331 回復条件
このシミュレーションシステムにおける肉体再生は、肉体それぞれに設定されたHPを回復させることで成り立っている。
例としてあげるなら、腕のHP300、足のHP700、胴体のHP1000みたいな感じ。
で、損傷なり欠損なりが起こるとそのダメージに応じたHPが削られる。
肉体それぞれに設定されたHPの合計がステータスに記載されるHPになるから、さっきの例で行くと、腕:0/300、足:700/700、胴体:1000/1000みたいになると、その人のHPは1700/2000になる。
HP自動回復に肉体再生機能が付随しているのは、HPと肉体維持率の間には切っても切れない関係があるからだ。
その点で言うと、さっきの現象はシステム的に見てあり得ない現象だった。
厳密にいえばCode.6の攻撃は回復不可なわけじゃなかった。
できないのは、肉体再生だけ。
逆にいえば、肉体再生はできないのにHPは回復できてた。
つまり、事実として欠損しているのにシステムは欠損してないと判断していたってことになる。
こんなことは普段あり得ない。
ステータスがついてる生物はその5体満足の姿が記録される。
Code.6みたいな事象を起こすには、その生物の5体満足の姿を欠損状態として再登録するか、HPの分母を削るしかない。
でも、今回Code.6がやったのはそのどちらでもない。
鍵はCode.6だった。
Code.6は魂のストックの権能。
ここで言う魂は広義の総合エネルギーと言える。
そして、これでストックできるエネルギーの中にはHPも勿論含まれている。
元々システムでの役割としてはCode.2に変わる電池的な使い方をしてたんだけど、それはCode.6の機能の一端でしかない。
エネルギー操作技術にもよるけど、ストックは応用次第で自分以外にも適用が可能になる。
つまり、Code.6は私の肉体のHPを過剰回復させることで肉体の総合HPを補完してたのだ。
具体的に言うと、腕:0/100、足:700(+150)/700、胴体:1000(+150)/1000、総合:2000/2000みたいなこと。
この時HPは完全回復してるから肉体の維持率は5体満足の時と同様100%とシステムで認識され、腕のエネルギーが補完される事はない。
光魔法のHP回復効果は強弱に関わらず「HP自動回復」というバフの一つでしかない。
これはステータスにつくもので、肉体に設定されてるHPを回復させることができるわけじゃないから、いくら獄洸魔法を連打しても治らなかったのだ。
勿論、レベルについてない管理者仕様の獄洸魔法ならそこらへん設定可能なんだけど、この体は別に管理者じゃないからな。
この現象の対処法として、闇属性魔法でのエネルギー吸収にて過剰ストック分を削るしかなかった。
これ、過剰ストックをつけられすぎてそれを削り切る前に肉体が崩壊するとかあり得るし、マジすぐ気づけてよかったわ。
「…ちなみに、なぜ気付けたのかお聞きしてもよろしいでしょうか。」
Code.6が鎌をクルクル回しながら私に問うてくる。
「お前に時間差で斬られた胴体の高速分裂が過剰回復してた。高速分裂はシステムに保存された5体情報から術者の意図に沿って回復する。これは各部位に設定されたHP枠を補完する形で成されるのに、高速分裂はそれを無視した。これはその他の部位がストックによってHP過剰になってたから。つまりそういうこと。」
その回答に、Code.6は口が裂けるほど口角を吊り上げた。
「最高です!お母様!そうでなくては!!!」
Code.6が駆け出す。
「私はこのシステムの開発者やぞ。」
振り下ろされた鎌を正面で掴んだ。
山:複製スキルや高速分裂スキルで欠損部分を回復させてもHPが戻らないのは、回復させた部位は欠損した部位ではなく、残った方の部位に統合されるからです。
さっきの例で言うと、腕:0/300、足:700/700、胴体(腕付き):1000/1000、総合:1700/2000って感じになります。
ア:これまた細かい設定を。




