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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第二章 ミクロな世界の生き方

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63 嗜虐

初っ端から呻き声の2022

ァア゛アあア゛ァアア゛あア゛アあアア゛ァア゛アア゛ァ゛アアアァ゛アア゛アア゛ァァ

ア゛アあ゛ア゛ア゛アァァ゛アあアア゛あアアア゛アアア゛アアアァああ゛ア゛アァ!!


怒涛の勢い、まるでとどまることを知らない力の奔流に飲まれたウイルスの思考は、渦を巻く潮に吸い込まれ砕けていく帆船のように砕け散り、混ざり合い、粉砕しあっていった。

しかし、心の片隅に残ったほんのわずかな理性は、この自身のとても大切な何かを破壊し尽くし乍らあふれ出るエネルギーに一抹の不安を覚えていた。


しかし、次の瞬間、どこか別に自分とは違う視点で物事を考えていたような思考が心の中で疑問を提唱した。


―何故、自分はこんなにも小さく、か弱き生物に殺されかけていた?

―何故、か弱き生物は私に攻撃をし、傷をつけた?誰の許可を取った?


そのあまりにも強烈で傲慢な疑問に、ウイルスの残り少なくなった知性は消滅した。


そして、その今まで考えたことのなかった疑問に、ウイルス、いや、化け物は少し考えて、その仮初の狂った思考回路で一人結論を出した。


―断罪せよ。

―罪を償うため、命を捧げさせよ。


生まれて初めての激情にウイルスは、その自身の出した結論から、目の前の未だ呑気に傍観者を通す細菌を嘲笑した。



あの生き物を嬲り殺す方法は分かっていた。

まず手始めに、横にいる図体だけは大きい化け物の威圧に委縮してしまった弱き生物を殺した。

増幅した化け物の能力は、そのようなことをするのも可能になっていた。


その変化のありように、自身の勝利を確信し、あれから常に傍観者を通していたあの傲慢なバクテリアも焦ったのか、即刻辺りに巨大な物体を展開して化け物を殺そうとしてきたが、時すでに遅しであった。


その時には既に化け物は、正真正銘の怪物としてこの世界に君臨していたのだから。

これで化け物の勝利は確定した。


―はずだった。

なのになんだ。

あの細菌は。

そこのバクテリアは、バクテリア本来の最大の武器である分体と洗脳能力を完全に封じられていながら、卓越した速度と状況判断能力、魔法能力で化け物の二段階進化の成功した唯一の光魔法をすべて避け切って見せた。


それは、低スペック頭脳しか持ちえないこの世界の通常個体ではありえないようなことであった。


何故だ。

何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!


化け物は焦っていた。

その狂った頭で、必死に考えていた。

何故なら、化け物はすでに自分の体がタイムリミットに迫っていることを自覚していたからである。

化け物は凶化を発動したときから気付いていたが、溢れ出る力の奔流、いや、暴走は着実に、体内に侵入してきた細菌のように体を蝕み命もを削っていた。


…このままバクテリアに生き残り続けられると危険だ。

このままでは自分の寿命が先に尽きることになるかもしれない。

化け物は一瞬身がまえたものの、すぐにその考えは杞憂に終わることとなった。


何故なら次の瞬間、化け物の願いが通じたのか、バクテリアが分体の一体に近づき、巨大な球形の茶色い物体を創り出し、その中に閉じこもったからである。

如何やら、化け物と同じく、あちらも相当消耗していたらしい。

化け物はそう嗤ったが、同時に一瞬でも自身が負けてしまうことを悟らされたことに同時に憤慨していた。

化け物の傲慢な心は、自信が貶められることを断じて嫌っていたからだ。

あのバクテリアには塵も残せぬ死骸になってもらう。


自身が持つスキルは、先ほどから放っていたちゃちな攻撃だけではないということを、化け物は自覚していた。

そうして、化け物は自身の持つ最強の魔法スキルを発動した。


{レッサーグロウウイルスからの要請を受け取りました。希少スキル「聖光魔法 lv.l 7」を発動しました。}


途端、化け物の頭上には化け物の数万倍ほどの大きさがある超高密度高温度の光の玉が作り出されていった。


キィィィィィィィィィィィィィィイイイイイイン……。


そして、完成した聖光魔法 lv.l 7、聖隷球は真っ直ぐにバクテリアのいた土塊に向かっていき、高高圧の衝撃波を発生させながら爆発した。


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