18/200
アルバム
大人になって思い出す。
君が海にいかなかったこと。
大人になって思い出す。
君の着替える姿を見たことがなかったこと。
大人になって思い出す。
君が草花を触るとき、必ず、撫でるように、繊細に指の腹を使うこと。
大人になって思い出す。
蟻の行列を見つめる目の奥が、朝の空よりも深かったこと。
大人になって思い出す。
家の話をしなかったこと。
大人になって思い出す。
あの子の隣にいる時だけ、えくぼができたこと。
蛹の背が割れるように。頭のいい中学へ行った君の、皺の無い学ランを猫背でまとう背中を、いつか、たまに見かけた。
横顔ばかり思い出す。
大人になって、ようやく思い出す。
アルバムの背表紙は、ざらざらとした黒。




