344 What if カス
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まぁ、それはそれとして。
ネルの容器をソファで寝っ転がりながらスマホを弄ってる妃奈のお腹の上に置く。
「…何?」
スマホから目を離し、顔をこちらに向ける妃奈。
「そろそ行こっか。」
「where」
「石田ん家。」
「ウ゛ォエ」
私の言葉に妃奈は思いっきり顔を顰めると、スマホを放り投げ、ネルの容器を抱えながらソファから転げ落ちた。
絨毯の上でゴロゴロ転がる妃奈。
その姿はおおよそ人間の尊厳を捨てていた。
「…oh」
「だるいいー。めんどいー。」
哀れ石田。
こうまで人に嫌われるなんてそうそうできるもんじゃないぞ石田。
まぁ私も普通に嫌いだけど、石田。
なんなら今回の戦争で殺すつもりだけど、石田。
んじゃま、別にいいか、石田。
「察して有り余るけど、不可避なのよこれ。会議しとかないと効率よく人類滅ぼせないし。」
絨毯の端から端を転がりながら往復する妃奈の体を爪先で止める。
「うぇぇぇ…めんどくせぇ…。」
私の爪先の上でも回りながら妃奈は同様に絨毯に放り出されていたスマホを引き寄せ、ぽちぽちし出した。
「てか、妃奈って10年前とかにも戦線停滞のためにOHANASHIして来たんじゃないの?」
妃奈の拒絶具合に若干の疑問が浮かぶ。
私の問いについて、妃奈は額の皺をさらに深くして答えた。
「基本私が石田と関わるのってマジで必要にかられた時かブチギレついでだからね。そうでなくて心の平穏が保たれてる時にあんな老害の元に好き好んで行くかよ、普通。システム稼働初期に何度かコンタクトあったけど、初動の人となり把握時点で基本無視に移行したし。」
根深ぇ。
「てか、最初っからあんな感じだったわけ?」
「システム稼働直後のあいつのコンタクトがなんだったか分かる?魔王城直乗り込みからの101層まで転移してきたんだよ?デリカシーとかねーわけ?当時としてもシステム把握段階だったせいで妨害とかそういう技術はゆるゆるだったし、協力の体を保ってきてたけど、Code.7の知識を楯に人類種殲滅制限みたいなのも設けてきたし。」
妃奈が吐き戻すジェスチャーを織り交ぜながら石田の不満点をつらつら語る。
んまぁ、当時の石田としては私を殺せた時点でもう人類を殲滅する必要はないのに私のお願いを聞いて殺し続けようとする妃奈は邪魔すぎただろうしね。
どうにかして妃奈を御しようと思って色々一足跳びで進めすぎたか。
まぁ、焦ってくれたおかげで妃奈が天使側に与することも無くなったわけだし、結果的には良かったのかもしれない。
…。
……。
………いやよくねぇよ。
カス石田カス。
万に一つでもうちの妃奈があっち側になってたらどうするつもりだ。
許せぬ。
やはり殺すか…。
「はぁ…送ったよー。」
私がifの話にブチギレそうになったタイミングで、妃奈が空っぽになった手のひらを見せる。
おーけーおーけー。
Ifで悪いけど、石田には今回のOHANASHIでこの鬱憤を晴らす手伝いをしてもらおうじゃないか。
{「時空魔法Lv.10」を発動しました。}
リビングに漆黒の穴が空いた。




