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しとど、しとど
さようなら、と交わすのは何より簡単で。
けれどこの雨の日、ひとり傘を差しながら君のもとへ向かうのが、何より難しい。
この夜の寒さに、体温の高い君のもとへ向かうのが、何より難しい。
しとど、しとど、傘の上で雨が躍る。
仕事終わり、疲れた体と、夜のおちゃらけたネオンは何にも釣り合っていなくて。
河沿いの道の向こう、並んだ煙突は今日も飽きずに煙を吐き続ける。
君は待つ、君は待つ、あの日の店で。
家の中のもの、どうしようか。
風呂場の掃除、どっちがしようか。
さようならと交わすのは、何より簡単で。
しとど、しとど、雨は降って。
涙を呑むのが、何より難しい。




