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ある剣士の旅
剣は錆びれど、旅は続く。
当てどはなくとも、この命がある限り。
昨日月が越えていった丘を今日越えて。昨日太陽が見下ろした山を今日踏み入って。
蛍に誘われ川に踏み入り、オオカミに会釈して谷を渡り。岩肌の冷たさに身を縮ませ。洞穴の温かさに目を瞑る。放浪は続く。剣は錆びれど、斬るべきもの、今の世に少なく。ただ、帰るべきところも無い身、あてどなく。
月に剣を掲げては、
「世界のすべてを見てやるんだ」
と、豪語していた君の言葉を思い出しては、また月を見上げ、丸い月を見上げ、どこまで来たのかと極北星の方を振り返る。




