68/200
潮騒とラジオとピアノ
ザア……ザア。ザア……ザア。
潮騒がうるさくてラジオのピアノは聞こえにくい。とはいえ、名前も知らないクラシックと、今日の潮騒、どっちのほうが聴くべきだろうか。右手の隣のラジオに目を落とせば、麦わら帽子があみあみの影をコンクリートの堤防に落とす。テトラポッドは気持ちよさそうに水浴びしていた。
船が出て行って数日たって、今日も今日とて夏は夏。この島の海は海。同じ波は二度と来ないとお父さんは言っていた。でも嵐でも来ない限り、この島の波は能天気で、いつも表情に乏しい。
てろてろになったピアノ楽譜と一緒に出ていった、君のことを思い出す。
コンクリートの街の中で今日にはもう、君のピアノは響いていますか。




