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辞書
辞書を開かなくなったのは、
多くの言葉を知ってしまった、と思ったからであり、
日常、目にする言葉の中に、推測すらできない難儀なものが見えなくなったからであり、
あるいは、平易な言葉が目にするいたるところにはびこってしまったからであり、
日常、難儀な抒情的文学を開かなくなったからであり、
あるいは、たまに開いた時ですら、おおよそ積年眺めてきた文字の記憶から、おおよそ読み取れる気がしたからであり、
言葉の海に、さしも潜らずとも、息はでき、物は食え。
未知の言葉に出会わずとも、会話はでき、日々はつつがない。
辞書を開かなくなったのは、
日常の鈍化、あるいは退化。
辞書を開かなくなったのは、




