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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第二章 ミクロな世界の生き方

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Code.1 (3)

最近ちょこちょこ間開けててすみません

夢を見た。

何か温かい水のような場所に揺蕩う、

そんな夢を。


「オギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


目が覚めた時、最初に口を突いて出てきた言葉は、絶叫に絶叫を重ねたような叫び声だった。


それはあまりにもすさまじく、一瞬自分が出していることにも気づかないようなものだった。


苦しい、苦しい、苦しい、苦しい。


それはたぶん、ずっと水の中に閉じ込められて、息もさせてもらえなかったような、そんな息苦しさに堪え切れなかったからゆえのものなのだと思う。


しかし、そんな苦しみも、しばらく叫び続けていると、だんだんと落ち着いてきた。


はあ、なんてこった。

会社の帰りに何か変なもの拾って倒れて気付いたら水死寸前の状況になるとか、本当にやめてほしい。


そういえば、意識を失う寸前にみた人が爆散していくイメージ、あれはいったい何だったんだ?


あれは夢にしては現実感が強ぎたし、現実にしては現実味がなさ過ぎた。

最近はそんなホラーゲームもスプラッター映画も見た記憶がない。

それに俺は意識もせずにそんな想像をするほどサイコパスでもない。

だとするとあれは本当に何だったんだろうか。


…。


あー。

やめだやめ。

きっと仕事のし過ぎで疲れてたんだよな。

ったく。

何時か絶対にあの部長の前に辞表叩きつけてやる。

そんなことを頭の中でぐちりながら体を起こし、何気なく手を見てみると…。


は?

手が…。

小さい。

は?は?は?


馬鹿な。


パニックになりそうになる頭を無理矢理に押さえつけて、必死に頭を回転させる。


んだ?

どういうことだ?

何でこんなに手が小さい?

何でこんなに…赤ん坊みたいな手をしている?

考えろ…!

考えて考えて考えろ!

落ち着け!

落ち着け!俺!


頭を割るような動揺を必死に押さえつけるために頭をフル回転させたことが、結果的によりいっそう俺のパニックを増長させることとなった。


{熟練度が一定に達しました。スキル「思考加速 lv.l 1」を獲得しました。}


!?


何だ!?何だ!?何だ!?何だ!?何だ!?何だ!?何だ!?何だ!?何だ!?何だ!?

何だ!?何だ!?何だ!?!?!?!?!?!?!?


突然脳内に響くように聞こえてきた合成音声のような声に、俺の頭は、思考とパニックの渦に決壊した。


濁流のように押し寄せる疑問に、俺は精神力を振り絞り、必死に抗ったが、かえって不安を助長させることとなった。


しかし、すぐにその苦しみは、突然の浮遊感とともにかき消された。


暖かい光。

そのゆったりとした光は、俺の荒れにあれていた心にしみわたり、荒波を凪のように沈めてくれた。

驚いてこれまで閉じていた眼を見開くと、そこには、底抜けのように明るい笑顔を顔に張り付けた少女が、俺を抱きかかえながら立っている様子があった。


…。

妙に冷静になった頭をもう一度起動させ、辺りを見回す。


年季の入った木製のベッド。

その隣に置かれた木製の円形の台の上にはいくつかの薬らしきものとお湯の入った桶、タオルらしき布切れが積まれていた。

白色のシーツが四角窓から差し込む日光に照らされ、よく映えていた。


ログハウスをイメージとするような非近代的な間取り。

そこは、何処かの家の一室のようだった。


ああ。

これは、あれだ。


異世界転生という奴だ。


姉らしき幼女に抱き抱えられながら、その腕の中で俺は、赤子らしからぬ表情でそれを悟っていた。


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