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49. 押し掛け女房

 

「叔父様、もう一つお願いがあるんですが。どうか、うちのヨナンが商会長を務めるグラスホッパー商会の支店を、イーグル辺境伯領、領都イグノーブルに設立したいのですが?」


 エリザベスは、イーグル辺境伯に申し出る。


「ん? 別にいいぞ。ヨナンはうちの孫娘の旦那になるんだ。旦那の商会なら喜んで設立を応援する。

 じゃが、商会を建てるとしても、我が領の一等地に土地はあまっとらんぞ?」


「その件ですが、イグノーブルの城壁を拡張して、その拡張した分の土地に、グラスホッパー商会を建てる方法を考えてるんですが?」


「まあ、それならいいが、そんな大掛りな工事をするとしても、ウチは一切お金は出せんぞ?そもそもしなくても良い工事だからな!」


「工事のお金は、全てグラスホッパー商会が出すのでいいんですが、その代わり、拡張した分の土地はタダで貰えないでしょうか?」


「うむ……それはどうするかな……」


 ちょっとだけ、いつも即決のイーグル辺境伯が悩んでいる。


「それでは城壁の正門を、鉄門からアマダンタイトミスリル合金に強化して、全ての魔法攻撃を弾き返せるようにしましょうか?」


「ん? そんな希少鉱石を、あの巨大な門に使うのか?」


「しかも、厚さ30センチ!」


「乗った!」


 イーグル辺境伯は立ち上がり、エリザベスの手を両手でしっかりと握り締める。

 まあ、無理もない。領都イグノーブルの巨大な正門をアダマンタイトミスリル合金30センチの厚さで作ったら、10兆マーブルは下らない。

 それをタダで作ってやるというのだ。土地代なんてここまでくるとタダみたいなもの。


 そして、その材料は、大森林で取れるからタダ。どちらにとってもウィンウィンの契約なのであった。


 因みに、アダマンタイトミスリル合金の門は、既にグラスホッパー領で採用されており、グラスホッパー領の場合は、厚み50センチ。

 そして、全ての城壁には、ミスリルコーティングが施されており、全ての魔法攻撃を弾き返すギミックが組み込まれたりする。


 てな感じで、その日のうちから、工事を始める。

 既に一度、カナワン伯爵領でやった工事なのでお手のもの。


 その日のうちに、城壁の拡張工事も、アダマンタイトミスリル合金の門も、グラスホッパー商会イーグル支店も、ロードグラスホッパーホテルも、お値打ちな宿も、お食事処も、温泉スパ施設も、諸々完成させた。


 同時進行で、現地従業員の募集も掛けており、早速、明日には面接までやる段取りになってたりする。


 そんな様子を、イグノーブル市民は、口をあんぐり開けて見ていたのは、お約束。

 誰かに聞かれたら、貴族の血筋だからと答えておいた。


 でもって、俺達は、せっかく建てたので、ロードグラスホッパーホテルに泊まる事にする。

 このイーグル支店のコンセプトは、無骨。

 西洋の中世のお城をイメージして建てている。

 もう明日には、セバスチャンが鍛えたホテルマンが10人ほど、イーグル支店に働きに来る運びになっており、後は、現地従業員を教育して、2週間後にはフルオープンする予定だ。


 まあ、そんな感じで仕事が一段落つき、明日からの予定を、ホテルのロビーでみんなで確認してると、


 少しエリザベスに面影が似てる赤毛の少女が1人。ロードグラスホッパーホテル、イーグル支店に、ヨナンを訪ねて来たのだった。


 ーーー


「ヨナン! もう聞いてると思うけど、アンタと私の婚約が決定したから、今日から、私と寝屋を共にするわよ!」


 イーグル辺境伯の孫娘カレン・イーグルが、来た早々、偉そうな態度でトンデモナイ事を言ってきた。


「その件に関しては、イーグル辺境伯が、勝手に決めた事なので」


 ヨナンは、やんわりと拒否する。

 こんな、自分勝手で凶暴な女など、絶対お断りなのだ。


「イーグル辺境伯領では、お爺様の決定が絶対なの! 逆らう事なんて出来ないわ!」


「でも、そしたらカレンさんの意見はどうなんですか?

 僕の事を、大した事なさそうな男とか言ってませんでしたか?」


 人間って、第一印象が大事なのだ。

 カレン・イーグルとの出会いは最悪。

 絶対に好きになどなれない。


「それは……私のスカートを見られちゃったんだからしょうが無いわよ……」


「えっ? スカートの中身を見られたら結婚するルールでもあるんですか?」


「アンタ、一々、五月蝿いわね! こんな可愛い美少女が結婚してやるって言ってんだから、つべこべ言うな!

 こっちは、アンタに恥かかされたんだから、アンタが責任取るのが筋ってもんでしょ!」


 カレンは議論するのが面倒になったのか、急に逆ギレし出す。


「だから、カレンさんの本当の気持ちは?好きでもない男と結婚なんてしたくないでしょ?」


「だから、アンタの事は別に嫌いじゃないわよ!

 元々、私より強い男と結婚しようと思ってたから。この私を小枝で倒したアンタは、私と結婚する権利があるの!

 それに、今日、ずっと見てたけど、このホテルとか城壁とか、一瞬で建てちゃったでしょ!

 お金もたくさん稼げそうだし、楽できそうだし!

 お爺様も、身分云々じゃなくて、強くて甲斐性がある金持ちな男と結婚しろと、いつも言ってたしね!」


 カレンは成長途上の胸を張り、悪びれる事なく言い放つ。


「結局、俺の金目当てかよ!」


 てな感じで、カレンが、カララム王国学園に帰るまでの間、押し掛け女房としてヨナンと寝屋を共にする事となったのだった。

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