夢のマイホーム
「あ~、ついについについに!夢にまで見たマイホームに住めるぞ~~~~!!」
親から新居祝いに譲ってもらった軽自動車を運転しながら、幸せそうに新居へ向かうこの男性の名前は雨宮翔
400万を少し超える程度の年収でコツコツとお金を貯め、27歳にして新居の購入を果たした何の変哲もないサラリーマンである。
「翔ちゃんが頑張ったからだよ~。楽しみだねぇ~!」
そんな翔の横に座りながら、同じく幸せそうに笑みを浮かべる、ゆるい雰囲気の女性の名前は雨宮理沙
マイホームのために日々残業続きで働く翔の支えになるよう、パートと家事を両立し陰から支える良き妻である。
「すぅ....ぴぃ....わふ...。」
2人がマイホームへの期待を胸に膨らませている中、車の後部座席の大半を占めるようにして爆睡している
大きな白い犬の名前は雨宮わたこ(あまみや わたこ)
グレートピレニーズという超大型犬である彼女は当然、これから新居に行くことを理解しておらず、
夢の中で大草原を走り回っていた。
「あは、わたちゃん寝言言ってる~」
「わたもマイホームを気に入ってくれるといいなぁ」
「わふ....わふ...。」ひょこひょこ
翔が35年ローンで購入したマイホームは、都心から離れてはいるもののその分土地代を抑えることができたため、
4LDK庭付きで2500万と、都心では考えられない程に安上がりだった。
「あぁ、もう引っ越しの人来てる....すみませーん!今開けます!!」
「...ふがっ...!...?」きょろきょろ
「わたちゃん起きたの~?新しいお家ついたよぉ~。」
新居についた翔は既に到着していた引っ越し業者に頭を下げながら、急いで車を止めて外に出る。
その声に反応してわたこは目を覚まし、理沙に撫でられながらリードを装着される。
まだ状況を理解できず、あくびをくあああっとした後、周囲をきょろきょろと確認していた。
こうして雨宮一家は念願のマイホームを手に入れた。
....しかし、この後彼らは大きな事故に巻き込まれることになる。
「ふぅ~。引っ越しも終わった。それに電気も水道もネット回線もつながったし...家の中を探検するぞ~!!」
「わふわふ!」ぶんぶんぶん
「おー!!」
それはいくつもの偶然が重なりに重なって発生した、とてつもなくアンラッキーな事故。
「庭も広いし、ちゃあんとわたのために柵も作ってもらったぞ~!!」
「わん!わんわんわん!!!」
「あはは~早速走りに行っちゃったぁ~」
場所、時間、人、そしてその発言
(お腹すいたなぁ)
「なぁそろそろ」
(わふっ...!わふ!!(たのしい!たのしい!!))
(なんかあめ振りそうだなぁ~)
「わたちゃーん!」
その全てを満たしてしまった、天文学的な奇跡
「おひるにしよう.....ん?」
「もどってきなさぁい.....えぇ?」
「わん!!!.....わふ?」
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~同時刻、ある世界のある場所~
「やっと、やっと見つけたわ!!異世界から物体を召喚する方法!!!流石私のご先祖様ね!」
ある場所のある人物は、薄暗い部屋で古い書物を手にしながらそう叫んだ
「この本のどこかに....あった!!...えーっと...何々?『マナに愛されし土地にて、天上より陽光が人と獣を照らす時、古より伝わりし呪文を交互に唱えよ』....はぁ?呪文は....これか。」
その人物が書物をパラパラとめくっていくと、その呪文らしき文字が記されたページを見つける。
「『Omo War Heed N Loo,Neet E,Yona,Usar...。』、それぞれの単語の意味はわかるけど...えぇ!?コレを呼び元の世界でやらなきゃいけないの!?...ばっかじゃないの!?こんなの不可能に決まってるじゃない!!!....あ~あ。やってらんないわ。」
期待していた分ショックが大きいのか、その人物は書物を乱暴に壁に投げつけた。
書物が背表紙を下にして地面に落ちる。
偶然開かれていたページにはこう記されていた。
『尚、召喚魔法は神より禁忌とされている。でも禁忌って言われると作りたくなるのが賢者の性じゃん?だから仲間の賢者と一緒にそれぞれ適当な条件出し合って絶対に成立しない魔法を作ってみた。でも念には念を入れて、異世界でこの条件を満たした瞬間に、このページが開かれているってのも入れておこう。 「禁忌の召喚魔法」著:世紀の大魔術師ファライ・ドラ・フェウーレ』
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『マナに愛されし土地にて』
その土地は偶然にも、その地域を守る土地神に愛されていた。
「ちょっちょちょちょなにこの光!!!理沙!わた!!」
『天上より陽光が』
その時間は偶然にも、太陽が真上に来ていた。
「なにこれぇ~!!!わたちゃぁああん!しょうちゃあああん!」
『人と獣を照らす時』
そこには偶然にも人間と犬がいた。
「キューン、キューン....。」
『古より伝わりし呪文を唱えよ』
そして偶然にもそれぞれの言葉が呪文となった。
「早く!!家の中に!!!」
「わたちゃんもいこぉ~!!!」
「きゃんきゃん!!」
雨宮家のマイホームを綺麗に囲うように、空から光が降り注ぎ、大地が揺れる。
「ヤバい!!!はやく机の下に!!」
「わたちゃんおっきくてぎりぎりだよ~!」
「くぅーんくぅーん....。」
そして雨宮一家は召喚されてしまった。
その土地ごと。
第2作目始めました!
10話までは毎日更新しますが、それ以降の更新ペースは低めになると思います。
これからよろしくお願いいたします!
また、1作目の作品「うさみみ異世界創世記~ゲーム世界を再現した世界をTS兎娘が行く~」もよろしくお願いします!
https://ncode.syosetu.com/n2876gp/