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プロローグ
宝石商の権藤氏が殺されたのは、朝からシトシトと雨が降り続く、六月の日曜日だった。
夕食の時刻になっても食堂ホールへ来ないので、心配になった家族が彼の書斎まで様子を見に行くと、部屋は血の海。誰かと争った形跡があり、卓上時計のガラスも割れて散乱している中、喉を掻き切られた権藤氏が、クワッと目を見開いて死んでいたという。
翌日の午後、食事時でもないのに食堂ホールに集められたのは、屋敷に住む家族の者たち。家族といっても妻や子供ではなく、独り身の権藤氏と一緒に暮らしていたのは、三人の姪だった。
三人を集めたのは警察であり、彼女たちは、また昨夜のように色々と質問されるのかと思ったが……。