Code.1 (32)
超絶怒涛の6/10連投
{…我が力を見せるだとか、狭間の闇に脅えろとかそんなちゃちいことは言わない。恨みだとか、殺意だとかそういう次元の話でもない。私らは、人類を滅ぼすまで止まらない。戦って、戦って、戦って、戦って、せいぜい明日の自分を現世に繋ぎ止めるために自らを抱いて眠れ。
…これより魔王軍は、人類への侵攻を開始する。}
ウィンドウから放たれる魔王の言葉が耳の中で反響する。
状況が理解できない。
魔王はその気怠い表情からは想像もつかないような威圧感の伴った言葉を紡いでいる。
それも見知った顔が。
言葉の通り、魔王城から解き放たれたと思しき魔物が空を埋め尽くし、見渡す限りを焼き尽くしている。
冒険者協会の瓦礫の中から、火だるまになった人間がヨタヨタと逃げ出している。
その影の首を翼竜型の魔物が刈り取るのが見えた。
「そんなっ…!」
エイが絶句する。
駆けつけてきた冒険者パーティが、遠くのほうでオークと戦っている。
魔王城にやってくる冒険者は揃いも揃って高レベルだ。
冒険者パーティは巧みな連携でオークの攻撃を逸らし、即座に首を刈り取った。
と思ったらオークが即座に自爆し、後に残ったのは焼けこげた冒険者パーティと無傷のオークのみだった。
訳がわからない。
頭がメチャクチャだ。
「おい!ユーリーン!!」
レミウルゴスの声が唐突に耳を貫く。
ハッとして目を向くと、視界の端に眼前まで迫った翼竜の爪が見えた。
!!!!
「っ!!」
レミウルゴスがアレンを投げ捨てて俺の腕を掴む。
引き倒される。
翼竜の爪が俺の耳を掠めるのと同時にレミウルゴスが飛び上がった。
折れかけたナイフを翼竜に突き立てる。
しかし、翼竜は多少身を捩っただけでレミウルゴスを弾き飛ばした。
俺の真横に墜落するレミウルゴス。
石畳が砕け散った。
「大丈夫か!?」
「…ゴホッ…ぁあ。」
頭を振り、苦しげに起き上がるレミウルゴス。
「悪い…ぼーっとしてた。」
「減点だぜ…それ。」
「ああ…。もう二度としない。」
自分で頬を叩く。
今は瀬戸際だ。
何かを無駄に考えてたら、簡単に命を落とす。
状況の整理は後だ。
今は生き残ることだけ考えないと…!
「先生達は何処だ?」
俺たちは今日実習でここに来てる。
付いてきた先生だけじゃなく、他にも何人か居たはずだ。
「居たとして…あそこの中じゃないかな?」
別の声が混ざる。
振り向くと、頭を振りながら起き上がるアレンの姿があった。
「アレン!」
「だいぶ不味そうだね…何がどうなってるのかは、後で聞くよ。先ずは…隠れるべきだ。助けは来ないだろうし。」
酷く悪い顔色でそう言ったアレンは、よろめきながら立ち上がった。
「…っわかった」
まだ気絶しているハンスとセスタを抱える。
翼竜からの爆撃を回避しつつ、駆け出す。
「マークされてます!逃げられません!」
エイが上を見上げて言う。
見れば、何匹かの翼竜が走り出した俺たちの後ろをピッタリついて来ていた。
「っアレン!炎魔法!」
{「冰魔法Lv.10」の発動を確認しました。}
レミウルゴスが叫びながら魔法を発動する。
「…!わかった。」
{「炎魔法Lv.8」の発動を確認しました。}
俺たちを覆うように展開していた冰のフィールドに、火炎弾が激突して爆発的な水蒸気を発生させた。
熱い霧が俺たちを包み込み、辺りは一瞬で白く霞む。
「…あそこに隠れるぞ。」
爆撃の中で、まだ十分に残る茂みが見えた。
俺たちの体なら、全身をしっかり隠せる筈だった。
俺たちは茂みの中に飛び込んだ。
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