表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/177

29. エリザベス・グラスホッパー

 

 グラスホッパー領に帰る道すがら、コナンとシスが疲れて眠りについた後、鑑定スキルと、今後の会議を始める。


「イーグル辺境伯の件、どうすっかな……」


『やっぱり、イーグル辺境伯の寄子になってた方がいいんじゃないですか?

 前の周回の時も、結局、グラスホッパー家が、貴族のどこの派閥にも入ってなかったから、トップバリュー男爵家にいいようにやられてしまったということも有りますし』


「やっぱ、そうだよな。イーグル辺境伯の派閥に入ってれば、少しは安心出来るかもしれんしな。なんかの拍子で、トップバリュー男爵とかち合った場合、グラスホッパー家が、大貴族のイーグル辺境伯の派閥に所属してたら、トップバリュー男爵家も、おいそれとグラスホッパー家に手がだせなくなるし!」


『ですね!』


「そうすると、エドソンをどう説得するかだな。エドソンって、貴族との付き合い方とか全く分かってなさそうだし」


『ですね。多分、もうちょっと上手くやれてたら、トップバリュー男爵の策略に嵌って殺され無かったと思います』


「まあ、イーグル辺境伯の寄子になるのは決定で、後は、どうやってエドソンを説得するかだな……」


『ですね』


 一応、こんな感じで、イーグル辺境伯の派閥入りする方向で動く事を確認して、ヨナンは家に帰ってきたのだった。


「「ただいま!」」


『どうだった!』


 ヨナンとコナンとシスが、玄関を開けると、エドソンだけでなく、エリザベスも珍しく待ち受けていた。


 まあ、養子の俺だけじゃなく、本当の息子と娘であるコナンとシスも、カナワン伯爵領に泊まりで行ってたので、当然と言えば、当然なんだけど。


『ああ。みんな売れたよ! そして、今回は、100キロ入る魔法の鞄をゲットできた!

 これで、これから大量に公爵芋が売れると思うよ! そして、これ! 残ったお金!』


 ヨナンは、20万マーブルをエドソンに渡す。


『残ったお金って、これはヨナンが稼いで来たんだろ?』


「ああ。今回は、コナンとシスも手伝ってくれたから、そのお礼だよ!」


「本当に貰っていいのか?」


「ああ! 好きに使って!」


「ヨナン。アナタって子は……」


 なんか知らないが、エリザベスまで感動してる。

 余っ程、グラスホッパー家は困窮していたのであろう。


「それから、ちょっと相談があるんだけどいいか?」


「おっ? 何だ?」


「ここだと、ちょっと長くなるからリビングで」


「おっ! そうだな!」


 そこで、ヨナンは、カナワン城塞都市で、カナワン伯爵の使いの者から、イーグル辺境伯の派閥に入らないかと言われた事を伝える。


「派閥とか言われてもな……俺、貴族の付き合いとかって、全然分かんないし……」


 エドソンは、メチャクチャ困っている。

 まあ、元々、庶民で、荒くれ者の冒険者だったのだ。

 貴族との付き合い方など、分かる筈もない。


 結構、戦争の英雄なので、騎士爵に成り立ての頃とかは、どこぞの貴族のパーティーとかに呼ばれてたのだが、礼儀作法を知らないとか、訳の分からない理由をつけて全部断っていたのである。


 まあ、それが原因で、アスカと、トップバリュー男爵が画策した戦争で、誰も助けてくれる事なく、敵軍1万の部隊に、たった15人で突撃して全滅する羽目になっちゃったんだけど。


「アナタ、イーグル辺境伯ならいいんじゃない? 私もイーグル叔父様なら、知らない間柄じゃないし」


 突然、エリザベスが援護してくれる。

 というか、イーグル叔父様?


「あの?イーグル叔父様って?」


 ヨナンは、恐る恐るエリザベスに尋ねてみる。


「あら?ヨナンは知らなかったのね。私って、貴族の家を飛び出して冒険者になり、エドソンと結婚したのよ!」


 まさかの新事実。


 エリザベスは、どうやら本物の貴族令嬢であったようだ。


「あの? それって、他の兄弟達もみんな知ってるのか?」


「今、始めて言ったから、エドソン以外は誰も知らないと思うわよ?」


 ヨナンは知らなかったの?って、これ誰にも言って無かったら、誰も知らないだろ……。


「エリザベスの実家とかも、エドソンと結婚してる事、もしかして知ってるのか?」


「う~ん。多分、知らないと思う。家を飛び出した後、家の人達に誰も連絡してないから」


「何で?また、貴族に戻ったのに?」


「あらヤダ?本物の貴族なんて、戦争で武功を上げて貴族になった騎士爵なんて、誰も貴族なんて思ってないわよ!」


 なんか、凄い貴族的思考。


「あの……近くに本物の貴族が居るんだから、礼儀作法とかは、エリザベスに習えばいいんじゃないかな?

 これから貴族としてやって行くには、少しぐらい貴族の付き合いも覚えていかないといけないと思うし。

 エドソンだけならいいけど、息子のセントとかジミーとかも、これから貴族社会を生き抜く上で、他の貴族とも付き合っていかないといけないと思うから」


「そうか?」


「そうだよ!」


「じゃあ、イーグル辺境伯は、エリザベスの叔父さんらしいし、イーグル辺境伯の寄子になるか!」


「だね! まあ、多分、これからカナワン伯爵やイーグル辺境伯に、エドソンも会わないといけなくなると思うから、その間まで、せいぜいエリザベスに礼儀作法教えて貰っててね!」


「おう! 任せとけ! 俺はやる時はやる男だからな!」


 自信満々に言い放つエドソンを見て、ヨナンだけではなく、本当の子供であるコナンとシスまで、一抹の不安を覚えたのは、言うまでもない事だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ