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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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338 ザ◯

それなりに怒涛な14/14連投


目が覚めたら12時間くらい経ってた。


外の景色はほとんど変わってないけど、椅子で長時間寝ていたことによる体の痛みと、若干巻き戻った時計の針がそのことを示していた。


あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ー


立ち上がった拍子に断末魔の叫び声を上げる腰と首にとどめをさしつつ、体を捻る。


血が音を立てて血管内に流れ出したのを感じながら、冷え切ったポタージュたちを一気に飲み干し、キッチンで水をつけて放置した。


とりあえず未だ垂れ下がる瞼をこじ開けるべく、洗面台の前に行く。


…おおう。


洗面台の鏡には、完全に限界OLな姿が映し出されていた。


顔はパンパンにむくみ、目は普段の半分も空いてない。

透き通るような白髪でも、ボサボサなら見た目が悪いことを初めて知った。


「…。」


『お湯張を開始します。』


目を瞑り、ノータイムで給湯器のボタンを押した。



…。



サービスシーンはない。


1時間ほど風呂に浸かり、髪を乾かしてリビングに戻る。


窓を開けて程よい外気に当てられながら、ソファーに倒れ込む。


あー


体力はMAXなのにこの怠さ。


1000年ぶりの疲労感。


流石にこの身体性能はいずれどうにかしないといけないけど、この心地よさは捨てがたい。


窓の外からは風の音に乗せられた鳥の囀りや虫の声が聞こえる。


直射日光もない、ただ風呂上がりの人間に与えられうる限り最高の環境。


欠落に美学を感じる層が一定にいるのも納得できる。


女神ボディの全能感も悪くないけど、人形体の程よい怠さも悪くないねー。


テレビのリモコンをとって何か付けたい気持ちもあるけど、体をここから移動させるのを肉体が拒否してる。


根本的にやる気がない。


脳がいくら命令しても、意思がそれを棄却する。


もしかしたらもう私の体はここから動けないのかもしれない。


逆さになった視界が、窓の外ののんびりとした景色だけを映し出す。


風にざわめく木々の葉と、地面を突く小鳥。


舞う蝶達が遠くの方で戯れてる。


最高にベターな休日。


プランターの中の花が咲きかけてた。


と。


{「時空魔法」の発動を確認しました。}


窓際が歪み、転移門が開かれる。


中から出てきたのは、全身から緑色の血を垂らした妃奈だった。


「あ。」


ソファでだらけ切った私の姿に気づく妃奈。


彼女が何かをアクションする前に、先ほどまでのレスポンスの遅さが信じられないほどの速さで私の体は妃奈の近くから飛び退いていた。


さっきまで私がいた地点に血が垂れるのを戦々恐々と見つめながら、震える口を開けた。


「ご、ご飯にする?私にする?それとも…」


私の様子に目を丸くした妃奈は、自身の姿を一度鑑み、ニヤリと口を歪ませた。


「女神様、これね、侵略者に精神汚染されて肉体改造されてた信者どもの血。30分前に殺したばっかの産地直送品。」


腕をわきわきさせながらジリジリと私との距離を詰めてくる妃奈。


奴が通った地点は緑色の血で汚され、私の行動範囲が一段と削れていく。


「お…おのれ魔王め!いたいけな少女にこの様な仕打ち、汚いぞ!文字通り!!」


冷や汗をダラダラかきながら言う私に、妃奈は体液で滑った手をぺちゃぺちゃさせながら言った。


「うんうん。そうだね。でも女神様は穢れた私でも愛してくれるよね。」


「よごれの字が違うから!知ってる?この世界じゃ物理が最強なんだよ?フィジカルな汚れの方が時にはメンタリティなそれを上回るんだよ!?」


「まぁそれは試してからのお楽しみというわけで。」


「いやあああああああああああ」



…。



サービスシーンはない。(2回目)


リビングの様子は獄地魔法にて一撃で復元され、フカフカさを取り戻したソファに再度座る。


画面の中のキャラクターが私の操作を受領し、思い通りに動く。


「ほいじゃま、とりあえず事実から行くね。」


「ういす。」


隣でコントローラーをかちゃかちゃしながら、妃奈はなんでもない様に言った。


「侵略者討伐軍退却後、北部高原にCode.4を殺しに行った日から12年、私と別れてから10年の月日が経ってます。」


妃奈のキャラから飛び出た暗黒の球が私のキャラを即死させた。

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