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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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348 外付け保存

超絶怒涛の4/10連投


「どういう状況でわかったんそれ。」


私の質問に小崎は咳払いをして返した。


「教会はアドヴァンダルから魔王城攻略調査要員を募集することがあります。その中に混じっていたのがユーリーンでした。」


「んなんか…まぁいいや。」


妃奈が微妙な顔になったけど、それから目を背けて小崎は話を続けた。


「募集概要や、仕事内容などを説明した後の質疑応答にて、ユーリーンが得意役職に関しての質問、私の返答の後、彼はロシア語に混ぜて『ありがとう』という部分のみを日本語で返答しました。」


なるほど?


「偶然とかじゃなく?」


別に公用語がロシア語ったって、この世界に日本語があった事実はあるわけだし、スラング的に残ってるみたいな可能性もあるのでは?


「いえ、現在までに日本語話者は絶滅し、確認されている中で残っている日本語の中に『ありがとう』など感謝に関する単語の確認はできていません。また、ユーリーンの血筋には24世代前時点で西原の名前があったようですが、それ以降の記録はなく、後天的に日本語を知る機会はなかったと思われます。」


「西原?」


妃奈がクエスチョンマークを飛ばす。


「お察しの通り、初代勇者の西原秀治の家系だ。俺たちはCode.1がユーリーンに宿ったのもそこらへんが関係していると思ってる。…とはいえ、今残っている日本由来の単語は『カラオケ』、『スシ』だけだな。動作とかはまだ日本由来のもいくつかあるが。」


増井が説明を追加した。


んー…。

…なんか、youは何しに感があって嫌だね。


「おけ。じゃま、ユーリーンが一旦前世、それも日本語が絶滅する前の記憶を持ってるってのは仮定として置いとこう。問題は、それを何で小崎に教えたか、前世は誰なのかってこと。」


「私に対して日本語を使用した理由は、おそらく説明会時に名乗った名前にあると思います。私は外でも小崎梓の名前を使っておりますので。」


「そういえばお前だけ司祭だとか神父だとか厨二ネーム名乗ってねぇよな。流石に恥ずいって?」


ニヤニヤしながら小崎に指をうねうねさせる妃奈。


「「…。」」


ノーコメントな厨二2人を無視し、小崎は話を続けた。


「ユーリーンの前世が誰なのか、ということについては、まだ詳細にはわかっておりません。こちらでは最有力候補として初代Code.1継承者の西原秀治を挙げていますが、確証は取れていません。」


「顔馴染みではあったんでしょ?なんかそれっぽい反応みたいなのはなかったの?」


「私はCode.10継承時から外見を変更していませんが、ユーリーンからの反応は対面時には確認できず、私が名乗ったところで明確な反応をしましたので、彼が私個人に反応したという確証は取れませんでした。」


なるほどね。


状況証拠だけじゃ前世の記憶を持ってること、それが日本語話者だったってことしか分からないか。


「んじゃその逆にさ、そいつがその西原ってやつじゃねー可能性みたいなのってあるわけ?Code.1がその西原の家系生まれで、Code.1の先代も西原だったんだろ?」


妃奈がホワイトボードから赤色マーカを取って天使たちに向けた。


転生の条件ってか、転生はさっきも言ったようなHP:0→スキル、称号の停止→経験値処理→魂の分離→輪廻システムへ移動っていうのプロセスを踏んで行われる。


で、記憶っていうのは脳に刻まれるもので、魂の分離の段階で脳と一緒に置いてかれる記憶は通常次の体に持って行くことはできない。


記憶を持ち越すには、私がやったみたいに記憶みたいな情報を魂とは別に持っていって、新しい体の脳にそれを刻みつけないといけない。


私が使ったのは鑑定、つまりCode.10とCode.3だったけど、ユーリーンはCode.1で代用できたんだろうか。


なんか違和感。


そも、Code.3で記憶の引き継ぎができたのは、元々Code.3の権能自体が魂の情報を司るものだったからだ。


転生直後にCode.4で記憶を補強できたのもでかい。


Code.1は単純な力の権能。単純ゆえの万能性はあるけど、Code.3みたいな専門性はない。


例えるなら、インクたっぷりのバケツだけで字をかくようなものだ。


めちゃくちゃ上手くやればできないことはないんだろうけど、同じインクの入れ物ってだけならボールペンのほうが上手く字を書ける。


Code.1とCode.3にはそういう違いがあるわけで。


私みたいにCode.の扱いに長けてるならまだしも、石田に多少成長させられたとはいえ、元々器じゃなかったところに手に入れたCode.1をこうも上手く扱えるなんてことある?


というか、この記憶を持っての転生が本人の望むところだったかも分からないし。


ユーリーンが意図してやったものじゃないって仮定して、勝手に記憶が引き継がれる事…。


んー?


あー?


…称号がなんか悪さしたか?


(欠片保持者)。

Code.が器じゃないやつに受け継がれたとき、その保持者がCode.に押し潰されないようにCode.の権能を抑制したり、魂を補強したりする効果を持つ称号。


魔王と天使の称号の役職部分を抜いた称号だね。


Code.1は私が受肉するまで器が見つからず、輪廻システムに抵抗してた。


このシミュレーターに記録された人間の魂は問答無用で輪廻システムに運ばれて適当な人間に宿る設定だから、これに抗うには輪廻システムの強制力よりも大きな力で付与を逃れ続けるか、すでに受肉済みという誤情報でシステムを騙すしかない。


Code.1の付与を逃れるために欠片保持者が転生前の記憶を用いて受肉済みと偽装してたとしたら、まぁ前世の記憶を保存したまま新しい肉体にまで持ってくってこともできるだろう。


とはいえ、Code.1の性質的に輪廻システムを逃れるためならそんな面倒なことせずとも輪廻システムよりも強い力で争い続けてればいいんだよな。


欠片保持者がどこまでのCode.に対する操作権を持ってるのか分からない。


あれ、私が作ったわけじゃなくてシステムがCode.の管理のために勝手に作ったやつだからね。


私の手を離れたシンギュラリティなシステムの一つ。


まぁでも前者の感じで行くなら、転生前の記憶が引き継がれた事象にも説明はつく。


説明がつくだけだけど。


結局、転生前の記憶が西原くんのものという確証は取れない。


可能性自体は1番高いと思うんだけどね。


私の仮説で行くなら、使う記憶は別に誰のものでもいいわけで。


1番近い前世のやつを使うのが1番合理的だけど、合理性だけで言ったらそんな面倒なことをするまでもなくゴリ押しで付与を逃れてればいいわけだし。


「…。」


天使たちは沈黙してる。


小崎が口を開いた。


「ユーリーンとの直接接触にて今後確認する予定です。」


まぁそうするしかないわな。


81


山:結構あっさり流されたんですけど、ユーリーンが西原の血を継いでると言うのは、前々からの設定補完でもあります。


ア:つまり?


山:ユーリーンの家は、勇者を輩出する家系という謎の設定が初期の方にあったんですが、それの内実の説明ですね。


ア:ありましたね。勇者スキルあたりの説明であやふやになってた設定。


山:ユーリーンの家は、西原の血筋、正確には崩壊後、西原(妹)の子孫にあたります。で、西原秀治がCode.1継承前にその家族に対し何をやったか覚えてます?


ア:あれですよね。エネルギー渡したんでしたっけ、崩壊から守るために。


山:それです。で、勇者スキルの付与はエネルギーが多い魂に優先されるため、エネルギーを継承していったユーリーンの家が勇者を輩出しやすいと言ったロジックになります。


ア:死に設定の補完お疲れ様です。もう誰も覚えていないでしょうに。


山:死にかけてたくらいの時に思いついて、出せるタイミングがないまま死んじゃったんです。


ア:手遅れだったんですね。

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