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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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支部長の場合 ③

怒涛の8/14連投


「死んだよそいつは。」


エリゼが青年の頭を軽く叩いた。


「きゅうっ!?」


妙な声をあげてうずくまる青年にエリゼが言う。


「ほら、さっさとソレ持って帰った帰った。魔王軍がいつ来るとも知れないんだ。次はアンタの親がここに来ることになるよ。」


「…っ…!」


エリゼの言葉に青年は唇を噛み何かを言いたげだったが、あとはただ物言わず出口を差し続けるその指を見て、青年は通りに逃げていった。


「通報はするなよ。」


駆けていく青年を見送りつつ、再度フードを被ったババアが言う。


「この程度の痴話喧嘩なぞ日常茶飯事だ。コレで一々憲兵を呼んでたらアイゼンヴァルドは今頃牢屋で埋まってるだろうな。」


豪快に笑い飛ばすアークに、ババアも笑って返した。


「ハッ!アンタの指導が足りてないんじゃないかい。」


「冒険者は自由な家業だ。詐欺と殺し以外はその管轄なのでな。」


席に戻り、ババアが毛布のようなものをミラに被せる。


「とは言え、酔いが覚めちまった。軽すぎる酒も良くないね。状態異常耐性は二日酔いの時だけで良い。」


残った酒を呷りつつ、アークは声を潜めて言った。


「先刻通達があった。帝国の声明発表は明日昼だ。それまでに身の振り方を考えておいた方がいい。」


片腕に潰れるミラを担いだババアは、盛大に鼻を鳴らした。


「どうあろうとアタシはアタシだね。まぁ、好きにやらせてもらうさ。どうにしろ、すぐそんなもんに注目する暇なんてなくなる。」


「ハッ。好きにしろ。」


アークは酒場を出ていく2人の背中を見送り、深くため息を吐いた。



…。



{人類の名において、抗うことを宣言する。}


青色のボードが目の前に現れ、中で1人の男が言葉を発した。


帝王ではない。

アークは、記憶の中のその顔とそれを結びつけた。


司祭か。

支部長会議にて、一度だけ出席しているのを見たことがある。


あれは10年ほど前だった気がするが、今目の前にあるその顔はかつてのそれと寸分の狂いも無かった。


{アドヴァンダル帝国および王国連合は、魔王軍の宣戦布告を確認した。その内容は明確な敵意をもって、あらゆる生命の否定を宣言するものであり、この瞬間より、我々は人類の存続と尊厳をかけた防衛戦に突入する…}


手に持っていた資料と判子を机に放り、窓の外を見る。


通りでは皆が手を止め足を止め、目の前のボードに釘付けになっている。


{…この戦いは単なる領土の争いではない。

それは、生存の権利を賭けた最後の戦いである…}


戦争だ。


司祭の言葉で改めて自覚する。


人類滅亡、世界存亡を賭けた戦いであると。


心がざわつく。


言い知れない焦燥感が腹の底から湧き立つのを感じた。


{…敵は神をも名乗らず、理をも語らない。ならば我らは、人であることをもって抗う。

誰もがこの戦に巻き込まれる。ならば、誰もがこの戦の証人となれ。

…我々は、滅びを受け入れない。}


司祭がそう言い切ると、ボードが消える。


後に残るのは、未だ耳の中で反響する司祭の声のみだった。


一瞬の沈黙、そして、怒号のような声が上がった。


通りからだ。


商人が、職人が、子供が、冒険者が皆一様に天に腕を掲げ叫ぶ。


それを見、アークは倒れ込むように椅子に座った。


生存戦争だ。


叫び響く人類讃歌の中、アークは込み上げるそれがただ身を焼くのを感じていた。


山:以下全文↓


{人類の名において、抗うことを宣言する。

アドヴァンダル帝国および王国連合は、魔王軍の宣戦布告を確認した。

その内容は明確な敵意をもって、あらゆる生命の否定を宣言するものであり、この瞬間より、我々は人類の存続と尊厳をかけた防衛戦に突入する。


我ら人類は、創世より幾多の罪を積み重ねてきたかもしれない。

だが、それは贖うために歩んできた罪であり、滅ぼされる理由にはならない。

この星を築き、命を繋いできた意志は、いかなる理屈にも屈しない。


この戦いは単なる領土の争いではない。

それは、生存の権利を賭けた最後の戦いである。


帝国は全軍に動員を命じる。

王国連合は全ての同盟に呼びかける。

人類の盾として、矛として、我らは立ち上がる。


敵は神をも名乗らず、理をも語らない。ならば我らは、人であることをもって抗う。

誰もがこの戦に巻き込まれる。ならば、誰もがこの戦の証人となれ。我々は、滅びを受け入れない。}


ア:よく喋りますね。


山:必死なんだよ互いに。

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