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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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Code.10 (31)


夜道が連なる。

暗がりの中に隠れる畦道。


街灯は少なく、その明かりも間隔が広く、ひとつ灯りを通り過ぎるとすぐに暗がりに沈む。


それでも淡いセピアの記憶はほろ苦い感傷と共に確かな道筋を示していた。


サラの足音だけが砂利混じりの道に乾いたリズムを刻んでいる。

昔と同じような気配を感じ、後ろを振り返る。


思っていたより早足になっていたのか、先刻出てきた家の灯りは遥かに小さくなっていた。


遠くで虫が鳴いている。けれど、それを懐かしいと感じるには、静けさが深すぎた。


自身に纏う闇を祓うように手を振るう。


{「時空魔法Lv.10」を発動しました。}


女神の声をツギハギにしたような人工音声が頭蓋骨を撫でる。


司祭によれば初期はもう少し滑らかであったと言うので、女神の創造したシステムにも限界が来ていると言うことであろうか。


揺れそうになる瞳を拭い、息を吸う。


頭の芯が冷えていくような感覚。


生温い草の匂いを吐き捨て、目の前に現れたワープゲートを潜った。



…。



しんと冷涼な空間が一面に広がる。


同様に暗闇はそこにあるが、適切に管理されたそれは既知の域を出ない。


極めて正確に秩序立ったそれはかえって不形容な不気味さを醸していた。


表皮に残った温かみが急速に失われていく。


爪の先まで一瞬で染め上げられたような感覚に陥る。


しかしてサラは止まらない。


壁と同じ色をしたドアに手をかけ、先にいる人間に口を開いた。


「グレイ・カートマンさん。お待たせいたしました。」



…。



「いえ、レミウルゴスはもう寝てしまいましたし、大した疲労もありませんのでね。」


談話室のソファの一つで眠りこけるレミウルゴスを親指で指し、自身は椅子に座るのは、グレイ・カートマン、数年前冒険者協会の最高レベルになった冒険者だった。


サラは人形のように眠るレミウルゴスを一瞥し、グレイに正対する椅子に腰をかけた。


「本日は御足労いただきありがとうございます。」


「いえ、新しい住所をお教えしていなかった私が悪いので。なにぶん宿暮らしでして。」


「家は持たないのですか?」


「各地を転々としますので。冒険者家業は定住に向かない。ギルドにでも入っていれば良かったのでしょうが。」


「必要であれば教会が斡旋いたします。」


「お気持ちは、有り難く。して、本日召集がかかった理由は?レミウルゴスを連れ帰るにあたり何か手続きでも?」


「いえ、それについてはありません。本日お呼びしたのには、グレイさんに請け負っていただきたい依頼が一つあるからでして。」


口の端に常に笑みを湛えていたグレイの口角が下がる。


背もたれから離れ、前屈みになったグレイは、机に肘をついて問うた。


「何か?」


「グレイさんには、教会と合同で帝都防衛の要になっていただきたく。先の魔王軍の侵攻であらかたの冒険者は出払っていまして。ぜひぞの力を帝都のために奮っていただきたく思います。」


グレイの試すような眼差し。

臆することなく伝えたサラの言葉にグレイは手を打って返した。


「勿論です。魔王の侵攻、人族としてこの力存分に振るうことを約束いたします。」


「ありがとうございます。」


見るものを魅了するような笑みを湛え伸ばしてきた手に、サラは固く握手を返した。


「…ああそれと。」


「はい?」


今一度席に座り直したサラが、空に手を伸ばす。


{「空間魔法Lv.10」の発動を確認しました。}


「?これは…。」


疑問符を浮かべるグレイの前に先ほどユーリーン家でも渡した小袋を出す。


「先の魔王城実習での事故に対する謝礼、そして報奨金です。」


「報奨金?」


「レミウルゴス君は魔王城から出現した魔物を何体も討伐しただけでなく、突如現れた火龍に対しても果敢に戦ってくれた。火龍は戦略的に見ても非常に危険極まりない存在でした。それの討伐補助への報奨金です。」


そう言いサラが差し出したそれを、グレイは中身を見ることなく差し戻した。


「そう言うことでしたら、まず私が手をつけるわけにはいかない。レミウルゴスの初めての給料ですからね。一度、こちらの口座に入れて頂いても?彼が目を覚ましたら、また同額渡しましょう。」


グレイの手の中に小切手程度の大きさのスクロールが現れる。


帝国が運営している銀行口座窓口のスクロールだった。


「…わかりました。」


「手間をかけさせてしまって申し訳ない。冒険者の流儀のようなものです。何どぞご容赦を。」


「いえ、構いません。」


サラは笑顔でそのスクロールを受け取った。

ア:実はもうお盆って終わっちゃうんですよ。


山:実家の心地よさには敵わないと言うことでここは一つ。


ア:一つで収まると本気で思ってるんですか?


山:まっことすみませんでした。

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