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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第八章 ミクロな世界の侵略

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とある魔族の話 (3)

怒涛の30/30連投


「はいはーい。そんじゃ、まずは紹介しましょう。えーと、こちら私の直属の上司、五号さんでーす。」


魔王様がいつもの快活な言い回しで隣の女を紹介される。


「あっ…どうも。」


魔王様に紹介された女は、ゆっくりと立ち上がり、か細い声で挨拶をした。


そののっそりとした動きに疑念が走る。


本当にこいつが次期魔王なのか?


見たところ、魔族ではない。


人族特有の雰囲気も感じられないことから、人間でもないことはわかる。


背中に羽が生えているところを見るに、もしやこいつはレベル100到達者なのか?


噂で聞いた事がある。


人族はレベル100に到達すると進化し、種族が天使に変わると。


しかし、たかだか1人族がレベル100に到達した程度で魔王の器になれるものか?


人族の強さは個ではなく統率された群の強さだ。


単純なステータスでは我々魔族に及ばずとも、一度に多彩な攻撃を行う群としての利点を活かし魔王城を攻略してくる。


それらの利点をすべて捨て去った個が強いとは思えない。


確かに統治者に個の強さはあまり必要ではないかもしれないが、それは少数意見だ。


結局は目に見える強力な何かこそが我々魔族の結束を確固たるものとし、まとめ上げる事ができるのだ。


魔王様に付き従っているシュバルトならば何か知っているやもしれないが、先ほどのアイシャとの会話を盗み聞くに有効な回答は得られないだろう。


「えーと、一応念話で通達されてたと思うけど、来たる人魔大戦、それ以前の魔王城内に侵略者が侵入しているとの情報はわかってる?」


隣の女について考察をしていると、魔王様が指を回しながらお聞きになられた。


私の管轄だ。


立ち上がる。


「はっ。私アヴァン、魔王様に通達された件に関して全幹部に通達済みです。現在14層、25層、27層、32層、38層、45層、47層、52層、58層、60層、61層、65層、68層、72層、74層、75層、77層、82層、83層、85層、92層、95層にそれぞれ数体の身元不明モンスター出現していると。」


私の回答に魔王様は満足げに首肯なされた。


「うんうん。そんで、その身元不明モンスターもとい侵略者達を討伐するにあたって、それらの指揮をこの五号さんに任せようと思ってるんだ…」


「納得いかねぇ。」


魔王様のお言葉に被せる様に発される男の声。


第73層ボス、アルドワルドだ。


元より素行が悪い男だったが、まさかこれ程とは…。


アルドワルドは立ち上がり、隣の女を睨みつけながら言う。


「納得いかねぇよ魔王様。俺たちは何百年もあんたに忠誠を尽くしてきた。それがいきなり出てきたぽっと出のよく分かんねぇ奴の命令のもと動けだ?そんなことできるわけねぇ。見たところ大した力も無さそうだが、本当に魔王様に代わる存在になれんのか?」


「…。」


アルドワルドの言葉を無表情で聞いていた女は、アルドワルドから目線を外し、魔王様に何かを耳打ちした。


それに対し何かを返答する魔王様だったが、なぜかそれらは強化された耳にも届かない。


何度か言葉を交わした後、元の様に女が席に戻る。


円卓の上に置いてあった骨付き肉に齧り付く。


その細身の体からは想像できないほどに高速でそれを食べ尽くすと、一本の骨になったそれを摘んで横に放った。



誰しもがその行動の真意がわからなかった。


放った骨に目線がいく。


気づけば、いつのまにかその先にアルドワルドが居た。


不味い!


いつの間に席から離れた?


頭に血が昇りやすい男だ。

馬鹿にされたと感じて手を出してもおかしくない。


私やシュバルトが瞬間的に立ち上がる。


が。


咀嚼音。


骨を砕く音。


アルドワルドは放られた骨をその口で受け止め四つん這いになってそれを咀嚼していた。


先ほどまでの威勢は欠片ほどにも感じない。


ただ無感情に、地に這いつくばり骨を喰らっている。


それを見た女は嫌そうな顔をした後、何かを呟いた。


アルドワルドにはその声が聞こえたのか、即座に立ち上がり、円卓の上の料理を片端から掴む。


口を開ける女に一つずつそれらを食べさせていくのだった。


「…!」


円卓がざわめく。


何をした?


スキル発動の予兆は何ら感じなかった。


何が起こった?


これがこの女の能力なのか?


「…ほら、なんかみんなびっくりしちゃってるから、色々無理矢理だから。」


魔王様がドン引きした表情で女にお話になられる。


「ん?あぁ。」


大量の料理を頬張り、咀嚼しながら返す女。


女…。



何かが違う。


…?


顔か?


…こいつ、本当に先ほどの女か?


目に見えるほどの瘴気が女から吹き出す。


ざわめいていた円卓が一斉に静まる。


威圧。


「ーんで、何か意見は?」


口元についたソースを拭いながら女は言った。


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