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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第八章 ミクロな世界の侵略

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Code.2 (2)

それなりに怒涛な4/14連投


「…!」


[対象3のMPの残量が危険域に達しました。]

[対象3のSPの残量が危険域に達しました。]


{Code.2の発動を確認しました。}


「…ハァッ…ハァッ…ハァ……始まったのね…。」


「はい。900秒前、司祭様、神父様、Code.10様はアレイヌ・アレイン古代都市群最下層に到達、10秒前に対象を確認、神格のこれ以上のロストを防ぐため、大規模転移魔法を使用しました。…これを。」


「あ、…ありがと。」


教会地下。


安曇真澄の居住区からさらに下層。


エネルギー転送区内にサラと安曇はいた。


物々しい機械群と、その周囲に渦巻く魔法文字の中心、生贄を捧ぐ台座の上に座る安曇の顔からは完全に血の気が失せている。


司祭らが大規模魔術を行使するたび倒れかける安曇を支えるのがサラの今日の仕事だった。


荒い呼吸で出てきた鼻血を拭おうとする安曇にハンカチを渡しつつ、サラは安曇のバイタルをチェックするタブレットを操作し、追加のHP回復ポーションと精神安定剤を呼び出した。


床の一部が回転し出てきた数本の瓶を机に並べるサラに、安曇が声をかける。


「薬は大丈夫よ。HPも正気度もCode.2で回復できるし。」


「しかし、安曇様のHPはMPやSPと比較してやや少ないです。それらの調整リスクを考えれば私が直接投与した方が安全性の面で安心なのですが。」


その言に心配げに返すサラに対し、安曇は軽く言った。


「大丈夫よ、私が何年この能力と付き合ってきてると思ってるの?」


「しかし…」


サラはなおも言う。


台座の位置の関係で座る安曇を上目気味に見るサラに対し、安曇は観念したように言った。


「わかったわよ。いざという時は助けてもらうわ。でも普段はいらないから、そこだけわかったらその捨てられた犬みたいな目をやめなさい。」


「ありがとうございます。」


「はぁ…。」


ため息をつく安曇。


サラは再度瓶を並べ出した。


と。


[対象1のHPが危険域に達しました。]

[対象2のHPが危険域に達しました。]

[対象1のSPが危険域に達しました。]

[対象2のSPが危険域に達しました。]


タブレットに新たなデータが受信される。


「安曇様!」


「もう治ってるわ。」


安曇の言葉にサラが再度タブレットに目を落とすと、ついで受信されたデータでは対象1、2、つまり司祭と神父のステータスはもとに戻っていた。


胸を撫で下ろすサラに、安曇は頬杖をついて問うた。


「今日の戦い、あいつらは勝てると思う?」


「…勝算はあります。」


「へぇ。」


呟くように言うサラに安曇は薄く笑い、続きを促した。


「今回の討伐対象は、Code.5を獲得した神格です。SPの操作能力を有するCode.5は、この世界において万物を操る能力と言っても差し支えない。ですが、そこにはいくつかの弱点が存在します。」


「…。」


「Code.5のSPの操作の実態は、SPの簒奪、付与。つまり、SPの操作においては簒奪対象、付与対象が存在しなくてはなりません。」


「それが一番厄介なんじゃないの?」


[対象2のMPが危険域に達しました。]

[対象2のSPが危険域に達しました。]


「あ、」


「治した。続けて?」


「…はい。…SPの操作に付与対象が必要だと言うことは、過剰にSPを簒奪してしまった場合でも、それを直接放出する手段がないと言うことです。Code.5に限らず、Code.シリーズは、それぞれの権能に伴う能力を使用できるようになるだけで、使用によるコストや損耗は術者に依存します。つまり、SPを簒奪する過程で器にたまるSP値、付与する過程で流れるSPによる器の保持は術者に依存し、そしてそれを保護する能力はCode.5の対象外です。初代継承者の前村龍樹氏も、主な戦闘手段はSPを付与し、ステータスを与えた魔物による攻撃や、生成物による防御など、積極的な簒奪能力の使用を避け、器の耐久値の減少を最大限抑えていたことがわかっています。」


「つまり、今回の戦いはその神格のエネルギーを溢れさせることが目的なのね?…でもそれを三人でやるのは無理があるんじゃなくて?簒奪による負荷は簒奪される側にもあるわよね。私がいるとは言え、神格のエネルギーを溢れさせるほどまで吸われたら、そもそも器が持たないわ。」


訝しげに聞く安曇に、サラは指を立てて答えた。


「こちらにはCode.10様がいます。彼の方はこのシステムの基礎として女神に組み込まれた神格の外部端末です。ステータスと器を持っていますが、端末に設定されたそれに加えて中枢にも神格としての器とエネルギーがあります。今回の主な作戦として、Code.10様の外部端末が破壊されないように守りながら、Code.10様がエネルギーを吸わせ続けると言うものになります。」


「突貫したわけではないのね。…で、結局色々考えたのは分かったけど、勝算はいくつ何かしら?」


「40%ほどかと。討伐方法は明確化されていますが、詳細な数値は分かっていない神格との戦闘です。敗北の可能性も十分にあります。」


想像より低いその確率に、安曇は目を丸くした。


「その確率で戦いに行ったの?石田が?あまりに自暴自棄じゃないかしら。」


「どうにもならない場合は、事前に準備した転移のスクロールで教会に戻ってくることになっています。勝つことができなくても、最低でも負けることはないかと。」


そう言いながらサラが取り出した3枚のスクロールを、安曇は弾きながら言った。


「転移のスクロールって、空間魔法の一種でしょ?Code.5の前で発動できるの?」


「ええ。スクロールの効果は魔法の起動ではなく、事象の遅延ですので問題ないかと思われます。」


「そこは考えてあるのね。流石に脳なしではないか…。」


安曇は唸るような声を出し、台座に寝転んだ。


爪を眺め出した安曇から、サラは視線を落としタブレットを操作し始めた。


と。


タブレットに赤文字が現れた。


[対象2のHPがロストしました。]


「え」


「どうしたの?」


「神父様の…HPが…」


「死んだの?」


「未確認の高威力魔術です!作戦の失敗を宣言!すぐに脱出を…。」


「待ちなさい。」


即座にスクロールを破り、術式の再開を行おうとしたサラを安曇が止めた。


{Code.2の発動を確認しました。}


「「獄洸魔法Lv.10」、「信仰Lv.10」、「呪怨Lv.10」よ。3分以内なら蘇らせられる。」


安曇が手を台座につけると、青色の電光が部屋中に流れた。


「なにを…」


「ここでの撤退は逆効果よ。ここまでの戦いで神格はSPを大分吸収してる。次攻めるときはそう簡単に神格の地まで辿り着けないかもしれない。」


「ですが、」


「ここまでのコストを無駄にするのは厳しいわ、今なら立て直せる!」


叫ぶ安曇の口から血が大量に吹き出す。


「安曇様!」


駆け寄るサラに安曇は叫んだ。


「これは龍樹の弔い合戦よ!誰にもドロップアウトなんてさせない!」

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