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53. イーグル領の大森林

 

「大森林で狩りって、紅葉狩りとか、イチゴ狩りみたいなフルーツ狩りに行くんじゃないのか?」


 ヨナンは、グラスホッパー領の大森林で魔物など見た事ないので、不思議に思う。

 まあ、奥まで行けば魔物が居るかもと言われているが、ヨナンは未だに大森林で魔物は疎か、動物も見た事がないのである。


「ヨナン。ウチの領地の大森林では魔物が出てこないが、イーグル辺境伯領では、凶暴な魔物がウジャウジャ出てくる魔境と言われていて、たくさんの冒険者も活動してるらしいぞ!

 俺も、今度の夏休みにでも遠征して、学費と生活費を、短期間で荒稼ぎしに行こうと思ってたくらいだからな!」


 セントが、イーグル辺境伯領の大森林についてレクチャーしてくれる。


「そうよ! 大森林のお陰で、イーグル辺境伯領の冒険者ギルドは、カララム王都と一二を争うぐらいに大きいのよ!

 私も、冒険者として、大森林で腕を上げたし!」


 カレンが付け加える。


 そして、カレンに呼応するように、ずっとヨナンの傍にいたエリスが語り始める。


「私もエリザベスと会ったのは、この大森林だった。確かあれは、エリザベスが13歳の夏休みにお母さんの実家であるイーグル辺境伯領に遊びに来てた時、エリザベスは、僅か13歳で、オークを殴り殺していた。

 そして、当時、イーグル辺境伯領でS級冒険者をしてた私に果敢に話し掛けてきて、『私とパーティーを組まない?私とアナタが組んだら、きっと最強のパーティーになるわよ!』と、まだ、冒険者にすらなってないエリザベスが言ってきたんです」


「そ……そうなんだ……」


 エリスが言葉に抑揚をつけずに、クールビューティーの顔で、いきなり語り始めると、ちょっとビビる。


「ん?孤高のS級冒険者、氷の微笑のエリスが唯一所属してたのって、あの伝説のS級パーティー『熊の鉄槌』じゃないの?

 て?! えっ? もしかして、何故か魔法使いなのに、前衛に出て、素手で魔物を叩き殺す、『熊の鉄槌』の団長、ゴリラパンチのエリザベスって、エリザベス叔母様だったの!」


「そう」


 カレンの質問に、エリスは短く答える。


「というか、今の話って、伝説のS級パーティー『熊の鉄槌』の誕生秘話じゃないの!」


 何故か、カレンは滅茶苦茶感動してる。

 どうやら、カレンは、伝説のS級冒険者パーティー『熊の鉄槌』の猛烈なファンだったようだ。


「そして、あそこで酒樽を抱えて、ベロベロに酔っ払っているのが、学生になって王都で冒険者になったエリザベスに、酒の大飲み勝負で負けて軍門に下った、当時王都No.1冒険者パーティー『ハンマーシャーク』の元団長、大金槌鬼の異名を持つゴンザレス」


「ええー!あのオジサン、タダの酒好きドワーフじゃなかったの!」


 カレンが、ちょっと引いている。


「それより俺は、学生がドワーフの親父と酒の飲み比べしてた方が、気になる所なんだけど!」


「それが、エリザベスが14歳の時」


 エリスが、ヨナンの疑問を聞いて、更に付け加える。


「14歳って、まだ、未成年じゃねーかよ!」


『エリザベスさんって、今の感じと全く違って、相当なお転婆さんだったんですね!』


 鑑定スキルが、冷静に感想を述べる。


「お転婆のドが超えてるだろ! というか、とっとと行くぞ!

 ここで喋ってたら、直ぐに日が暮れちまうよ!」


 ーーー


 以外と語り始めると止まらなエリスを静止し、ヨナン達は大森林に向かう。


「本当に、結構、冒険者が居るんだな?」


 ヨナンは、ちょっとウキウキする。ここに来て、やっと異世界転生者ぽく、冒険者ぽい事をやれるのだ。

 まあ、最近では、鑑定スキルに見せられた日本での記憶が徐々に頭に定着してきたのか、完全に自分の記憶のようになってきてるのだ。

 まあ、元々、自分の記憶なのだけど。


「アッ、魔物発見!」


 シュン!


 魔物を見つけたエリスが、弓矢で魔物を仕留める。


「流石、エリス様!」


 憧れのエリスの攻撃を見て、カレンが感動してる。


「アッ! また、発見!」


 シュン!


「お見事!」


「アッ!また!」


 シュン!


「凄いです!」


「アッ! またまた!」


 シュン!


「凄いです……」


「また!」


 シュン!


「……」


「また、いました!」


 シュン!


「……」


「アノ……エリスさん?カレンにも、攻撃させてやってね……完全に拗ねちゃってますから」


 ヨナンが気を利かせて、エリスを制止させる。


「しかし、主様を守るのが騎士の役目ですし?」


 エリスは、何が悪いのかと、クールビューティーに答える。


「イヤイヤイヤ。折角、狩りに来たんだから、俺達も、一応、狩りしたいじゃん!

 俺って、一度も魔物を狩った事ないし」


「あ! もしかして、ご主人様は魔物を狩ってみたかったのですか? それなら」


 シュン!


 エリスは、魔物の急所を外し、ピクピク半殺しの状態にして、


「主様! さあ、どうぞ! ここら辺をザクッ!と一突きすれば絶命しますので」


 魔物の心臓の辺りを指差す。


「イヤイヤイヤイヤ。俺がやりたいのは姫プレイじゃないし!これが姫プレイと言うのかもわかんないし!」


「う~ん……中々、主様は注文が多いですね……」


 何を悩む事があるのか、エリスはクールビューティーな顔をして真剣に悩み出す。


「あの……何もしなくていいのでは?」


 カレンとかエリスとか、有名人と行動してた為か、大人しくしてたセントが、思わず助け舟を出す。


「アッ! なるほど。確かに主様は強いですから、私が頑張らなくても良かったんですね!」


「そう!それ!俺、本気出すと、結構強いから!」


 ちょっとだけ、過保護のエリスを分からせようと思い、ヨナンは、魔法の鞄の中から聖剣ムラサメを取り出す。


『ご主人様! 何、出してるんですか!

 それは、この世界で使ってはいけない代物ですよ!』


 鑑定スキルが慌てる。


「大丈夫だって! ただ素振りしてみせるだけだって!」


 とか、軽い気持ちで素振りすると、


 ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダーーン!!


 ただの素振りが、雷、火、風、氷の神級魔法の渦巻きを発生させ、その斬撃波が、ヨナンが素振りをした方向一直線に森を消滅させ、たまたま線上100キロ先にいた伝説の魔物レッドドラゴンに命中し、絶命させてしまったのだった。多分……。


「主様。レッドドラゴンを倒したみたいですよ!」


 エリスが、ヨナンに伝える。


「えっ? 見えるの?」


「はい。私は近くのものはみえませんけど、遠くのものは良く見えますので!」


 と、エリスは、ヨナンと鼻と鼻がぶつかりそうな距離で報告してきたのだった。


 エリスの老眼恐るべし。


 ーーー


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