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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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老兵の場合 ①

怒涛の1/14連投


{……ザ…ザ…ザ}



討伐依頼の帰り際、唐突に鑑定が発動した。


ハイ・グリズリーの足を捨て置き、身を翻し木陰に潜む。


{「陰身Lv.10」を発動しました。}


身じろぎをせず、呼吸さえ浅く、木に染み込むようにもたれる。


大樹を背にし、顔を出さず周囲の気を探る。


風すらない。

生き物の気配一つしない世界の中で鑑定の雑音だけが響いている。


少なくとも、アタシの感知内に敵は居ないように思える。


一息つく。


とは言え、スキルは解除しない。


魔王城近郊だ。

探知を突破してくる怪生なぞ百と見てきた。


スタミナは減るが、過去60年初めての状況に気緩めるバカが何処にいる。


森は答えない。


だが、その問いの答えを目の前のステータスボードは持っているようだ。


腰のホルスターから丸めたスクロールを取り出す。


今回の依頼は大した敵じゃなかった。


依頼難度から夜鍋して作ったスクロールが無駄になっちまったと思ったが、どうやら虫の知らせは正しかったらしい。


ステータスボードのノイズが消え、唐突に闇を映し出す。


一瞬壊れたかと思ったが、よく見れば後ろに赤い蝋燭がチラチラと揺れている。


どうやらそれは何処ぞの空間を映し出しているようだった。


周囲の状況に気を配りつつ、それを見る。


瞬きの狭間だった。


空間が切り取られたかのように、ソレは空間の中に座っていた。


ちんちくりんの小娘。


支部長(じじい)の孫娘と同じ位の歳の女が能面のような顔でこちらをじっと見る。


覇気はない。

ない…が。


女は画面外から何やら棒のようなものを取り出すと、画面下に机があるのだろう、それを下に固定する。


伏目でそれを更にいじると、ステータスボードから骨を切るような雑音が発された。


女がそれを2度叩く。

同時に同様の雑音が流れる。


顔が上がった。

画面の中のそれと目が合った。



{私達魔王軍は、これより人類への侵攻を開始する。…諸君らはせいぜい抗うが良いさ。}



…思ったよりも若い。

子供(ガキ)の声だ。

15、6か。


ギルドの新人受付みたいな声で告げられたのは、魔王軍による宣戦布告だった。


「なんだってんだい」


愛機に手が伸びる。


{あなたた…お前らは、創世以降溜め込み続けた罪を精算する必要がある。理不尽かつ唐突な通告ではあるけど、これは不可避かつ絶対。}


緩やかに走り出す心臓とは無関係に、子娘が言葉を連ねる。


{暴力による解決は円満の見込みを断つのは知ってるけど、端からそんな意思はない。これを最後に、今後一切の通知も意思疎通も行われない。私達はお前らを必ず殺す。軍を敷こうと、家に閉じ籠ろうと、森を焼いて空を焼いて街を焼いて徹底的に滅ぼす。人族の寿命は今日尽きる。}


なるほど。魔王か。


はじめ、魔族のお偉いさんの娘かなんかが喋ってるのかと思ったが、違うらしい。


その体に宿る魂が小娘のそれじゃない。


悪魔が小娘の皮を被って喋っていると考えた方が分かりやすい。


口調も声色も乳臭いが、その裏に底知れない深淵がある。


威圧ではない。


得体の知れなさだ。根源的恐怖に近しい。


{我が力を見せるだとか、狭間の闇に脅えろとかそんなちゃちいことは言わない。恨みだとか、殺意だとかそういう次元の話でもない。私らは、人類(おまえら)を滅ぼすまで止まらない。戦って、戦って、戦って、戦って、せいぜい明日の自分を現世に繋ぎ止めるために自らを抱いて眠れ。

…これより魔王軍(わたしたち)は、人類への侵攻を開始する。}


その言葉を最後にウィンドウが掻き消える。


発言を整理する間もなく、地を揺るがすような轟音が全身を通り抜けた。


北西、魔王城の方向に、赤い発光が見えた。


同時に埋め尽くされつつある空。


帷のように見えるそれは、蠢く群体のようだった。


「敵襲か!」


{「身体超強化Lv.3」を発動しました。}


全身にエネルギーが行き渡る。

感覚が鋭敏になり、薄ぼけた世界に光が宿る。


魔王城に駆け出す。


{ババァ!聞こえるか!}


翔ける中、念話を受信する。


支部長の声だ。


敵襲だね?


アタシの返答に、首肯の気配と共にじじいの返答が返ってくる。


{魔王城前の冒険者協会が魔物の攻撃を受けた!お前が一番近い、非戦闘員と生存者の保護を頼む!}


魔王関連かい?


{帝国は声明を出してねぇ、だが、状況は火を見るより明らかだ。}


ため息を吐く。


念話を切断し、速度を上げる。


発言即実行というわけか。帝国の政治家よりよっぽど有能だ!



ア:三連休最終日なんですよ。


山:1日って後3000時間くらい欲しくない?

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