Code.1 (38)
怒涛の12/14連投
{「炎魔法Lv.10」を発動しました。}
振り抜いたショートソードは、大した抵抗も無く植物型魔物の体を切り裂き、HPを全損させた。
「こっちは終了だー!そっちは!?」
「こっちも処理完了しました!」
「了解!それじゃ昼組と交代しよう。飯だ飯。」
遠くで帝国騎士の甲冑が手招きをする。
ショートソードの炎エンチャントを切り、そちらに向かった。
「お疲れ様でした。」
「あぁ、お疲れ様。外部依頼はこれが何回目なんだっけ。」
俺たちと交代で防御の任に就く人達が配置に向かっていく。
俺たちは逆方向。メインキャンプの方に向かって歩いていく。
俺を呼んだ彼はフルフェイスの防具を取り、暑さに顔を顰めながら俺に聞いてきた。
「グループ単位の依頼は8回目くらいですかね。単独はこれが初めてです。」
「ほう。それにしちゃ良い動きだ。成績も良かったろ。」
甲冑で群れた赤髪を掻きながら若干の驚きを表情に宿した彼はデュランさん。
俺の指導役兼お目付け役として朝からお世話になっている帝国騎士の1人だ。
「まぁ、それなりに。一番と言うわけではなかったのですが。」
俺の回答にデュランさんは軽く笑った。
「何処にも天才的な奴ってのはいる。見た感じお前のは実直な剣って感じだ。努力タイプだろ。そっちのが役に立つってのは往々にしてある。」
「あはは…でも、一番はちゃんと目指しますよ。」
座学に関しては、昔から俺がトップだ。
だけど、戦闘技能に関しては俺はまだ数度しかレミウルゴスに勝てていない。
基礎ステータスの差はある。
実家は基礎を上げてからレベルアップの向上倍率を上げる教育方針だったために俺のレベルは同年代と比べて若干低い。
魔王城やその後の戦闘で上がったレベルを加味しても、実は俺はまだレミウルゴスにレベルが追い付いていない。
経験値の入りが違うのか、基礎ステータスの差をスキルでゴリ押ししているのが今の俺だった。
俺の回答に若干目を丸くしたデュランさんは、さらに笑った。
「良い回答だ。伸びるぜお前。」
その言葉を噛み締める。
今の世界情勢的に、強さはそのまま必要性に繋がる。
せっかくの第二の人生、行けるとこまで成り上がってやりたい。
…。
昼飯は青空の下で食べるにはだいぶ豪勢な物だった。
グループで依頼をやる時は普通の保存食に乾燥具材を放り込んだスープなどなのだが、今回のはまず食器から違う。
まず、銀器だ。
戦場のど真ん中で。
渡されたその皿の上に配膳されるようとしているのは、保存魔法のかかった箱から取り出される、帝都産の牛肉。
干されてもいない明らかにジューシーなそれの上に香草をまぶして炙られたものが渡される。
その上には濃い葡萄酒を煮詰めたソースがかけられ、脇には塩で茹で上げた芋と、火で軽く炙ったパンが添えられる。
鍋の中のシチューでは、濃厚なホワイトソースの中で根菜の甘みと、燻した肉の香りが混じり合い、最高に食欲を掻き立てている。
思わず唾を飲み込んだ。
前世と比較してもかなりの食事だ。
これが帝国直下の部隊の兵站というわけか。
デュランさんの後ろについていき、キャンプ内の適当な席につく。
「どうだ。やばいだろこれ。」
皿の中の料理に釘付けになっている俺に、向かいのデュランさんがニヤけながら言う。
深く頷く他ない。
「今回は特に帝都に近い場所での作戦だからな。大盤振る舞いというわけだ。…ほんじゃ食べるか。」
「…はいっ。」
思わず手を合わせて食べる。
肉にかぶり付いた。
…!
柔らかかった。
香草の香りが広がり、脂が舌に乗る。熱が喉を滑り落ちていくたびに、体の奥から力が満ちるような錯覚を覚える。
夢中でそれを食べ進めてしまう。
実家や寮の飯もかなり美味しかった。
だが、正直なところ前世の化学調味料によって構成された味には敵わないような部分も多々あった。
だが、これは違う。
全てのバランスがかなり整っている。
生み出される調和が前世で肥やされた味蕾を貫通する。
気付けば昼飯は空になっていた。
幸福感に満ちる。
何も考えず、手を合わせてしまっていた。
「うまかったか。」
黙々と食べ続けていた俺を満足げに眺めていたデュランさんが言う。
再び深く頷いた。
「俺もこのレベルの飯は久しぶりだ。お前、ラッキーだったな。」
「…いや、ほんと、最高でした。」
うまく言葉を繋げられない俺の感想に、デュランさんはまた笑った。




