108. デススパイダー
アレクサンダー君のお守役の俺は、仕方が無くカララムダンジョン攻略に着手する。
カララムダンジョンの地図を持ってないけど、鑑定スキルのデーターベースに、攻略済の階層までの地図が入ってたので助かった。
その地図を使い、とっととカララムダンジョンを攻略して行く。
ヨナンの得物は、大森林の木で製作した木刀。
多分、カララムダンジョンぐらいなら、この木刀で十分だろう。
聖剣ムラサメを使ったら、ダンジョン自体を破壊してしまうかもしれないしね。
でもって、現在65階層。
「軽く、ここまでこれちゃったな……」
『ご主人様が、大森林の木で作った木刀を持ったら、これくらいの偉業当然です!』
鑑定スキルが、エッヘンと胸を張る。スキルで実態無いから比喩表現だけど。
「だがしかし、『熊の鉄槌』のカララムダンジョン攻略記録に並んじまったな……」
『カレンさんや、アンさんがきっと悔しがりますよ。夏休み中、ずっとカララムダンジョンに篭ってたみたいですし』
「やっちまったな……」
『仕方が無いですよ。それがアレクサンダー君の命令なんですから。打首になるぐらいなら、チャチャっとダンジョン攻略する方が早いですしね!』
鑑定スキルが、軽い感じで言う。
だがしかし、俺の9人の女騎士は、相当苦労してるようである。
だって、あの英雄エドソンやエリザベスが所属した『熊の鉄槌』が、やっとこさ来れた階層に到達してるのだ。
流石に強くなったとしても、彼女達の実力からは逸脱してる階層なのである。
『アッ?! 今、スーザンさんから連絡が有りました。これ以上は着いてくのは無理そうです!』
「そりゃそうだろ。だって、カレンやアン姉ちゃんだって、まだ65階層まで到達してないんだろ?それなのに、この階層まで着いてこれたって、ハヤブサさん、彼女達にどんな修行を課したんだよ……」
そんな感じで女騎士?くノ一?達も撤退して、ここからは地図も無い未攻略地帯。緊張感も湧く筈なのだが、
「ヨナンよ! ドンドン進むぞ!」
アレクサンダー君のテンションは高い。
だって今の段階で、『熊の鉄槌』の持つカララムダンジョン到達記録と並んだから。
でもって、まだ倒されてない65階層のフロアーボスを倒して、66階層に上がれば、俺とアレクサンダー君が、カララムダンジョン最高到達記録を塗り替える事となるのだ。
まあ、カララムダンジョンを完全攻略出来なくても、これは大偉業であるしね!
多分、このまま行けば、歴史の教科書にもアレクサンダー君が、カララムダンジョン66階層に初めて到達したと載るであろうし。
「確か、カララムダンジョン65階層のフロアーボスは、デッカイ蜘蛛だったよな?」
『ですね。熊の鉄槌も、デススパイダーを倒せなくて撤退したという記録が残ってます』
「俺達勝てるかな?」
『勝てるんじゃないですか?エリザベスさん達、結局、デススパイダーの毒攻撃に侵されて、病むなく撤退したらしいですから、カララム王国学園の制服着てれば耐性異常を無効にできますから、きっと大丈夫ですよ!』
確かに俺は、普通にカララム王国学園の制服のままだし、アレクサンダー君も制服の上から鎧を着てるので、デススパイダーの毒攻撃はなんとか大丈夫だろう。
でもって、早速、ボス戦。
真っ白な巨大な蜘蛛が、糸を無数に飛ばしてくる。
相当なスピードの筈だが、大森林の木刀を持つ俺には、超スローモーションに見える。
だけれども、あまりにも無数に飛ばしてきたので、アレクサンダー君が糸に捕まり、簀巻きにされてしまった。
「やべー!」
流石にこれは肝を潰す。
『ご主人様が作った鎧を着てたら大丈夫ですって!』
「確かに、俺が作った鎧の強度なら、糸で潰される事はないな」
『ですね! あの糸、鑑定してみたら相当な強度ですよ。普通に触ったら、みじん切りにされるほど鋭利みたいですしね!』
「あの糸って、そんなにヤバい糸だったのかよ!」
『当たり前ですよ! あのエリザベスさん率いる熊の鉄槌でも勝てなかったんですから、そう簡単に勝てる相手じゃないんですからね!』
「だけど、俺的に、余裕で勝てそうなんだけど……」
そう。神獣レッドドラゴンをも倒せる実力を持つヨナンにとって、65階層主のデススパイダーなど、雑魚なのである。
ヨナンは、スイスイ糸攻撃と毒液攻撃を避け、木刀で一発、デススパイダーを小突いてやった。
グギャ!!
小突かれたデススパイダーは、その衝撃で地面にめりこむ。
『ご主人様にとったら、65階層のフロアーボスなんて敵じゃないですね!』
「だな」
『だけど、なんでデススパイダーを殺さなかったんですか?』
鑑定スキルが、疑問に思ったのか尋ねてくる。
「お前、鑑定スキルの癖に知らないのかよ!蜘蛛って、益虫なんだぞ!」
『蜘蛛は、ゴキブリやハエや蚊とかの害虫を食べてくれるんですよね?
そんな事は知ってますが、デススパイダーは、虫じゃなくて魔物ですよ?』
「お前も、俺の地球の記憶見て知ってるだろ! 俺の地球の母ちゃんが、蜘蛛は絶対殺すなって!言ってたんだよ!
ゴキブリ食べてくれるからって!」
『そんな理由ですか……』
「そんな理由で悪かったな!」
『この世界では、ただの害虫ですけどね』
「それは見た目だけで言ってるだろ! この世界の奴らが蜘蛛の生態調べる訳ないし!」
『まあ、人間を殺して食べる魔物の蜘蛛に引きづられちゃうから、虫の蜘蛛なんか誰も調べませんよね……』
「兎に角、俺は母ちゃんの教えを守る! もう、こちらの世界に来ちゃったから、親孝行も出来ないし……」
『そこまで言うなら、もう言いませんよ』
と、鑑定スキルが納得してくれると、
グサッ!
何を思ったのか、自らの手で簀巻きから解放されたアレクサンダー君が、瀕死のデススパイダーの脳天に剣を突き刺し止めを刺したのであった。
「て……あの……今までの俺達の会話聞いてましたよね?」
「ん? 何かブツブツ言ってたか? まあ、魔物は普通殺すじゃろ?
というか、いつもこんな感じで、部下が魔物を半殺しにして、トドメをワシにささせてくれてたんじゃが、何か問題でも有ったか?」
アレクサンダー君は、何事でもないように聞いてくる。
『姫プレイの弊害ですね。アレクサンダー君的には、ご主人様が、アレクサンダー君の為に、フロアーボスのトドメを準備してくれたと思ったんですよ』
「そんな訳あるか!俺、地球の母ちゃんにどんな顔をして会えばいいんだよ!」
『まあ、多分、一生会えませんけどね!』
「お前、酷すぎるぞ!」
『鑑定スキルだから、僕、嘘付けませんし。取り敢えず、世界樹の葉を食べさせてみたらいいんじゃないですか?
きっと、生き返りますって!』
「死んでるから、葉っぱなんか食べれないだろ!」
『なら、世界樹の雫なら? どうせ殺しちゃ駄目なら不老不死にしちゃえばいいんですよ!』
「それな!」
ヨナンは、急いで、大森林でゲットしてた世界樹の雫を、デススパイダーに振り掛ける。
ピュィ!
絶命してた筈のデススパイダーが、ヒョコっと起き上がる。
「ヤッターぞ! デススパイダーが生き返った!」
『成功ですね!』
ピュイ!
ヨナンは、小躍りして、何故かデススパイダーと一緒に踊る。
「ヨナンよ。今のは一体なんじゃ?世界樹の雫とか聞こえた気がしたのじゃが?」
そんな喜び絶頂のヨナンに、カララム王アレクサンダー君は、秘密にしていた世界樹の雫について、眼光鋭く質問して来たのだった。
ヨナン、絶対絶命のピンチ!




