38/200
眼の中の朝
輝き始める新緑の樹々と、目覚め始める街並みと、女神みたいに登っていく朝日と。
開け放したベランダと、僕の掌に掴まる君と。
光ばかり捉えているが、もっと静謐な言の葉を作るには、この眼の感度は頼りなく。
透明な朝も、澄み切った空も、君の微笑みも、この眼に映っているのに。それをどう言葉にすればいいだろうか。どう文字にすれば届くだろうか。どう声にすれば聴こえるだろうか?
朝を肌に感じ、澄んだ空気を肺いっぱいに吸い込み、味わい、冷たい風に耳を澄ませる君に、どうすれば話せるだろうか。
土くさい頭の中に文庫の山を混ぜ込めど、この朝にふさわしい言の葉は芽吹かない。
「今日も朝は綺麗?」
「綺麗さ」と、返すばかりの日々と、佇む君と、ささやかな朝風にきらきら靡く黒髪と。
いつか言葉にするから。だから、今日もこの朝を眼に焼き付けるのだ。




