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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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500/552

Code.4 レミウルゴスの場合 ④

祝500話


壁際に追い詰められた男が腕に抱えていた仲間の死体を放る。


嫌な音を立てて崩れ落ちたそれの全身には幾本もの短剣が突き刺さっていた。


「大地魔法の仕様知らない感じ?」


「知ってるから生きてる奴使ったんだよ。」


「へー。人の心とかないんだ。」


「気狂いが。」


男が屈むと同時に地面の石畳を剥がして放ってきた。


北賊街の建築物は耐魔法防御力にて真価を発揮する。


即座に発動できる中に石畳を攻略できるものはなかった。


縦回転をしながら迫るそれを最小限の動きで躱し、反撃に転じようとした刹那。


石畳に接着されていた物体をレミウルゴスの横目は捉えていた。


そこにあったのは、少量の火薬、そして地雷式の火魔法の魔法陣。


咄嗟に防御体勢をとる。


赤熱。


逆にいえば、北賊街の建築物は耐物理防御力にて魔法防御を下回る。


レミウルゴスの左斜め後ろにて爆裂したそれは、耐魔法防御力の伴った散弾に変わり襲いかかった。


頭を庇った腕に破片が突き刺さり、爆風にて前向きに重心が崩れる。


その隙を見逃す男ではなかった。


前屈みになり、防御の腕も背後に回るレミウルゴスの顔面にナイフが襲いかかる。


しかしそれは、青色の障壁に阻まれた。


{「要塞Lv.7」の発動を確認しました。}


レミウルゴスは眼前で静止するそれを体を捻ってはたき落とした。


石畳でバウンドするナイフ。


体を捻った際のエネルギーをそのままに、回し蹴りにてナイフを蹴り返した。


若干の弾性を持つ靴裏とナイフの柄の先が垂直に接したことにより、それは弾丸の様に男の顔面に吸い込まれた。


要塞スキルにて体勢を崩していた男はそれを回避する術をもたなかった。


眼球に深々と突き刺さるナイフ。


苦悶のうめきをあげ、慌てて腕を顔に向ける男の腕を持ち手に、レミウルゴスは膝をさらにナイフの柄に叩き込んだ。


頭蓋骨を貫通し、後頭部から刃先が飛び出す。


そのまま後ろに倒れ込む男の腹をクッションに、レミウルゴスは地面に降り立った。


手を叩く音が聞こえる。


見ると、グレイが感心げな表情でレミウルゴスに拍手をしていた。


「その男は多分対僕用に用意された中ボス格だからね。ここまでやれるとは思わなかったよ。」


「その上から目線ムカつく。」


「単純に褒めてるだけなのに。」


「どうせ続く言葉は『僕を倒すには力不足だったけど』とかでしょ。」


「よくわかったね。」


レミウルゴスは舌打ちをすると、石畳に当たって再度柄が浮き出たナイフを男の顔面から引き抜いた。


{「烈風魔法Lv.6」発動しました。}


刃先にエンチャントされた烈風が渦巻き、一瞬で脳漿のかけらを吹き飛ばす。


刃先をグレイに向けた。


「何度肝臓を刺し貫いても僕は死なない。言ったろ?結局ゴリ押しには勝てないんだよ。」


それに対して手を大きく広げたグレイは、訳の分からないことを宣う。


「言ってない。」


怒りのままに投擲されたナイフはグレイの顔面に吸い込まれ、そして寸前で指に挟まれ止まった。


吹き荒ぶ烈風も、グレイの白髪を揺らすことさえ叶わない。


興味なさげにナイフを投げ捨てたグレイは、その手でレミウルゴスに手を差し伸べた。


「来てよ、レミウルゴス。君にはやって欲しいことがある。」

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