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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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老兵の場合 ②

怒涛の2/14連投

耳元で風が唸る。

隠密に特化した服装は周囲の気流を巻き込んで囂々と叫びを上げる。


鮮明さを保っていた森も、もう目が追いつかない。


グラデーションのみとなった景色を、探知情報だけで突破する。


前方345メートル、探知に敵影が引っかかる。


森の出口付近だ。


体長5メートル弱、二足歩行、高活性。


この条件に合致する奴を、アタシはつい数分前にも見た。


ハイ・グリズリーか。


魔王城近郊とは言え、厄介な魔物は城に閉じ込められる性質上、この森の危険度はさして高くない。


攻略難度で言や、帝都に隣接する大森林のが高い。


だが、時たま魔王城の魔力に当てられた外れ値が寄ってくることもある。


一匹だけかと思ったが、番だったか。


迂回路を探してる場合じゃ無い。


すり抜けも…不可能だろう。


奴の狙いはアタシか。


片割れを殺した犯人を出口で待ち構えてやがる。


「これだから人を喰った魔物は駄目だね。」


ホルスターからそれを抜き取る。


ダガーよりも更に一回り小さな鉄の塊。

塗装はほとんど剥げ、黒ではなく鈍い鉛色をしている。

手のひらで握るたび、金属がきしむような音を立てた。

グリップの木目には、油と汗が染み込み、

もはや一枚の革のように馴染んでいる。


弱者の武器。


魔法杖(スタッフ)にも魔法書(グリモワール)にも適性のなかったアタシの魔道具(マジックアイテム)


{「土魔法Lv.2」を発動しました。}

{「土魔法Lv.10」を発動しました。}

{「火魔法Lv.2」を発動しました。}

{「炎魔法Lv.2」を発動しました。}


グリズリーとの距離が100メートルを切った。


顔合わせはとうに終わっている。


森を覆い尽くす程の巨影が、樹々の間を押し潰すようにせり上がる。


グリズリーが咆哮した。

音ではなく圧力。森の空気が一瞬にして重くなる。


照準など要らない。


距離は十分。


暇すら。


「祝言は、あの世であげな!」


トリガーを引き絞る。


撃鉄がスクロールを貫いた。


スクロールに閉じ込められた爆発が土の弾を押し出す。


ライフリングに沿ってバレルを突き進むそれは、道中に設置された地雷型魔法陣を突き破り、爆発的に加速する。


赤熱。


それは、不可視の魔矢(マジックアロー)


世界を切り裂き、僅か一点を虚空に還す。


脳天に風穴の空いたグリズリーが、立ち上がった姿勢のまま後方に倒れ込んだ。


重苦しい衝撃と共に土埃が舞い上がる。


知能を得ようと、知性のない獣は等しく弱い。


「不相応さね。アタシと同じで。」


仰臥するその横を、アタシは速度を落とさず駆け抜けた。


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