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diabolus ex  作者: さくら
5/116

5

 未だ何の反応も示さない兼続に軽く手を振り、一花は背を向けて歩き出した。ゆっくりと歩いて行く途中、一度だけ一花は振り返り兼続の様子を確認する。先ほどと変わらず固まっているその姿を確認すると、一花は視線を戻し再び足を踏み出した。

 一花が教会から少し離れると、住宅街の静けさの中に音楽鳴り響いた。それは、着信を知らせるものであり、すぐに一花は携帯を手にする。

「Hello」

 兼続と共に居たときの表情とは打って変わり、感情のない表情と声音で通話に応える。

「I approached the target」

 そう応え、通話を終えた表情に感情が戻る。何かを確認するように振り向き、少し距離がある教会を確認すると一花は再び足を踏み出した。

 

 爽やかな朝の日差しにそぐわない表情と様子をした兼続が校門をくぐった。次々とかけられる朝の挨拶に反射的に応えながら、玄関へと向かう。靴箱の前に辿り着くと、数人のクラスメートがおり、兼続に視線を向けてきた。

「おはよ」

 朝の挨拶が人数分、投げかけられた。

「おはよー」

 先に声をかけてきたクラスメート達に少し遅れて、兼続は挨拶を返す。

「何? 寝不足? 体調悪いとか?」

 どんよりとした兼続の様子に、クラスメートの一人が声をかける。

「あーうん。寝不足……かな……」

 寝癖の残る頭を掻きながら、ばつが悪そうに兼続が答える。去り際の一花の言葉が耳に残り、何度も脳内で反芻されて兼続の睡眠を妨げたのだ。

「何? また犬の散歩コースで悩んでたとか?」

 少しからかうような口調で、クラスメートが問いかける。学校での兼続の評価は、"色々と勿体ない犬バカ"である。せっかくの見た目の良さも宝の持ち腐れのように構うことなく、口を開けば犬の話ばかりという状態だ。

「あーいや……その……」

 戸惑い言葉を濁す兼続の様子に、クラスメート達は特に気にすることもなく次々と靴を履き替えていく。それに続き、兼続も靴を履き替えた。

 他愛もない会話を交わしながら、兼続とクラスメート達は教室へと向かいだした。すぐに上着の裾を引かれ、兼続は立ち止まる。そして、背後を確認しようと振り返った。そこには、小首を傾げながら兼続を見上げる一花の姿があった。

「い、いいんちょ?」

 勝手に口から出た言葉を慌てて飲み込むかのように、兼続は口元を手の甲で押さえた。

「えーと……その……」


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