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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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とある魔族の話 オルドワルドの場合


「…。」


この女…。


冷や汗が垂れる。


俺が話しかけた拍子に威圧スキルが解けたのか、涙目のハーピィが俺の元に唸りながら駆け寄ってくる。


それに対し天使は一切のアクションを見せる事なく、奴の手はハーピィの胴体の形で固まっている。


天使を刺激しないよう後ろ手でハーピィの拘束を手動で取り外し、尚も泣きつくこいつを手で払った。


背後でハーピィが飛び去る音が聞こえる。


俺の陰から漏れたのか、天使の目線が一瞬背後に回った。


瞬間、魔法を発動しかけるのを寸前で止める。


今の隙が本物なのか、それとも意図されたものなのか判別がつかねぇ。


魔法の発動に精神力が削られた瞬間にあの洗脳がまたくる可能性もある。


思考停止は禁物だった。


何秒も、何十秒にも拡張された時間が流れる。


冷や汗が頰から落ちた。



「…君は…」



先に口を開いたのは天使だった。


主導権を握らせるわけにはいかない。


次いで被せるように言葉を発した。


「俺は75階層ボスのオルドワルドだ。怪しげな人物を発見したためここに来た。…ついてきてもらおうか…五号……様。」



…。



ボス部屋の一室にて、机を挟んだ向かい側に天使が座り、呑気に紅茶を啜っている。


揺れる蝋燭の日が卓上のカップに不可思議な影を描いていた。


…何度見通そうとしても底が見えねぇ。


いや、底が見えすぎる。


俺にとっての魔術は体の一部と同義だ。

鑑定スキルは持っていないが、魔力操作スキルである程度の力量を計る程度の芸当はできる。


それを持ってしても、目の前の天使から得られるその力量は、精々30〜40階層、下手をすれば20階層程度の力しかなかった。


それもボスクラスじゃなく、雑魚の、だ。


それがあり得ないことだってくらい、俺でもわかる。


魔王様曰く天使はその直属の上司にあたる存在であるらしいし、エヴァによれば格的に見ても魔王様と同等以上の存在であると判定されていた。


それに、侵略者討伐軍の時も、俺たち全員の魔術抵抗を無視して時空魔法を発動させた上、進化を完了した侵略者を単騎で相手取ったという事実もある。


それを成し得るにその程度の力で足る筈がない。


考えうる可能性としては、高度な擬態か、それとも洗脳体とか…か?


俺の目を欺きうる擬態、信じ難いが、魔王様ならそれくらいのことできても驚かない。それと同等というのなら、それにも合点がいく。


それとも、今目の前にいるこいつは何かしらの生き物を洗脳し、ガワだけを取り替えた別物だったりするんじゃないか?


エヴァの例もある。外見を取り繕うのはそう難しいことじゃない。


それなら、俺の目を欺いているという線を考えるより納得がいくんだが…。


…どちらにせよ、警戒するに越したことはないか。


どうにしろ、わかってる手札だけでもこいつの実態は俺1人の手に負えるようなもんじゃねぇ。


見たところ敵対意思は無いようだし、せっかくの機会だ。幾つか疑問を解消してくれりゃ言うことはねぇ。

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