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墓標
その墓の下に、あなたがいないのであれば、
空を見渡してもいないのであれば、
あなたの生家にもいないのであれば、
想いでのバスの待合室にもいないのであれば、
憧れの舞台劇場の、三列目、真ん中の席にもいないのであれば、
どうして、届ければいいでしょう。
二人見上げた11月22日の空も、
訪れたお互いの小さな六畳間も、
待合室のノートに刻んだ、小さな日付も、
憧れの劇場の、最後の舞台公演も、
話せてはいないのに、伝えきれてもいないのに、
心に浮かぶあなたは、いつだって、すべて知っているかのように、少し呆れて笑っているのです。




