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野良猫
固い世界。冷たい足元、汚れたからだ、飛交う閃光。
鈍色した四足の獣は、脚も弾ませず走り去っては、飛び込んできて。煙を吐きながら、また嘶き去って。
生活導線を横断するその体は、この体になすすべなく、今日も走りきるしかないのだ、この黒い夜闇の下の、黒固い地面の上を。
全身で躍動する、一足でも気を抜けばいつ横腹にぶち当てられるか。あの剛体を。二度、視界の奥でそれを見た。
それでも、全霊をもって走りきらなければ、巣に帰る安住の時間を、捉えるはずだった獲物を、虫を、追いつくはずだったあの雌の尾を、一歩、取り逃すことになる。その一歩が、私にとっての致命になる。
軋む古傷、使い古した筋肉と毛皮、腐った飯に傷んだ臓腑、弱った視界。
全霊を持った一歩がなければ、この体はじわりと一足、夜闇の底に近づいていく。飲み込まれていく。
いずれそうなると知っても、それは今日でもないし、明日でもないのだ。
私は今日も、黒くかたい地面の上に全霊を持って飛び出した。閃光が遠くから飛び込んでくる。
左右から。
私はそれを、悠々と躱し、眼前の路地裏の闇に飛び込んだ。
その道の先は朝へ続く。




