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84. 他の班の人達

 

「眠い。眠過ぎる……」


 まだ、野営訓練が始まる前だというのに、1時間ごとに鳴る爆発音のせいで、子爵令嬢サラ・レッサーパンダの班の者達は、一睡も出来なかった。


 しかも前日は、陣地取りの為の行軍。

 イーグル辺境伯領都イグノーブルから、ヤヤヤム高原まで結構な距離があるし、しかもヤヤヤム高原は、起伏が激しい高地。狙い通りの陣地を確保できたがクタクタ。

 だって、王都からイグノーブルまで、5日間かけての馬車旅だったので、この1週間、休みという休みは全く取れてないのだ。


 そして、着いたら着いたで、ヤヤヤム高原の下見。でもって、やっとこさ陣地で睡眠取って、開戦に備えようと思ったら、ずっと爆竹音。もう、開戦前からボロボロの状態なのだ。


 そして、開戦時間の朝6:00になる。


「眠い。眠過ぎる。きっと、他の班も一緒だよ!」


 という事で、やっとこさ睡眠。しかし、


 ドッカ~ン!


 30分後に爆発音がして飛び起きる。


「どこかの班が攻撃受けてる?」


 サラは、班の仲間に確認を取る。


「多分、Dクラスの班の陣地がやられてるぞ!」


 班の仲間が応答する。


「戦闘に備えるわよ!」


 眠い目をこすり、疲労困憊の状態で昼の間、ただひたすら陣地を守り続け、再び夜が来る。


 パパパパパパパーーン!!


 また、爆竹。


「眠れない!!」


 本来なら、見張りを順番にして仮眠を取るのが普通なのだが、みんながみんな疲労困憊でボロボロなのだ。

 気を抜いたら簡単に目が閉じてしまう。

 だというのに、爆竹音のせいで、強制的に起こされてしまうのだ。


「なんなのよ! 一体! 攻撃を仕掛けてくるでも無し、音だけって……どこの班がやってるの!」


 そして、2日目の朝を迎える。


「今日は寝る! 何があっても寝る!」


 もう、サラは開き直る。野営訓練なんかどうでもいい。どっかで戦闘が起きてても寝る。自分達の陣地が攻められても寝る。兎に角、眠たいのである。


 とか、思ってたら、


 パパパパパパパーーン!!


「何で、今日は、昼間も鳴るのよ!」


 てな感じで、ヨナンの嫌がらせは、想像以上に効果があった。


 ーーー


 Cクラス、クロー準男爵家長男、サリバン・クローの班の場合。


「疲れた……」


 クローの班は、結構貧乏。

 イーグル辺境伯領への行軍の途中、金が足りなくなって、イーグル辺境伯領の前の街で、荷馬車を下りる事となって、その後は徒歩でイーグル辺境伯領領都イグノーブルまで来たのだ。


 本当にタッチの差。後、5分遅れてたら、野営訓練に参加出来なかったのである。

 そしてそのまま、下見もする事なくヤヤヤム高原に向かい、サラの班と同じように、爆竹の洗礼を受ける。


「頭おかしな奴が居やがる……」


 最初は、攻撃を仕掛けられたかと思ったが、まだ開戦前なので、直接的な攻撃は禁止。

 だけれども、音だけなら問題無い。

 その辺の事を計算しつくして嫌がらせして来ているのだ。


「兎に角、寝ろ! 明日は早い! 眠れないのなら、耳の穴に小石でも詰めとけ!」


 貧乏貴族のサリバンは、切り替えが早かった。


 開戦初日は、取り敢えず、様子見。

 地図を見て、近くの陣地の偵察に行く事にした。

 自分達は、Cクラス。正攻法では絶対に、上のクラスの班と戦っても勝てないと分かっているのだ。


 そして、偵察により分かった事は、積極的に攻めてるのは、Sクラスの2つの班と、Aクラスの1班だけ。


 他の班は、多分、昨日の爆竹攻撃で寝不足状態のようで、殆ど動いていない。

 唯一本戦に参加できた最後のDクラスの1班は、朝一の攻撃で壊滅。

 サリバンの班じゃない他のC班は、陣地を放棄してゲリラ戦。B班2チームとA班1チームが初日に、Sクラスの班によって壊滅させられたようだった。


 でもって、改めて野営訓練のルールの説明だが、最後にどれだけ陣地を確保したかによって、勝負が決まる。誰か一人でも陣地の旗のある場所を守りきればOK!


 そして、本戦に参加できたのは13チームで、殆どのチームは約10名。必然的に、15ある陣地のうち5つの陣地は、1位になった班は確保出来ないのだ。下位チームはその5つの陣地を最終日に奪取する事を狙っている。


 そう。この野営訓練には敢闘賞というのも存在してて、Aランチ無料券を20枚貰えるのだ!


 そして、1位になりそうな班の班員を減らすのも重要になってくる。

 どれだけ班にチートな奴が居ても、一人しか生き残らなければ、1つの陣地しか確保出来ない計算になる。


 なので、レベルの低い班は、元々ゲリラ戦狙い。

 到底、真正面から戦ってもレアスキルを持ってるSクラスの奴らや、Aクラスの奴らなんかに勝てないから。


 でもって、昼の間に、サリバンの班が目を付けたのが、Sクラスのヨナン班だったのだ。


 陣地は補強されてるようだが、誰も見張りが居ない。多分、昨日の爆竹騒ぎのせいでみんな寝てるのだろう。

 全くもってヤル気がない。


 これは、完全に下克上のチャンス。下位クラスが上位クラスを倒すと、Aランチの食券以外にも成績が上がって、就職が優位になるのである。しかも、この野営訓練には、王都騎士団の他にも、有力貴族が見に来てるので、その貴族が所有する騎士団にスカウトされる可能性があるのだ。


「必ず、勝ち残ってやる!」


 Cクラスの中でもサリバンのクラスは、貴族の次男坊や三男坊が集まる落ちこぼれ班。家を継げないのは決まってるのて、就職の為にアピールしなければならないのだ。


 しかも、ヨナンの班は素人目にも、良い場所とは言えない陣地を確保している。

 まあ、辺りに何もない平地なので、余暇のキャンプするには持ってこいの環境だが、イザ守るとなると、遮蔽物も何もないので、攻めて下さいと言ってるようなもの。


 でもって、陣地の周りに石の壁が設けられてるのだが、その高さがたったの2メートル。

 まあ、確かに身長より高いのでよじ登るのは大変だが、よじ登れない高さではない。

 それより、他の陣地を攻める方が大変だしね。


 そして、作戦決行の深夜1時。


 辺りは真っ暗で、とても静か。

 班員全員で、2メートルの石壁をよじ登る。


 そして、次々と登った者から、石壁の下に飛び下りる。


「ん?」


「キャァァァァァーー!」


 2メートルの筈なのに、中々底につかない。


 ドボン!


 何故か、地面じゃなくて水の中。


 しかも、地上から50メートルもある地の底。

 なんとか泳いで足が着く陸地に上がるが、どう考えて地上に戻る事など出来ない。壁はツルツル。気づいて飛び降りなかった仲間達も、50メートルもある縄を持ってないし。


 下に飛び降りなかったサリバンは決断する。


「このまま決行する!」


 もう、半分の戦力を失っているのだ。

 このまま戻ったら、全てが無駄足になってしまう。


 だが、


 ドッカーン! ドッカーン! ドッカーン!


 半数脱落した所で諦めとけば良かったのに、全員が地雷原に突入してしまい、あえなく全滅してしまったのであった。


 南無三。


 まあ、夜中に爆竹鳴ってない時点で、本来なら、何かおかしいと気付けても良かったんだけど、寝不足と疲れで、サリバンの班の者達は集中力が鈍ってたのだろう。


 それに引替え、ヨナンの班は、スーザン以外は、体調万全でお肌もツルツル!

 どうやら、この辺りの温泉の効能は、美容効果が高い泉質のようだった。


 てな感じで、ヨナンの班は作戦通り、心身共万全の状態で、最終日の3日目を迎える事となったのだ。



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