とある魔族の話 (6)
怒涛の3/5連投
「天使様の話によれば侵略者達は現在それぞれの階層の+5層分の強化がなされているらしい。」
18ページからはそれぞれの鑑定結果が特記事項まで詳細に印刷されていた。
見ればなるほど、確かにステータスはシュバルト達のそれを上回っているものが多いようだった。
「だがしかし、よく考えられている。+5階層から考えれば、私たちの力は適正レベルに遠く及ばないが、相性面で考えればこちらが圧倒的に有利だ。」
アヴァンが言う。
確かにその通りだった。
今回シュバルト達が担当する最終階層の侵略者達は、確かに軒並みステータスが高いが、それらのほとんどは物理主体の戦闘スタイルの様だった。
そしてそれは今集結している面々が相手取るには最も有利な対面だった。
アヴァンやオルドワルドは元より魔法主体の戦闘スタイルであるし、エヴァも毒や分体で徹底的に対面拒否の戦い方をする。
そしてシュバルトに関しても、古龍の力を駆使した物理攻撃主体ではあるが、その身に流れるもう片方の血、吸血鬼の力は徹底的に相手を弱体化させる能力がある。
魔法相手にしろ物理相手にしろ、シュバルトの能力は相手のエネルギーと耐性を下げ、物理攻撃を通すことに特化していた。
「83層、85層、92層はまだ問題ねぇ。だが95層。これはそれでもまだ油断できねぇと思うが。」
オルドワルドが白身をフォークで突き刺しながら言った。
「ふむ…「韋駄天」スキルか…。」
「高速移動と物理強化は厄介ですね…。」
エヴァが口に手を当てて呟く。
オルドワルドがフォークを回しながら続けた。
「うちの配下にも獲得したやつがいるんだが、あのスキルは定数値上昇じゃ無く、割合で能力値を上げやがる。しかも最終計算値にそれを掛けるから純粋なステータス値が高けりゃ高ぇ程厄介だ。それと…」
「それと?」
「このスキルはパッシブスキルじゃなく、アクティブスキルだ。つまり、この瞬発力値、874999に韋駄天スキルが乗る余地があるってことになる。」
「それは…脅威ですね。」
「だが、能力値は999999が上限だろう?韋駄天はレベル毎に+10%乗算される様だが、レベル1時点で既に95万を超える。確かに上限能力値は脅威だが、見た目以上にその速度に怯える必要は無い。」
「問題はそこだ。」
シュバルトの言葉にオルドワルドはフォークを突き出して返す。
「ステータスの上限はあくまで能力値成長の上限だ。加算式、それもパッシブじゃなくアクティブのバフスキルじゃ、そのステータス上昇値は成長判定に見なされない可能性がある。」
「…つまり、上限を超えたステータス上昇が発生する可能性があると?」
「可能性はある。…体感だが、聖洸魔法のステータス上昇バフも上限を超えたステータス上昇を発生させうる事を考えるとその事を念頭に置いておいても無駄にはなんねーんじゃねぇかって事だ。」
「なるほどな…。」
オルドワルドの考えに唸る様に言うアヴァン。
「貴重な知見感謝する。…とはいえ、我々の固有スキルはほとんどが不可避だ。魔法にしろ毒にしろ抵抗にしろ、速度が発生する以前に我々のホームに入れてしまえば俄然有利なことに変わりはない。見たところ魔法耐性と状態異常耐性は共にあまり高くはない様だし、慎重を期すが、懸念に行動を歪められては元も子もない。我々は我々の得意で行く他ないのだから。」
「それに関しては俺も異論ねぇよ。」
姿勢悪く座り直したオルドワルドはチキンに齧り付きながら言った。
「ふむ。それでは侵略者に関してはこのくらいにしておこう。…今回の議題はどちらかといえばこちらがメインだ。」
「…。」
面々が神妙な顔つきになる。
「今回現れた天使様について…。」




