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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第八章 ミクロな世界の侵略

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Code.1 (27)

怒涛の26/30連投


程なくして、俺達は魔王城3層手前の転移魔法陣に到達した。


青い魔法陣が羽虫のような唸り声を上げながらゆっくりと回っている。


現在時刻は午前10時35分。


結果的に俺たちは1時間程度で本来の目標地点手前まで到達したわけだ。


あとやるべきなのは3層のボスを討伐し、地上に戻る転移魔法陣を出すことだけ。


「…3層のボスはミノタウロス亜種。氷系の魔法を得意とし、通常の物理攻撃と合わせて氷魔法が飛んできますので、注意してください。…それでは行きましょうか。」


魔法陣の前に立った引率の教会の女の人が3層ボスについての説明をしてくれる。


「「はい!」」


意気揚々と返事をする俺たち。


道中をかなりあっさりクリアしてきたおかげか、体力はまだ有り余るほどにあった。


先陣を切る引率の人に次いで、俺たちは全員で転移魔法陣を踏み抜いた。



…。



世界が湾曲する。

空間が反転し、前後不覚に陥る。

頭の先から分子レベルまでバラバラになっていく感覚のあと、足の先から集結していくような意識が伴う。

眩暈なんて生やさしいものじゃ言い表せないくらいの視界の混濁の後、俺たちは3層ボスの場所に立っていた。


「ぉえ。」


「ぅぅ…。」


「ぐぅっ」


反応は三者三様。


だが、皆一様に転移直後の吐き気を堪えている様子だった。


もうこれで3回目になるんだが、やっぱりこの感覚は慣れない。


かく言う俺も掠れる視界を擦りながら吐き気の中で周囲の状況を確認していた。


石レンガで囲われた円形のスタジアムのような場所。


壁には転々と松明が灯され、薄暗い視界の先に鉄の檻のようなものが見えている。


「galululululululululululu…」


低い唸り声。


鎖が張る金属音と共に、鉄の檻がゆっくりと開かれるのが見えた。


「…来る。」


順次吐き気から回復した生徒達が各々の武器を構えてそれに相対す。


「GYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!」


咆哮。


それと同時に魔王城第3層のボス戦が開始された。


…。



{「氷魔法Lv.6」の発動を確認しました。}


{「冰魔法Lv.6」の発動を確認しました。}


{「冰魔法Lv.4」の発動を確認しました。}


{「氷魔法Lv.10」の発動を確認しました。}



「左10右2地面氷結!」


アレンの看破による指示。


飛来した氷結弾を躱しつつ、凍りついた地面を踏み抜き滑りを抑える。


「レミウルゴス!」


「おう!」


{「地魔法Lv.6」の発動を確認しました。}

{「地魔法Lv.3」の発動を確認しました。}


俺たちを囲うように生成される岩壁。


氷結弾が当たる音がするが、その頑強さが揺らぐことはない。


「エイとセスタが前、アークが援護だ。アレンが看破するから、ハンスは後方支援組を守ってほしい。レミウルゴスは俺と行こう。」


「わ、わかりました。」

「わかった。」

「任せろ。」

「了解。」

「おう!」


岩壁の中で簡単な作戦会議をする。


「じゃあ解くぞ!」


「おう!」


フォーメーションが決定したところで、岩壁が解かれた。


{「冰魔法Lv.10」の発動を確認しました。}


「フィールド生成だ!」


アレンが叫ぶ。


同時に周囲の気温が一気に下がり、霜が降り出した。


「行くよ!」


セスタが合図を出す。


{「聖魔法Lv.7」の発動を確認しました。}


同時に展開された補助魔法が前線組に付与される。


周囲の寒さが格段に減った。


地を蹴る。


俺とレミウルゴスとエイとセスタが同時に飛び出す。


「くっ」


エイの盾がミノタウロスの剣とぶつかり合い火花が散ったのが見えた。


エイが押し合いをしている隙に俺とレミウルゴスは闇に紛れる。


「やぁっ!!」


硬直したミノタウロスの頭をセスタが蹴り飛ばす。


不意を突かれ、体勢を崩したミノタウロスが後ろによろめいた。


隙だ。


よろめいた先には、俺とレミウルゴスがいる。


{「地魔法Lv.1」を発動しました。}

{「身体強化Lv.8」の発動を確認しました。}

{「風魔法Lv.10」を発動しました。}


地がよろめいたミノタウロスの足を固定する。


唐突に足が動かなくなり、バランスを維持できなくなったミノタウロスが情けない唸り声を上げながらゆっくり後ろに倒れ込む。


その下にはレミウルゴスがいた。


「はああああああっ!!!」


気合いの声と同時にスキルによりさらに強化されたレミウルゴスのアッパーがミノタウロスの背中に当たる。


背骨が砕ける音と共に逆くの時に折り曲げられたミノタウロスは、空中に一瞬浮く。


その隙に、すでに風魔法で空中に飛んでいた俺が剣を振り下ろす。


強化された筋力はそれほど抵抗も受けずに、ミノタウロス首を切断していた。


「k」


断末魔すら上げられず、一瞬にしてHPをロストするミノタウロス。


同時に俺たちに経験値が入る音がした。


{条件が一定に達しました。人族、レーニン・ユーリーンのレベルが上がりました。}


{条件が一定に達しました。人族、レーニン・ユーリーンのレベルが上がりました。}


{条件が一定に達しました。人族、レーニン・ユーリーンのレベルが上がりました。}


鑑定が鳴り止まない。


一気にレベルが上がったようだった。


と、唐突に首無しになったミノタウロスの体が動き出す。


ギョッとして飛び退くと、下からレミウルゴスが這い出してきた。


「…びっくりさせんなよ…。」


「倒した後のこと何も考えてなかったぜ。」


レミウルゴスの手を取り、ミノタウロスの死体から引き摺り出す。


「まぁ、余裕だったな。」


「そうだなー。」


ミノタウロスの死体を見て、しみじみ言う。


そんなことをしていると、なんだか可笑しくなってきて、どちらともなく笑い出してしまった。


「…ユーリー…君…!」


遠くでエイが俺たちを呼ぶ声が聞こえる。


と。


{「時空魔法Lv.10」の発動を確認しました。}


唐突に、レミウルゴスの左腕が消し飛んだ。


血が舞った。


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