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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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老兵の場合 ⑤

怒涛の5/14連投

戦闘はなおも続く。


掴み掛かる猿型の魔物の腕を躱し、懐に入り込む。


下手に構えたナイフを抉るように腹にぶち込み、魔法を発動させた。


{「炎魔法Lv.2」を発動しました。}


赤熱するナイフ。


内臓を焼きながら更に体重をかけ、下に切り裂く。


破断される腱の感触。


ナイフを引き抜き蹴り飛ばした。


股関節を切り裂かれ、足腰が立たなくなった猿が横転する。


体を捻り腕だけでこちらに這って来ようとするそいつの頭に切先を向けた。


{「炎魔法Lv.4」を発動しました。}


猿の頭に魔法陣が張り付く。


時限式だ。


ここで左右から別の魔物がアタシに突進してきやがった。


衝撃を受け流しつつ、後ろに跳躍して退避する。


直線上に並ぶ魔物共とアタシ。


再度アタシに突進する魔物二体。


脳死で突っ込んでくる獣共は足元のそれに気付かなかった。


{「火魔法Lv.2」を発動しました。}

{「火魔法Lv.2」を発動しました。}


そいつらの足元で小爆発する地雷型の魔法陣。


最下級の魔法は奴らに大したダメージを与えられない。


だが、メインはそっちじゃない。


小爆発によって崩れる地面。


先の戦闘で空いた深さ1mほどの落とし穴。


上に薄い床だけを張っていたそれに落ちる二匹。


そして、その二体に紐で括り付けられた猿もその2本の腕だけでは抵抗できず一緒に引きずり落ちていく。


穴の下でもがく三体。


ここで、三十秒前に仕掛けた魔法が発動した。


猿の頭に0距離で出現する炎の槍。


即座に猿の頭を貫通したそれは、頭に仕掛けられた自爆スイッチを起動する。


穴から火柱が立ち昇った。


魔物二匹程度の経験値ではレベルアップなどできない。


後には黒焦げの死体が三つ残った。


穴の下を確認するアタシの背後で特大の爆炎が3つ上がった。


爆風に煽られ穴に落ちそうになる。


「小娘!!あんたは周りに配慮ってもんができないのかい!!!」


過分に怒気の含まれたアタシの怒鳴り声にもどこ吹く風で地を滑るようにかける小娘が返す。


「あっっはははは!!!ごめんねーーー!!」


思わず舌打ちをする。


腰につけた魔法袋(マジックバック)から瓶を取り出し、周囲に投げつけまくる小娘。


その適当さとは裏腹に均等に飛んでいく瓶は、魔物の集団に一切の逃げ道を作らない。


過剰とも言える爆炎が巻き上がり、魔物共を焼き尽くしている。


そして、見る限りあの小娘は自身の退避範囲に瓶の効果範囲の見積もりを入れていない。


煙を噴出させる装置を投げたと思えばその煙の中に突っ込んで行き、それから出る前に瓶を割る。


煙に引火したそれは炎と雷を発生させながら大爆発を引き起こした。


爆風に吹っ飛ばされ宙を舞う小娘。


HPのバーが震えながら赤と緑の値を行き来していた。


先程した鑑定結果を呼び出す。


なるほど、凄まじい耐性の数だった。


属性耐性、状態異常耐性、物理耐性が全て高レベルで揃っている。


勇者スキルによって設定された役職は錬金術師(アルケミスト)のようだが、内実はほとんど守護騎士(ガーディアン)だった。


私の側に着地した小娘は、ポーションを取り出して浴びるように飲み始めた。


「あんたが錬金術師たる所以は其処くらいだね。」


「ひどーい!」


「余熱が暑苦しいよ。離れな。」


「ひどーーい!!」


金属がぶつかり合うような甲高い声を上げつつ、一応アタシから距離を空ける小娘。


拗ねたような顔をしている小娘の背中に問うた。


「そういやあんた、名前は?」


「名前?ミラだよ!」


こちらを振り向き、満面の笑みで言う小娘。


改めてその顔面を見る。


煤で汚れているが、随分と強烈な印象を覚える。


炎に揺れる、陽光をそのまま束ねたような明るい金色のツインテールが軽やかに揺れ、毛束が弾むように外にはねている。


光が放たれていると錯覚するほどの笑みは、挑むような自信と、悪戯を仕掛ける前の子どものような無邪気さを同時に宿していた。


橙から紅へグラデーションになっているその瞳は、その娘の気質を存分に反映しているようだった。


一度見たら二度と忘れない顔だ。


そしてその顔には見覚えがあった。


目の前の顔と記憶の中の顔が一致する。


その手配書の下の文字が浮かび上がってきた。


「ミラ…。あんた、ブリュンヒルドのミラだろ。」


「え、せいかーい!なんでわかったの??」


無邪気に聞いてくる小娘。


頭が痛くなる。


「あんた冒険者堕ち(レッド)じゃないかい。冒険者協会にあんたの手配書が張ってあるよ。」


顔を顰めて言うアタシの言に、小娘は口に手を当て、心底不思議そうに返した。


「なんでー?わたしなんか悪いことした???」


「放火と傷害だったか?まぁ、なんでそれがついたのか容易に想像が着くがね。」


「…たしかに?」


「イカれが。」


喜怒哀楽の喜と楽しかないような女だ。


アタシの問いにも何ら感情の起伏を感じない。


正しく気狂いだった。


冒険者協会所属としちゃ、こいつを協会に引き渡さなくちゃいけないんだろうが、そうも言ってられないだろう。


残弾を確認する。


スクロールの数は残り4枚。


無理をして撃てる弾数は7発ってとこか。


潮時だな。


小娘の蹂躙でだいぶ数を減らした魔物も、すぐに魔王城から溢れる分でいっぱいになるだろう。


元よりアタシの任務は生存者と非戦闘員の保護だ。


あいつらが逃げ切れるだけの時間は多分稼げたと思いたい。


小娘の処遇については、生きて帰ってから決めりゃいい。


「おい、そろそろ撤退するよ。奴ら無限湧きだ。」


鼻歌を歌いながら左右に揺れる小娘に言う。


「もう帰るのー?ポーションはまだあるよ??」


魔法袋から取り出した瓶を指で挟んで揺らす小娘。


「んな物騒なもんさっさと仕舞いな!消費期限はまだ先だろ!」


「はーい」


残念そうにポーションを仕舞い込み、アタシの隣につく小娘。


「撤退だ。」


アタシがきた森の方に針路を定めた、その時だった。


身体が芯から冷え切るような感覚がアタシを襲った。


空気に伴う激重。


押しつぶされるような極大のプレッシャーだった。


隣の小娘も、水をかけられた猫のように固まっている。


冷や汗が滝のように噴き出した。


背中がチリつく。


{状態異常:萎縮を確認しました。}

{状態異常:恐怖を確認しました。}


鑑定が悲鳴のような声を上げる。


御伽の中のステータスだ。


弾かれたように振り向く。


燃え盛る戦場の、歪む魔王城の扉前。


其処に立つ、一匹の龍。


オーバーSだ。


奴等の最初の行動はわかってる。


「耳を塞げ!!!目を瞑って体を縮めろ!!!!」


固まる身体を叱咤し、小娘に叫ぶ。


アタシに声に即座に反応した小娘は、ぎゅっと目を瞑って地面に丸まった。


{「土魔法Lv.1」を発動しました。}

{「地魔法Lv.10」を発動しました。}


アタシも同様に丸まり、即席の防護壁を背中に作る。


瞬時のMP消費に緩みそうになる意識を舌を噛んで繋ぎ止め、全身に力を込めた。


直後、咆哮。


声とすら認識ができない。


衝撃としての音が地を、空を伝播し辺りを固形化させる。


刃のような空気が辺りに密集し、武器庫の中で振られているかのような痛みが全身に走る。


永遠とも思える攻撃が終わった時、意識は辛うじてここに宿っているだけだった。


震える足を叱咤し、丸まった小娘を助け起こす。


破れかけた鼓膜から血が垂れた。


立ち上がった小娘も文字通り血涙を流している。


『走るよ!!』


ちゃんと言葉になったか定かじゃない。


だが、アタシの意図が伝わったのか大きく頷いた小娘と一緒に、その場から走って逃げ出した。


山:冒険者協会に所属していた冒険者が犯罪などを犯した場合、罪の確定時点で除名処分が下り、帝国の法に則って裁かれます。この時、出頭命令に従わなかった冒険者の捜査が、一般の犯罪者と同じように帝国の騎士団によって行われますが、高レベル冒険者ともなると騎士団の消費が激しくなる可能性が高まるため、捜査権限が冒険者協会にまで拡大されます。その場合、対象の冒険者の実名が顔写真と懸賞金と共に依頼掲示板に貼られます。この手配書は他のそれと区別するために赤い線で縁取られているため、一般冒険者は犯罪冒険者を冒険者堕ち(レッド)と呼称します。


ア:連日の解説お疲れ様です。


山:しなくていいとこまでしゃべった気がする。

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