテるんだな」
「ラギィ警部!パレンバン領事館からハルン総領事が話に来ました!」
捜査本部直通エレベーターのドアが開くと、コートをひっかけ首からは紫のマフラー、禿頭のハルン総領事が登場スル。
左右にスーパーヒロインのボディガード。その後に海兵隊?
「所轄に総領事が自らお出まし?署史に残るわね。一気に主導権を握る気かしら。マリレ、総領事にヒーロー様を拝ませてあげて」
「ROG。あくまで、さりげなくね」
「もし、ホンキでヒーロー様を射殺しようとしたのなら、必ず何か反応があるハズょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
会議室の外にスーパーヒロインのボディーガードと海兵隊が並ぶ。因みに、ヒロインは妖精&ネオナチのコンビw
あ。ヲタッキーズに似てるとか思ったら大間違いだ。マリレは時間ナヂスだが、プロイセン軍人の家系で国防軍←
「ハルン総領事、万世橋のラギィです。貴方はフィンさんの顧客でしたね?」
「いかにも」
「彼から何枚も絵を買っていますね。その多くが贋作だとわかりました」
静かにうなずくハルン総領事。ラスボスの風格がアル。
「その通りだ」
「貴方は贋作だと知って購入したの?」
「知っていた」
取調室の中は疑問符で満杯になるw
「贋作なのになぜ購入を?」
「SATOが嗅ぎつけたように、私は"汎次元人"で…」
「え。ハゲ人?」
思わず全員の目が禿頭に目が逝くw
「"汎次元人"だ!マルチバースの全次元を自由に往来スル亜人類のコトだ。で、"アース1576"に友人がたくさんいるんだが、彼等の妻達は、なんというか欲張りなのだ」
「デスパレードな妻達と何の関係があるの?」
「御存知カモしれないが"アース1576"の女性は1人残らズ浅はかだ。モチロン、貴女達は違いますょ。秋葉原の腐女子は、賢く自立している。だが、マルチバースには"GUCCI"と大描きされたバックを欲しがる女もいる。ロゴさえ入っていれば良いのだ。絵画でも同じ。何が描いてあるかよりも、アーティストのサインに興味がアル。友人達の妻は高い金を払って"モノホン"を買う。仮にソレがフィンから仕入れた贋作だとしても、みんなが安上がりに喜び、私は儲かる。次元を超えたウィンウィンの成立だ!」
汎次元人が自分の演説に酔う内に"さりげなく"会議室へと近寄るヒーロー様と…レースクイーン。かなり目立ってる。
「もう少し…左に移動して。そう、そんな感じょ。あのハゲ頭に見覚えは?」
「ゴメン。ないょマリレさん」
「(またまた名前を呼んでくれて胸キュンwレースクイーンのコスプレが効いてる?)しっかり盗み見るのょ!」
かなり難しいリクエストだw
「貴方の顧客が買ったのは贋作だけなの?」
「いいや。真に目が肥えている夫達は、モノホンを欲しがるモノだ」
「総領事。貴方は、殺害の直前に被害者のフィン氏に電話してますね?」
女性蔑視の発言に根をあげたか話題を変えるラギィw
「YES。その通りだ。絵を渡すから来いと言われて、21時45分ごろ行ったが帰された」
「帰された?なぜ?」
「フィンが男と口論中だったからだ」
口論中?
「口論の内容は?」
「知らない。その後、私は異次元居酒屋"DEBU"で食事をした。念のため言っておくが、私がギャレーを出た時、フィンは生きていた」
「…口論をしていた男の特徴は?」
ハラル総領事は禿頭をクルリと撫でて立ち上がる。
「おい。こんなくだらない茶番は、もうヤメないか。知ってルンだろ?ソコでレースクイーンをナンパしてる男のコトだ。しかし、警察署の中でRQをナンパってアリか?では、失礼スル」
「ハルンさん。未だ終わってません」
「いいや。終わった。では、ごきげんよう」
唇を噛むラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取り調べ?を終え捜査本部で。
「外交特権があるのに外交下手だな」
「特権を良いコトに不利なコトは話さないつもりだわ」
「ラギィ!ハルンのアリバイだけど異次元居酒屋"DEBU"の防犯カメラにお一人様で映ってた。画像のタイムコードは銃声が聞こえて通報があった殺害の19分前だから、犯人の線は崩れたわ」
画像をチェックしていたエアリの報告。
「直接殺してナイけど、仲間が犯人とか?」
「ヒーロー様が不法なコトに加担して撃たれたのカモしれない。あるいは、ヒーロー様自身がフィンと争ってたとか」
「なぜ彼はギャラリーにいたのかな?」
ラギィの結論w
「とにかくヒーロー様の正体がわからないと」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
お隣の会議室。
「ヒーロー様のポケットの中のモノは何度も見たけど…まぁガラクタばかりだ」
「新しい情報と一緒に考えれば何か見えてくるわ」
「じゃみんな"新しい目"でお願い」
証拠品袋から証拠品を出し、机上に並べて調べ始める。
「特徴のない鍵」
「何の変哲もないコンビニ袋」
「喘息持ちで猫アレルギー。読書家」
「ロケットサイエンティスト並みに数学が得意で絵が恐ろしく下手」
またまたラギィのまとめ。
「つまり、ヒーロー様は、ポケットの中にやたらモノが多いタダの男ね」
つまらなそうに話すラギィを睨みつけるマリレ…あれ?今日もムダにレースクイーンだが…昨日と違うコスプレしてるw
ま、良いか。ココはアキバ…
「ラギィ警部。コレ」
制服警官が入って来てラギィに封筒を渡す。
「ありがとう。大統領補佐官ルイナから"趣味の鑑識結果"が来たわ。コートから検出されたモノの検視結果」
「裏地に秘密のスパイ組織の身分証が縫い付けてあったとか?」
「音波硝煙反応が出たって」
対スーパーヒロイン用の兵器である音波銃は、発射スルと拳銃の硝煙反応に良く似た"音紋反応"が検出されるのだ。
「至近距離から音波銃で撃たれた?」
「他にはコーヒー、砂糖、ミルクのシミ」
「犯人のコーヒーの好みがわかった」
「他には動物の毛だって…きっと猫以外ね」
その瞬間、ヒラメく僕w
「何で気づかなかったんだ!」
コンビニ袋を取り上げるw
「何?」
「コレわかるか?」
「使い古したコンビニ袋?」
僕は断言スル。
「タダのコンビニ袋じゃない!ヒーロー様の正体を教えてくれるコンビニ袋、魔法の袋さ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕とラギィは地下アイドル通りを早足に歩く。冷たい北風に僕は焦茶のハーフマフラー。ラギィは青のロングマフラー。
「どうしてギャラリーに行くの?」
「目的地はギャラリーじゃなくてギャラリーの前の歩道だ。あのコンビニ袋は犬のフン入れだ」
「ヒーロー様は犬の散歩中だった?」
だが、案の定、ギャラリーの前に犬はいない。
「うーん真夜中から犬が繋がれっ放しってコトはなかったか。ソレとも盗まれちゃったのかな」
ラギィがスマホを抜く。
「動物保護センターをお願いします」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捨てられた元ペット達が薬殺を待つ"センター"は、待ち受ける運命とは裏腹にショップ並みの明るさ&賑やかさだw
「もしタグが付いていれば、大抵の場合、飼い主が目の色変えて引き取りにすっ飛んで来るわ」
「テリィたん?」
「うーん戌年のシンパシーが働くな。多分この子だ」
犬用ケージの前で立ち止まる僕。
「東秋葉原26丁目にいた子だわ」
「ビンゴ!ギャラリーの住所ょ!かわいそうに」
「犬の名は…ルシィか」
タグには"ルシィ ジレミ・プスク"とある。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「ジレミ・プスク。陸運局で免許の画像確認も出来たわ」
「僕の名前は…ジレミ・プスクか」
「YES。34才で東秋葉原のトラベカ通りに住んでる。ご両親は数年前に他界。兄弟もいないけど、元推しのヒロミに連絡がついたわ」
ついにヒーロー様の素性が明らかに。
「元推し?推し変してるのか?」
「そうね。バツイチ。でもヒロミはかなり心配してたわ。彼女なら貴方のコトがわかるし、捜査の手がかりを掴めるカモしれナイ」
「警部が、そう言うのならわかった。会うょ」
うなずくジレミ。一方、ガックリ肩を落とすマリレw
「ミユリ姉様、OKです」
ラギィが合図スルと…あ、あれ?ミユリさんが会議室の外にいて、うなずく。さらに、物陰からメイドが立ち上がって…
ややっ?彼女は?!
「昔、推してたメイドも覚えてナイなんて」
「ある意味、うらやまし過ぎるな」
「テリィ様!」
ミユリさんに睨まれるw
「ヒロミ、こっちだって」
「ありがとう、ミユリ…ジレミ、久しぶりね。テリィたんも」
「き、君は?」
アキバのレジェンド"ひろみん"だっ!秋葉原カワイイ大使を歴任、国営放送で何度も特集されてる国民的メイドだょ!
全員が立ち上がる。確か19周年SPお給仕の真っ最中では?
「やあ。来てくれて、どうもありがとう」
「モチロン、来るわょ」
「僕は…推し変したんだってね?」
ええっ。世界的に有名な"ひろみん"を見ても、何も思い出さないのか?ウソでも良いから、常連のフリでもしろょ!笑
ってか、今からでも遅くないから"推し変"ヤメろ←
「しかし、アイドルの方からヲタクの"援護"に来るナンて、君はとても親切な人ナンだね」
ジレミの笑顔は、あくまで、何処までもサワやかだ。
「うん。確かに、ちょっとね…ねぇテリィたん、彼に何があったの?」
「(ソレを僕に聞くなw)ソレより、ひろみん。君に何があったのかを聞きたい」
「ひろみん、万世橋警察署のラギィです。ジレミ・プスクさんの身に何が起きたのかを全力で解明しているトコロです。だから、ひろみん。ジレミさんについて教えてください。例えば仕事とか」
ひろみんは、付き添い?のミユリさんを見る。2人はアキバが萌え始めた頃からの古いメイド仲間。ミユリさんは頷く。
「そうね…最近は働いてなかったみたい。なんだか変ょ。本人を目の前にして」
またまた屈託なくうなずくジレミ。
「同感だ」
「あのね、ジレミ。貴方は、経済学の博士号を持ってる。経営戦略のコンサルタント会社を経営してたわ。賢かった。おかしいぐらいに」
「その会社はどーしたの?」
ラギィに代わって突っ込むミユリさん。
「去年売ったって聞いてるわ」
「どうして?」
「さぁ。あんなに仕事が好きだったのにね」
壁際に控えてたレースクイーン、じゃなかった、マリレが…
「あの、なぜヒーロー様、じゃなかった、ジレミさんは推し変したのでしょう?」
「ウソでしょ?彼は、私の群馬時代のTOだったの。太客、じゃなかった、TOを失った私は、今、付き添ってくれてるミユリをはじめ、メイド仲間に何時間も愚痴ったわ」
「どうやら、僕はTOとしての評判はよろしくなかったみたいだ」
またまた屈託のナイ笑顔。ひろみんは、顔色を曇らせる。
「ひどかった。でも、私も同じ。きっと出逢いが早過ぎた。正直2人ともローティーンで」
ふと見つめ合う2人。あ、あれ?何だ、この空気はw
「何も…何もかも覚えていなくて、申し訳ない」
しかし、ひろみんは応えず、じっとジレミを見つめる。
「でも、君は優しくて美しい。きっと、全て僕が悪かったんだろう」
「…ほらね、コレょ。こんなTOが私の現場の自慢だった。楽しくて、優しくて…ちょっぴり自虐的」
「そうかな」
レジェンド"ひろみん"はワッと泣き出すや、同じメイド姿のミユリさんの胸に飛び込む。ソコは僕の指定席なんだが…
「すみません、ひろみん。最近ジレミさんがどんなコトをしてたかわかりますか?」
「若い地下アイドル達と店外交友三昧だったわ。きっと便座も上げたママでね」
「そりゃ最悪だ」
場違いな大笑いをするジレミ。
「東秋葉原のチェルシーにあるフィンのギャラリーで、ジレミさんが何をしてたかわかる?」
「悪いけど、1年ぐらい話してなかったの」
「今から彼のアパートに行きますが、同行してもらえますか?貴女なら何かわかるカモしれません」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
午後の秋葉原マンハッタン。淡い西陽に照らされる摩天楼。
「ココが貴方のアパート。何か覚えてる?」
「いいや。目撃者としては失格だね」
「ソンなコトはナイわ」
真っ先に部屋に入って逝くジレミ。ひろみんが後に続く。
「財布が落ちてる。強盗に遭ったワケではなさそうだ」
「引き出しを開けても?」
「自由にしてくれ。聞いたか?僕は今、ラテン語を話したぞ」
ラテン語は、僕の唯一の語学A科目ナンだ。すると…
「貴方はバチカンに留学してたのょ」
「素敵だ」
「あら!ココにはロシア文学がアルわ!」
見つめ合うジレミとひろみんを遮るようにマリレが叫ぶ。
「ジレミ。君ってスイブン意欲的に読書してルンだな!」
「そうね。彼は、いつも読書したいって言ってたわ」
「また1から読み直さないとね」
僕は、彼の本棚のラインナップを見てつぶやく。
「素敵じゃないか!僕も"アモンティリヤードの樽"をイチから読み返したいょ…お?僕の本もね」
本棚の"太陽系海軍シリーズ"を指差す。
「しかし、モノが少ないわ。1人の時間が長かったみたいね、ひろみん」
「ミユリもそう思う?私も意外だったわ。もっと派手な部屋を想像していたのに(しかし、さっきからヤタラ話を邪魔スルこの人、ナンでレースクイーンのコスプレしてるの?)」
「おいタグリアだ!高かっただろ!」
僕は壁際の床に無造作に置かれた絵画を指差す。
「エマリ。コレは秋葉原で買ったの?」
「違うわ…"新婚旅行先"のシエナで買ったの。まだ持っていたのね?変だわ」
「何が?」
ひろみん、サラリと"新婚旅行先"なる爆弾発言w
「"離婚"スル時、絵を売ってお金を折半したハズ。2000万円で売れたと言って半額を送ってきたわ」
え。ひろみんと結婚して…離婚も?アキバ男子の憧れだw
「変だな。この絵、何だか見覚えある気がスル。ただ好きなだけかもしれないが…」
「そうょ。だって、この絵は…」
「テリィたん!」
続きが気になるひろみんの話を遮りラギィが叫ぶ。ゴム手をした指で銃口がラッパ型に開いた音波銃を摘み上げている。
「9ミリHz音波銃ょ!引き出しに入ってたw」
慣れた手つきで音波弾の弾倉カートリッジを抜く。
「5発撃ってるわ」
僕とラギィは、ゆっくりとジレミを振り向く。
僕達の視線は、次第に険しいモノへと変わる。
立ちすくむ、ジレミ・プスク。
第4章 その音波銃をとれ
万世橋の検視局。
「音波弾道分析の結果、フィン殺害の凶器はジレミ・プスクの部屋にあった音波銃だと特定されたわ」
「待ってょルイナ。その音波銃をジレミが撃ったという可能性はアルの?」
「ジレミのコートから音波硝煙反応が検出された」
僕達は、ストレッチャーに載せられたピクタ・フィンの遺体を前に、タブレットからルイナの"リモート鑑識"を聞く。
「でも、ソレは単に至近距離で発砲があったってコトじゃないの?」
「そうだょ!ジレミとフィンが音波銃を奪い合っている内に勝手に発砲しただけとか!」
「うーん確かにフィンに抵抗した痕はあったわね」
そら見ろ!
「そもそも何で自分のアパートに凶器の音波銃を置いておくの?何だかヘンょ!」
「博士の話にもあった。きっと夢遊病のような状態だったんだ。音波銃を部屋に置き、また外に出たとかさ!」
「ねぇねぇどーしちゃったの?おかしいのは私の方かしら。犯人がわかりかけてるのに、なぜ2人は喜ばないの?」
思わず顔を見合わせる僕とラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジレミは収監され檻の中だw
「なぜ僕が殺したんだろう?」
「それはわからない。でも、メイド有志で萌えに強い弁護士を雇います。お金の心配はありません」
「ありがとう、メイドさん(でも君だけいつもレースクイーンなのはナゼ?)」
国民的メイドの出現に一瞬ヒルんだマリレだったが、不撓不屈のメイド魂に着火しミユリさんに泣きつきジレミと面会w
僕もついて逝く。
「殺人容疑で逮捕されたのに、なぜ感謝を?」
「マリレさんのせいじゃない。秋葉原のヲタクのみんなが親切にしてくれた。馬鹿な僕は、勝手に自分が被害者だと思い込み、結果として秋葉原を騙していたのに」
「頑張れょジレミ」
思わズ声をかける僕。みんなが彼を見ている。
「もし殺人の動機がわかったら教えてくれ」
「ROG」
「…どーなるにせょ理由がわかった方が気が楽だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
秋葉原マンハッタンが朝焼けに染まり、電気街に朝が来る。
高層タワー最上階の"潜り酒場"がオレンジ色に染まる朝。
「ジレミは、文字通り身に覚えのない殺人で逮捕された。やるせないわ。最低」
「殺人犯なら、収監されても目的を果たしたって満足感が伴う。しかし、ジレミにはソレがナイ」
「テリィ様。私もマリレ同様やるせナイです」
ヲタッキーズで、ボンヤリ日の出を眺める。
「テリィたん、次は何が起きるの?」
「ラギィが検事に書類を出すだろーな」
「動機が不明でも?」
久しぶり?にメイド服のマリレが絡んで来るw
「発砲した音波銃を所持してた。証拠は充分だょ」
「でも、動機は?殺人に動機が無くても良いの?ねぇミユリ姉様も何か言ってょ!」
「ええ。だけど、動機を知る必要はナイの」
ラギィとの付き合いが長い僕達は、ソコらの間合いがわかってる。だが、恋するレースクイーンにはソレが見えてない。
「知る必要がないのは検事でしょ?でも、私達は?ねぇテリィたんもミユリ姉様も、昨夜は眠れなかったンでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジレミのアパート。現場は黄色い規制テープが張られて閉鎖されてるが、本件はSATOとの合同捜査なので構わず入るw
「ジレミの生活の何処かにヒントがあるハズだ」
物音がスル。ムーンライトセレナーダー(既にミユリさんはスーパーヒロインに変身中w)が音もなく必殺技のポーズ…
「南秋葉原条約機構ょ!手を挙げて!」
「きゃあああ!撃たないで!」
「ひろみん?」
ダイニングに入って来たアキバのレジェンド(私服だけど)は、抱えていた段ボールを取り落とし、中身をぶちまけるw
「あぁ!心臓が止まりそう!何なの?」
「ひろみん?何してるの?」
「ルシィの荷物ょ。首輪とか薬とか。親権は私にあるの。犬だけど」
慌てて必殺技"雷キネシス"を安全に放電←
「ひろみん。ココにいるとは知らなかったわ。驚かしてすみません…あら、泣いてるの?」
フロアに散らかった犬グッズを拾う彼女は…泣いてる?
「ひろみん。大丈夫?」
「まぁね…ただ、一瞬夢を見てしまったの。実は、ジレミはアキバのTOじゃなくて、群馬でキャバをやってた頃の太客だった。まるで、オママゴトのような結婚生活だった。その彼とやり直そうなんて、私バカょねお馬鹿サンょね」←
「馬鹿じゃないさ。でも、ひとみんは確か…」
ひとみんは、先日の国営放送の特集で、既婚であり、既に息子がいるコトをカミングアウトして物議を醸したばかりだw
「彼と再会した時、何年間も喧嘩別れしたママでいたコトがどうでもよくなった。最初に彼と出会った時みたいな気分になれたの。あの絵が未だあるのを見て、彼も同じ気持ちかと思ってた」
「新婚旅行で買った絵?」
「YES。買うつもりはなかったの。2人で画家のアトリエを訪れた時、彼がふざけて、あの絵を手に取った。そしたら、未だ乾いてなくて…画家はカンカンになって怒った。あの頃、指の跡を見ては笑っていたわ。その絵を売ってないと知って、もしかしたら、と考えた。とんだ勘違いょ」
何が勘違いナンだ?
「その新婚旅行で買った絵は、コレじゃナイの?」
「YES。彼がつけた親指の跡がナイ。コレは贋作だわ。やっぱり売ってしまったのね」
「ちょっち待った、ひろみん。今のホントか?元の絵にあった親指の跡がナイ?ソレがナイ以外はモノホンと変わらない贋作ってコトか?」
こりゃタイヘンだ!
「YES。彼がつけた親指の跡はココの隅ょ。でも、キレイに仕上がってる」
「この絵は贋作。贋作を扱うのは?ミユリさん、じゃなかった、ムーンライトセレナーダー?」
「マルチバースの贋作バイヤー、バヒル・ハルン総領事様ですね、テリィ様。コレでやっと殺された画廊オーナー、ピクタ・フィンとつながりました。マリレの大事なヒーロー様がギャラリーにいた理由もね」
ムーンライトセレナーダーは、傍らのロケットガール、ヲタッキーズのマリレを見て微笑む。この場は僕がまとめよう。
「ハルン総領事によれば、ギャラリーで2人は口論してた。ソレはきっと原画についてだ。でも、コレが贋作なら原画は何処だ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昼下がりの中央通り。ドン・キホーテ秋葉原店からスマホをしながら出て来たハルン総領事は、ドライバーに注意スル。
「おい、もっと丁寧に扱え!美術品だぞ!」
不貞腐れた表情で大きな画板をしまいながら、割と粗雑にトランクを閉めるドライバー。見かねた?僕が声をかけるw
「マルチバースに帰ルンですか?総領事」
「いや、リアルなパレンバン出張だ。神田リバー水上空港から飛行艇で飛ぶ。急いでルンだ」
「今回も良い絵画を仕入れましたか?」
絡みをヤメない僕を見て、総領事は指を鳴らす。黒コスプレの妖精とロケットガールが"舞い降りる"。
僕も指を…あれ?上手く鳴らないけど、エアリとマリレが舞い降りて…おぉ!ヒロインタッグマッチだw
ヲタッキーズvsスーパーヒロインのボディガード←
「テリィたん。悪いが時間がないんだ。君のトコロのスーパーヒロインを下げてくれ」
「仕入れた絵画を見せてょ。SATOが買うカモしれないょ?」
「(買うハズないだろ!)おい。私には外交特権があると言うのになぜわからない?」
僕越しにヤジが飛ぶw
「そーゆーのは、何か隠し事があるからでは?」
「仮にあったとしても、ソレを秋葉原のヲタクどもが知るコトは永遠に無いぞ!」
「貴方、免許証と車両登録を見せて」
ハルンが踵を返し車に乗ろうとした、その時なの、もしもし君達帰りなさいと…やや?ペッパー警部のコスプレ女子がw
ミユリさんだw
「な、何だ?どうして桃色レディが?」
「二重駐車ょ」
「え。秋葉原の中央通りだぞ?みんなしてる!」
僕も加勢スル。
「やや?激しく抵抗してるぞ」
「もはや犯罪ですね、テリィ様。車を見せてもらわなきゃ」
「ちょ!ちょっと待て!」
不幸なドライバーの手を車につかせ後手に手錠w
「車を捜索します」
総領事の悲鳴を背中で聞きトランクを開けるペッパー警部。
「おい!こんなコトをスル権利はナイぞ!」
「コレは領事館の車ですか?外交特権はカーサービスの車には及びませんょ総領事…あらぁトランクの中からタマタマ偶然にタグリアの超レアな親指の跡付き原画を見つけてしまったわ。タイヘンょ。どーしましょう?」
「カリオストロの銭形?」
クルリと総領事を振り返るミユリさん。
ミニスカポリスのペッパー警部が素敵←
「ハルンさん。このママ何も話さナイなら、殺人の重要証拠を持っていると秋葉原D.A.の次元庁に報告スルだけょ」
「僕は"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"に"貴重な体験談"を売るつもりさ。連中は外交特権なんて関係ない。貴方は、ろくでなし総領事として、貴方の写真がマルチバース中のタブロイド紙の一面を飾るだろうね」
「…わかった。何が知りたい?」
総領事が手を振ると黒コスのヒロイン達がポーズを解く。
「記憶をなくしたジレミ・プスクの部屋にこの贋作があったのはなぜ?」
「知らない」
「総領事。以前は同じ場所に原画が置いてあった。今まさに貴方が持ち出そうとしている、その原画だ」
総領事はガックリ肩を落として歌い出す。完落ちw
「私は、タグリアの原画が欲しいとフィンに言っただけだ。だから、てっきりフィンが所有者と交渉して入手したんだと思った。ところが、例の事件の日だが、私が絵を取りに行くと、何と私は手ブラで帰されたのだ。その後は以前に話した通りだ」
「OK、ハルンさん。でも、帰されたのなら、なぜこの絵が今ココにあるんだ?」
「今朝、電話で金を出せば絵はあると言われた」
「ふーん。誰から?」
死んだ魚の目をして白状する総領事。
「フィンのアシスタント。ダリス・タリスだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通り地下のSATO司令部。ダリスを召喚。
ムーンライトセレナーダーがダリスを取り調べw
「馬鹿らしいわ。フィンさんが殺された時、私は美術学校で授業を受けていたと言ったでしょ?」
「ところが、誰も貴方を見た人がいないのょ」
「教室の後ろにいたのょ」
「そりゃ生徒失格だな」
突っ込む僕。
「ジレミが訪れた時、貴女はギャラリーにいた」
「聞けって。何か誤解がアルようょ?」
「じゃあこれも誤解かしら?」
タブレットで"目撃者陳述書(WITNESS statement)"と描かれたペーパーの画像を示す。誰かの直筆のサインがアル。
「ダリス・タリス。貴女は、アパートの管理人に10万円を払い、ジレミの部屋に入って原画と贋作をすり替えたわね」
「ごめんなさい!先に言えば良かったわ。フィンがタグリアの原画を欲しがったけど、ジレミは決して売ろうとしない。だから、私は贋作を描かされた。ソレで、管理人に金を渡して原画と贋作を交換したの。馬鹿なコトをしたけど、やらなかったら僕はクビになっていた。パワハラを受けたんだ!」
「いいえ。フィンには買えと言われたハズょ。貴方は、そのお金を着服し、勝手に贋作とすり替えた」
懸命に抗弁するダリス。
「違う!全部フィンが指示したんだ」
「ソレは違うわ。ウソね。貴方は、他にもウソをついてる。貴方の名前もウソでしょ?ダリス・タリスは、貴方のルームメイトの名前だモノね」
「賢いょな。仕事が欲しくて、彼を名乗ったワケだ。本名を名乗っては雇われない。2度も偽造罪を犯した重罪人を雇う奴は誰もいないからな」
ムーンライトセレナーダーはタブレットをスクロール。
「あらぁスゴい犯罪歴だわ。ヘラァさん」
「ほぉ次で有罪になれば終身刑か」
「真相を知り、通報しようとしたジレミに発砲し、彼は倒れた。ジレミが倒れた後、その後フィンも撃った」
へラァは不敵に笑う。
「私を逮捕出来ると思っているの?無理だわ。証拠もないのに!逮捕してみてょ!」
「さっきのstatement、良く読んで。貴方は管理人に2度お金を渡している。2度目はジレミがウチのレースクイーンとギャラリーを訪れた4時間後ね?ジレミが記憶喪失だと知り、貴方は凶器の音波銃を部屋に仕込んだ」
「空振り三振。君はアウトだ。ゲームセット」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
解散が決まり後片付けが始まった万世橋の捜査本部。
「タグリアか。きれいな絵だね」
「だろ?」
「特に親指の跡がね」
原画を囲んで、ドッと座が沸く。
ルシィを連れたマリレが現れる。
またまた違うレースクイーンのコスプレw
「ジレミ!」
呼びかけるより先に一目散に駆けて逝く犬。
「もう行ける?」
「うん。ありがとな。よしよしルシィ。良い子だ」
「ルシィがわかるの?!」
勢い込んで聞くマリレ。笑いながら首を振るジレミ。
「いいや。ダメみたいだ」
「でも!ルシィの方は覚えてるみたいね」
「…ラギィ警部。世話になった。君に逮捕されるのも悪くなかったょ」
顔馴染みとなった署員達と次々握手するジレミ。最後に…
「ありがとう、ラギィ警部」
「ねぇ貴方とマリレは今後…」
「お互い惹かれ合ってる。今はそれで充分だ…じゃまた記憶を失ったら来るょ!」
微妙な挨拶だ。みんなも変な顔。ジレミ1人が大笑いスルw
大きな画板を手に出て行く。ルシィを連れたマリレが続く。
「来てくれてありがとう」
「良いのょ」
「バウワウ!」
見送るエアリがつぶやく。
「一方には、15年のヲタ活の歴史。一方は初デート気分か。あの2人は続くかしら」
「きっと長続きするわ」
「ラギィ警部。ずいぶん今回はロマンチックなんだな」
僕は少なからズ驚く。
「私は寝る時も、音波銃を手放さないけどね」
「テリィたんは、続くと思う?」
「ハッピーエンドを期待したいな。だって、僕は作家だぜ?SFだけど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝の"潜り酒場"。
「あら。今度はテリィ様が朝帰り?」
「ミユリさん、今回はひろみんに鈴つけてくれてthank youね。お陰で色んなものが上手く収まったょ。さっきまでラギィと話してたトコロさ」
「ラギィと?」
すかさずチェックが入る。カウンターパンチを出す。
「まぁ元カノ達とも仲良くしとかないとな!で、ミユリさんは何を?」
「…ジェドからです。ロマンチックでしょ?」
「枯れた花?徹夜で頭が働かないんだけど」
小学校でやった"推し花"を思い出す。
「私が池袋を卒業スル時にヲタに配った花です。ずっとチェキ帳に挟んでとってたみたいで、昨日送って来ました。メッセージと一緒に。"もう一度チャンスをください"ですって」
「今回の事件と同じだ。ソレは生きるコトの代償だね」
「テリィ様。私は怖いの」
僕はドライフラワーを取り上げカウンターの上に置く。
「この花は、もう死んでる。いわば、死んだ記憶なのさ。でも、ミユリさんは違う。生きていルンだ。新しい記憶を作りなょ」
「テリィ様、いつからそんなコトをおっしゃるように…」
「実は、元カノ達から教わったのさ」
何か逝おうとしたミユリさんの唇を下手なキスで塞ぐ。
カウンターを挟みキスする僕達を朝焼けが染めて逝く。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"記憶喪失"をテーマに、記憶喪失の証人、贋作を売る画廊オーナー、そのアシスタント達、マルチバースに贋作を売り飛ばす外交特権を持つバイヤー、ヒロインの元TO、精神科医、記憶喪失男に取り入るニセ妻、贋作を追う超天才やハッカー、敏腕警部、ヲタッキーズなどが登場しました。
さらに、ヒロインと元TOの微妙な恋の駆け引き、ヲタッキーズメンバーの恋の行方などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、非ヲタク系インバウンドのお陰ですっかり普通の国際観光都市化しつつある?秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。