雨宮翔の憂鬱
クラウドアブダクター事件の翌日、雨宮家は今日もまったりと休日を過ごしていた。
理沙はいつものようにソファーでわたこのブラッシングをしながらTVを見ている。
ブラッシングをされるわたこは理沙の膝の上でスピピーと鼻息を立てながら爆睡していた。
そんな中、オタク達が夢にまでみた異世界への転移を果たした雨宮翔(29歳)はスマホをいじりながら悩んでいた。
悩んでいる内容は『なんで俺はこんなにモブキャラなのか』
翔のスマホには、この世界にきてからさらに加速した異世界転生/転移系の小説が映っていた。
(この作品も、この作品も主人公は大活躍してる。隠居系主人公だって、地味に見えて大体がすごいことをしてるのに....。)
そんなことを考えている翔も、仕事の同僚が悩んでいる才能を生かして大成功へと導いたり、職に困る親子を救ったりしているのだが...当の本人はその行動を当たり前と認識しているため、満足することなどないのだ。
(仮に理沙やわたこと同じ状況になったら俺は同じように活躍できたか?)
理沙の功績は、Aランク冒険者に絡まれている美少女を救い、長年後回しにされていたクエストを単独でこなしたこと。
(俺の才能があれば屈強な冒険者を打ち負かすことは...。)
理沙から聞いた話によると、怪力無双と呼ばれた冒険者のこぶしをよけずに受け止めたり、腕を握力だけでへし折ったそうだ。
翔の才能は対象を別の材質に変える力。個体はほかの個体に、液体はほかの液体になる。
例えばAランク冒険者の周りの空気を有害な空気に置き換えたりすれば、翔でもルチェを救えただろう。
(うん、無理だな。)
しかし翔は根っからの平和主義、そんな野蛮な発想など浮かばないのだ。
そもそも敵を倒す、争いを止めると言ったこと自体、不向きであることを本人は自覚していない。
(めっちゃ固い亀を何十匹も殺す....亀がかわいそうでできないな!)
たとえ人々に害を及ぼそうとも、そのせいで村が危機になろうとも、殺生をする選択肢などありえない。
(じゃあ急に子供たちと一緒にはるか上空に転移させられたら...。空気を何に変えたら助かる?液体にも個体にも変えられない...。うん、無理だな....。)
考えれば考えるほど、自分の無力さに落ち込んでいく。
翔はスマホの電源を切って立ち上がった。
脱衣所でパジャマを脱いで、お気に入りのわたこに似た犬柄のサマーニットに着替える。
「あれ?翔ちゃんどっかいくの~?」
「すぴー」
パジャマから着替えた翔を見て、理沙がブラッシングの手を休めることなく声をかけた。
「ちょっと散歩してくる~。夜までには帰るけど、帰りに何か買ってこようか?」
「あ、じゃあ卵切れちゃってるからよろしく~!もしあればコカトリスのがいいなぁ~。冷却革袋もってってね!」
最近理沙はコカトリスの卵にはまっている。
コカトリスとは尻尾だけ蛇の鶏の魔物、黄身が通常の卵より濃厚で、卵本来の味を生かした料理にはもってこいなのだ。
「あいよ~。コカトリスのやつあったら今日はオークカツ丼がいいなぁ」
「おっけい~!」
翔も理沙も、すっかりこの世界に慣れてきたようだ。
当然のように人型の豚、オークを食材としてみている。
翔は台所から氷魔法の付与された革袋を取り、肩にかけた。
地球だろうと異世界だろうと、『~買ってきて』という夫婦の会話は変わりはしないのだ。
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行先もなく、漠然と散歩を始めた翔はすれ違う人達や建物を見て考えた。
(この世界にきて早数か月....もうすっかりなじんできたなぁ。)
町を歩けば人間以外にも犬獣人や猫獣人、たまにドワーフやエルフだっている。
町並みは石造りのザ・ファンタジーともいえる建物が立ち並んでいる。
この世界に来たばかりの時は、街を歩くだけで田舎者のようにはしゃいでいたのだが、ここまでなじんでしまうと当時程の感動は無かった。
「そういえば...。」
翔はふと門番の仕事をしているときに出会ったドワーフのことを思い出した。
(ガゼダさんって言ったっけ、確か冒険者地区のゴルゲンさんのお店に遊びに来てって言われてたなぁ)
以前、翔は冒険者界隈では有名な革細工師のガゼダが王都に訪れた時に会話が弾み、気に入られた。
その時に、気に入った相手にしか作らないといわれているガゼダが直々に翔専用の装備を作ると約束してくれたのだった。
(俺なんかが防具を作ってもらったところで何にもならないけど...あいさつしに行こうかな。)
翔はガゼダに会うために冒険者地区のゴルゲンの店に向かうことにした。
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(ここかな?)
道中で冒険者に場所を聞きながらも何とかゴルゲンの店にたどり着いた翔は、店の外装をまじまじと見つめた。
店とは思えないこじんまりとした石造りの家、屋根には大きな煙突があり、煙がモクモクと空に昇って行っている。
以前ガゼダと話したときは仕事モード、その時に気に入られた以上、素の話し方で接してしまうとガゼダを不快に思わせてしまうかもしれない。
今日はラフな格好ではあるが仕事の時と同様に、きちっとした態度で対話しようと思った翔は、目をつぶってカチッと脳内スイッチを切り替えた。
「...よし。」
けだるそうな表情から一転して、キリリとした好青年へと変わる翔。
木でできた扉をコンコンコンと3回たたいて扉を開けた。
「失礼します。」
家の中に入るとすぐにカウンターがあり、それ以上人が立ち入れないようになっている。
壁には様々な武具がおいてあり、カウンターの向こう側には一人のドワーフが椅子に座ってジロリと翔を睨んでいた。
「こんにちは、門番をやっている翔というものですが、こちらにガゼダさんはいらっしゃいますか?」
「ん?ああ、おめぇがショウか。おい!ガゼダ!!!お前が言ってたショウってやつが来たぞ!!!」
ゴルゲンがその小さな体からは考えられないほどの大きな声で、店の奥に向けて叫んだ。
ゴルゲンの声で壁にかかっている武器がカタカタと揺れたのを翔は見逃さなかった。
(すげー声....イメージ通りだなぁ。)
ゴルゲンが呼びかけると、すぐさまドタバタと走る音が聞こえた。
少し待つとひょこっと奥の扉からガゼダが顔を出す。
「ショウ!来たか!!!ちょっと待ってろ!!!」
そう伝えると再度扉の向こうへと消えるガゼダ、忙しい時にきてしまったかな、と少し申し訳なくなる翔にゴルゲンは話しかけた。
「あいつ、気に入った奴にはとことんあめぇんだ、ちょっと待ってな。....お前は俺らドワーフを対等に扱うんだな?」
「ええ、私からしたらドワーフの方に会えるだけでうれしい位ですからね。」
異世界モノが大好きな翔にとって、ドワーフやエルフといった存在は異世界に来たという実感でもあり、興奮材料以外の何ものでもないのだ。
「おめぇ物好きだな、俺もガゼダも妻子持ちだぞ。」
「ええ、私も妻がいますので...ドワーフには同姓が恋愛対象の方が多いのでしょうか?」
ゴルゲンの勘違い発言から、ついドワーフの恋愛観が気になった翔は、いきなりそんなことを口にした。
ゴルゲンは顎に手を当ててうーんとうなる。
「俺らは自分の子に技術を伝えていく種族だから生涯ってのはねぇが、同僚の腕前に惚れてそのまま身を固めるまでの間恋仲にっちゅーのは珍しくねぇな。.....ってそんなこときいて楽しいか??」
律儀に翔の質問に返答したゴルゲンは、ふと我に返って不思議そうな顔をする。
それもそのはず、普段他種族に煙たがられるドワーフが自分の種族の恋愛事情など聴かれたためしがないのだ。
「非常に興味深いですね、ほかの種族と自分の種族の違いって言うのは聞いてて為になります。今の話だけでもドワーフの方々がいかに職人と恋愛対象して腕前を重視しているかが分かりましたしね。」
実際、他種族の常識を理解していない、冒険者パーティがトラブルをよく起こしているのも事実だ。
例えば猫獣人と犬獣人には発情期があり、性欲の歯止めが聞かなくなることがある。
それが旅の途中だった場合、パーティ内の相手にそういった行為を強引に要求することになるが、女性が獣人の場合、男性冒険者は受け入れることがほとんどだが、男性が獣人の場合、拒否した女性が強姦の罪で訴えることが多い。
その場合、種族としての本能とはいえ、獣人は罪に問われる。
また、受け入れたとしても相手に恋人がいた場合はトラブルのもとになる。
つまり他種族の知識を身に着けることこそ、この世界で円満な生活を送ることに直結するといっても過言ではないのだ。
「ほぉ、ちと頭はかてぇようだが話せる奴じゃねぇか。今度お前の武器を作ってやってもいいが...戦いは得意じゃねぇようだな。」
「あはは...恥ずかしながら魔物と戦ったことは一度もないですね...門番としての訓練はしているのですが...。」
翔は地球にいたころよりも筋肉質な体になっている。
腹筋は割れ、全体的にスマートになったその体に理沙が惚れなおしたくらいなのだが、この世界の人間に比べるとまだまだ貧弱の部類だ。
「ははぁ、お前は直接手を下せないタイプだな?...よし、ちょっと待ってろ。」
そう言ってゴルゲンも店の奥へと消えていき、カウンターの前に残された翔は一人その場にたたずんでいた。
(え、なんか勝手に話進んでない?)
ただ挨拶をしに来ただけだというのに、二人のドワーフが自分に対して何かを用意しようとしている。
話をしていただけなのにこの気に入られよう、今まで他種族からの扱いがよっぽど悪かったのか、ドワーフがちょろいのか、はたまたその両方なのか...翔は深く考えずに壁にかかっている武器を眺めることにした。
「ショウ!来んのがおせぇんだよ!ほれ、これ着てみろ!」
「これだこれだ、ちょっと持ってみろ!」
壁を眺めようとした瞬間、奥からいっぺんに二人が戻ってきた。
ガゼダの手には翔が仕事中にきている鎧とまったく同じデザインの鎧。
ゴルゲンの手にはマスケット銃によく似たスリムな銃。
まず鎧を受け取った翔はその軽さに驚く。
近くで見るとわかるが、鎧の表面が金属のようにつるつるしておらず、ざらざらしている。
門番の鎧と比べて格段に軽かったのは、革でできていたからだった。
カウンターに鎧を一式置き、ゴルゲンから銃を受け取った。
銃を受け取ると、腕に重みを感じた。
こちらはさすがに金属でできていたが、それにしては難なく持てる程度の軽さ。
よく見ると木で作られている箇所がちらほら目についた。
マスケット銃と違うのは、火薬を入れるような機構がなく、継ぎ目のない銃身と、後方部に空いた銃弾を込める為の穴だった。
「わ、わかりました。えーっと、どこで着替えれば?」
「はぁ?いいから脱げ脱げ!」
「ゴルゲン、ショウを抑えてろ、俺がひん剥いてやる。」
「ちょ、っちょ、やめ!アーーーッ!」
自分の作成した武具を手にしたドワーフたち相手に、翔はなすすべなく服を脱がされていく。
あいにく、この日は犬の刺?が施された脱ぎやすいサマーニットを着ていたため、驚くほどスムーズに素足かつパンツ一枚にされた。
本来は肌着や薄手のズボンを履いてから鎧を着るのだが...一刻も早く鎧を着せたいドワーフに細かいことを気にする余裕などなかった。
「おら、足!手!脚!胴!」
「うわわわ」
ガゼダに言われるがまま、次々に鎧が装着されていく。
「ほい、これ持て!」
「おわっ」
ゴルゲンに銃を手渡され、革のアームカバー越しに受け取る翔。
アームカバー越しだというのにまるで何もつけていないような繊細な手の感覚に翔は驚いた。
「ちょっと足踏みしてみろ!」
「は、はいっ!」
普段から着ている門番の鎧は軽い金属で作られた全身鎧だ。
仕事を始めた最初のころは、鎧の内側のいたるところが皮膚にあたり、皮が擦り?けていた。
しかしこの革の鎧はまったく違う。
地肌に直接装着しているというのにこすれる気配がない。
それどころか、ウェットスーツを着た時のようなピッタリフィット感すらも感じる。
「凄い....。」
「だろう!しかも防御力は鉄なんか目じゃねぇぜ!」
「そりゃあSランクの素材を使ってるんだからなぁ、防御力なら鉄どころかミスリルだって上回るだろ。」
翔はその言葉を聞いて固まる。
(Sランクの素材って、一般家庭が手を出せない程高くなかったっけ.....?え、これって買い取るんだよね?やばくない?)
翔の稼ぎは平均以上ではあるが、Sランクの素材に手を出せるのはもっと富裕層のみ。
もしくは自分で手に入れられるようなAランク冒険者のPTぐらいだろう。
流れで着ることになったが、この防具は絶対に手を出せないほど高い...それなのにガセダはおそらく翔に合わせて作っている。
「あ、あのー...。」
「よし翔!次はその銃だ!ちょっとマナを込めて引き金を引いてみろ!」
ゴルゲンが強引に翔の腕を取って構えさせた。
しかし翔はマナの操作、魔法が使えない。
「えっと、俺魔法が使えないんです。マナはありますが、操作のほうが...。」
「あぁん?んなこたぁ見りゃわかる。この銃は魔道具でなぁ、引き金を引くと使用者から強制的に一定のマナを吸い上げて風属性魔法に変換してくれんだ。弾を込めなきゃ風しか出ない。いいからやってみろ!」
翔はゴルゲンの言葉に半信半疑になりながらも、店の扉に向けて銃を構えて引き金を引いた。
すると銃身がヒュッと音を立てる。
次の瞬間扉を中心に店内に風が吹き荒れた。
「ほらな?」
「うぉぉぉ!マジだ!すげぇ!!」
魔法が使えないと言われていた自分でも、魔道具を使えば魔法が発動できることがわかり、仕事モードから徐々にプライベートモードに切り替わりかかる翔。
その姿をみてガゼダが思わず笑いだした。
「ぶははは!ショウ、それがお前の素か!」
「あっ...。」
指摘されて初めてそのことに気が付いた翔は、スイッチが意識せずに切り替わるという本人の中で前代未聞の事態に一瞬混乱した。
翔の脳内にある仕事とプライベートの切り替えスイッチ。
それは他人が思う以上にデリケートな問題であるのだが、しゃべり方や態度が雑な方が大雑把なドワーフたちには接しやすかった。
「そのほうがこっちも楽だ、俺らドワーフにかしこまった態度なんていらねぇよ!」
「なんだ、おめー堅っ苦しいやつかと思ったら普通に話せるじゃねぇか。」
ガゼダは丁寧な態度を好むと思っていたのは杞憂だったようだ。
翔は目をつぶってガタついていた脳内スイッチを切り替えた。
「わかったよ、これでいい?」
シャキッとしていた表情はだらんとけだるそうな表情に代わり、さわやかな笑顔はへらへらとした笑顔へと変わる。
それを見たガゼダはニカッと笑って翔の背中をたたいた。
「気の抜けた顔してんだなぁ!!ぶははは!」
「確かに、その顔で門番の仕事は勤まりそうにないな。」
ゴルゲンも納得したように腕を組んで頷く。
なんだか嫌な納得され方だったが、翔は素の自分を受け入れてくれた二人にホッと安心のため息をついた。
「よし!サイズもあってるし、調整の必要もないな!....じゃあ金額だが....ゴルゲン、その銃幾らだ?」
翔がビクリと肩を震わす。
着ればその良さがわかるほどのオーダーメイド。
しかもとても高い素材を使用している。
銃も馬鹿みたいに高い魔道具だ。
(もしかしたら合計で新居よりも高いんじゃね....?)
「そうだな...相場は500万ゴールドってとこだが...売れ残ってたモンだ、半額の250の端数取って200万ってとこだな。」
(給料4か月分!?)
「200か、俺のほうは鎧一式だからなぁ....張り切ってヘルキアスの皮を使っちまったし...軽く1000万は超えるが、銃と合わせて1000万でいいぜ。」
(い、いっせんまん...........。)
勝手に作られて勝手に払うことになったこの流れに絶対乗っちゃいけない、と翔は自分に言い聞かせた。
分割払いはいけないか、理沙に借りることはできないか、とも思ったが、そもそもこの防具の優先順位は低い。
翔は冒険者になろうとしちないからだ。
「え、えっと、言いにくいんだけど...そんな大金持ってなくて....。」
「なんだと?」
翔の言葉を聞いたゴルゲンは眉をひそめる。
ゴルゲンの迫力のある顔から出る怒りの感情に、翔はびくびくと怯えた。
(ひぃっ、俺もしや奴隷落ちにされる!?)
「....おいガゼダ。おめーショウに予算聞いたんだろうな?」
しかしゴルゲンの怒りはガゼダに向いたものだったようだ。
「........悪い!聞いてねぇや!!!ぶははははは!!!」
「ぶははじゃねぇ!!!」
「いっでぇ!!!!」
ゴルゲンの鉄拳がガゼダの頭頂部にめり込む。
ボゴン!!という聞いたことのない鈍い音を聞いた翔は脳内でガゼダに合掌した。
「予算聞かずにもの作るやつがあるか!!しかもたけぇ素材使いやがって!」
「いてぇ~....作るなら最高のもんを作るのはドワーフなら当然だろうが!」
そんなゴルゲンとガゼダの会話を聞きながら、翔は困惑していた。
(作ってもらったのに払えませんってのは申し訳ないけど...俺が出せるのはせいぜい40万ゴールド...。正直この防具はめっちゃ欲しいけど値段が値段だもんなぁ。)
雨宮家はそれぞれ仕事を持っているため、自分の稼いだ金は自分で管理することになっている。
今やローンの支払いもなくなり、光熱費やガス代も女神の謎パワーによって払わなくても問題がない。
そんな翔が個人的に貯金しているのは現時点で40万ゴールド、1000万という高額を払えるわけなどなかった。
「ったく....。ショウ、いくらまでならだせんだ?」
「えっと....40万位...?」
翔が答えるとゴルゲンははぁとため息をついた。
なにも翔が悪いわけではない、しかしゴルゲンは素材をガゼダに提供していた。
つまりめったに依頼を受けないガゼダの稼ぎを考えるとゴルゲンにとって大損となるのだ。
「さすがにきちぃな...。なんか珍しいモン持ってたらそれと交換でもいいんだが....1000万相当となると並大抵のモンじゃ無理だわな...。」
翔は考えた、異世界人である自分ならドワーフが気に入るものを提供できるんじゃないかと。
(ドワーフといえば武器、防具、鉱石、酒.....酒!?)
そこまで考えて思いつく。翔の能力は液体を別の液体に変えることができる。
この能力ならただの水を日本にいた時に飲んだお酒に変えることができるのではないかと。
「そうだ、二人はお酒好き?」
翔の突拍子もない発言に面を食らったゴルゲンとガゼダは顔を見合わせた。
「酒...?嫌いなドワーフなんぞこの世に存在しねぇな。」
「なんだショウ、珍しい酒でも持ってんのか!?俺らは特に酒に厳しいぞ?満足させられんのか??」
予想以上の食いつきに翔はニヤリと笑った。
すでに勝利を確信しているかのように。