66. ジミーに弱い男
無事、冒険者登録が終わると、エリザベスの実家であるグリズリー公爵家カララム王都別館に向かう。
なんか知らないが、カレンも一緒に着いてきている。
まあ、グリズリー公爵家も、イーグル辺境伯家も、みんな親戚なので問題無いといえば、問題ないのだけど。
「げっ!本当に母さんが若返ってる!」
ジミーが、エリザベスを見るなり驚いている。
「というか、何で、カレン・イーグルまで居るんだよ!」
どうやら、ジミーは、カレンにボコボコにされてから、カレンに拒否反応を起こしてるようだ。
「それはこっちセリフよ! なんで、アンタみたいな弱っちい奴が、グラスホッパー家の人間なのよ!」
カレンも、ジミーに容赦ない。
「俺は、弱くなんかない! グラスホッパー家で、唯一の剣術スキルLv.2なんだぞ!」
ジミーは、知らない。五男のコナンも、剣術スキルLv.2なのを。
しかも、コナンは格闘スキルLv.2も持ってるし、ユニークスキル みじん切りLv.3まで持ってるのだ。
本当に、コナンのみじん切りの速さといったら、もう神レベル。
それを、剣術スキルLv.2と併せて使うようになれば、多分、トンデモないケミストリーが起こるに違いないのである。
「私の見立てだと、コナンや、シスより、アンタの方が才能なさそうだけど?」
コナンとシスにも会った事ある、カレンが見たままの感想を述べる。
「何で、俺が弟や妹より弱い事になるんだ!
俺こそが、グラスホッパー家最強の男だぞ!」
ジミーが、モブ丸出しで吠える。
「何で、私より弱いアンタが、グラスホッパー家、最強になる訳?
絶対にエドソンさんの方が強いし、エリザベス叔母様の方が強いでしょ!
それに、グラスホッパー家で一番強いのは、どう考えても、私の婚約者のヨナンでしょ!
なんたって、レッドドラゴンを1人で倒しちゃったんだから!」
何故か、この中で、一番他人である筈のカレンが胸を張る。
「はっ? ヨナンだと? そんな訳ある訳ねーだろ!
ヨナンは、そもそもグラスホッパー家の人間じゃねーし!」
バチン!
ずっと、静観して見てたエリザベスが、ジミーの頬を叩く。
というか、勢い余って、ジミーは吹っ飛び、壁にめり込んでしまった。
「あら? 私ったら、はしたない」
はしたないで済む話なのか?まあ、教育的指導なのかもしれないけど、やり過ぎだろ。
まあ、エリザベス的には、優しく叩いただけかもしれんけど。
「お母さん! やり過ぎよ!」
アン姉ちゃんが、慌てて、壁にめり込んだジミーを引っこ抜く。
グキャー!!
その際、ジミーの掴まれた腕が、粉砕骨折した事など、全く気付いていない。
まあ、ある意味最強なのは、自分の凄さを全く気付いてないアン姉ちゃんかもしれない。
そのせいで、死に戻り前のヨナンは相当ボロボロにされてたし……。
「アン、もう離してあげなよ。ジミー兄さんが、泡吹いて気絶してるしね」
多分、グラスホッパー家で一番常識人である三男のトロワが、ジミーを介抱?アン姉ちゃんから解放する。
そう、ヨナンは、このトロワ兄に、いつもジミーとアン姉ちゃんに修行と称してボコボコにされてる時、それとなく助けられていたのである。
でもって、何故だか知らないが、トロワ兄に助けられると、いつも、痛みがスーと引くのだ。
でも、今、その秘密が分かってしまった。
名前: トロワ・グラスホッパー
年齢: 15歳
スキル: 剣術Lv.1
ユニークスキル: 身体強化Lv.2、癒し手Lv.2
力: 250
HP: 350
MP: 790
多分、この癒し手Lv.2によって、トロワが手で触った所がある程度完治してしまうのである。
だって、トロワがカララム王国学園に入学してから、今まで、一度も骨折なんかした事なかったのに、アン姉ちゃんのしごきで、毎回、ボキボキにされてたし……。
多分、その前からも、ヨナンの骨は折れてたと思うけど、トロワ兄が、無意識のうちに、ヨナンの骨折を治してくれていたのだろう。
実際、ジミーの腕は粉砕骨折してて、少し変な方向に向いてたけど、今は真っ直ぐになって、打撲程度に収まっている。
これは、逐一、鑑定スキルが、ジミーの怪我の情報を出してくれてたので間違いない。
「糞っ!痛てっーな!」
どうやら、ジミーの気絶も完治したようである。
「どう、分かった? アンタが、グラスホッパー家最弱なのよ!」
カレンは、見下しながら、ジミーに追い討ちを掛ける。
「そんな訳ねー! 俺は剣術スキルLv.2なんだ!」
名前: ジミー・グラスホッパー
称号: グラスホッパー家最弱の男
年齢: 16歳
スキル: 剣術Lv.2
力: 120
HP: 290
MP: 220
でもって、これがジミーのステータス。
まだ、コナンやシスより少し強いが、既に、称号にグラスホッパー最弱の男と記載されてしまっている。
というか、今さっき、追記された。
多分、誰かが、鑑定スキルのデータベースに新たに記載したのだろう。
どうやら、鑑定スキルLv.3には、ウィキペデ○ア的機能が付いていたようだった。




