302 魔法対物理
怒涛の18/30連投
「まぁ、とりあえず外にあぶれた神格はぶっ殺すって事でOK?」
「OK」
魔王の隣に立つ。
「そうと決まれば早速ぶっ殺しに…は行かないよねそうだよね。」
えいえいおー。って感じで時空魔法を発動しようとした妃奈は、私の視線に気づき即座にスキルを停止した。
「ナイス学習」
「このパターン何回目?…んで、今回はどういった要因で?」
「魔法スキルのジャイアントキリング要素の不安。」
「あー。」
さっきも言ったけど、魔法スキルには特殊効果がついていて、格下相手でも格上にワンチャン通せる性能がある。
シミュレーションシステム上では妃奈は処理装置として最強のステータスとSPを持ってるけど、イレギュラーと元神格の器的に余裕を持って戦えるとも言い辛くなってきた。
少なくとも今現状スキル対抗でCode.10が押し負けたって事実がある以上、格下どころか同格、何なら格上になる可能性が若干ある。
まぁ格自体が単純な戦闘能力の差になるのかって言われたらこれもまた難しい話にはなるんだけども。
「…でもなんか対策してく事ある?氷と闇と光系統の魔法持った奴ら連れてくとか?」
「それなんよね…。」
魔法属性の術式効果には簡単に言うとそれぞれ、
火:物理的熱傷
氷:術式阻害、物理的凍傷
土:物理的創造
電:エネルギー効率上昇、物理的熱傷、行動阻害
風:術式構築速度上昇、物理的裂傷
暗:エネルギー吸収
光:肉体強化
みたいな効果がある。
効果の数に差異はあるものの、術式に込めるリソースに関しては一緒だから、それぞれ一点特化か汎用性かの差しかない。
んで、この中で魔法系統に妨害を掛けられるのが氷と闇、あと抵抗的な意味で光なんだけど…
「魔王スキルで作ったモンスターを連れて行ったところで意味は無いだろう。相手の魔術方面の格は既に管理者級だ。」
「…チッ」
横からCode.10が妃奈の案に苦言を呈す。
流石に反論はできなかったのか、妃奈は舌打ちだけして沈黙した。
…まぁでもそう言うことではあるんよね。
シミュレーションシステム上の魔法スキルは、
術者の魔法攻撃力×魔法スキルのレベル×肉体(SP量判定)-被術者の防御力×肉体(SP量判定)
でダメージが決定される。
んで、今回の案件では肉体ってところがちょっと問題で、SP判定が入った時、事実としてCode.10が対抗で負けるくらいの肉体を持ってたってことになると、魔王スキルで作れるキャラの肉体レベルじゃ普通に何もできない説があるんだよね。
マジで『それはメラゾー◯ではない、メ◯だ』をされる説があるし。
とはいえ、何も持たずに私らだけで戦いにいくのは勝率的にも今後のエネルギー消費の面でもあんま良く無い。
うーん。
あ。
あー、でも。
うん。
いや、まぁ一応やれるか?
「魔法系統で勝ち目があんま無いならさ、物理系統で強いモンスターならワンチャンいけんじゃね?」
「あぁ、逆に?」
「確かに…それなら勝てずとも仕事はできる。」
妃奈とCode.10が頷く。
物理攻撃はエネルギーを全てダメージに変換できる方法。
題して、魔法使いには戦士ぶつけんだよ!理論!
「因みに居る?そんな感じの奴。」
「んー。あ、そういやあいつめっちゃパワーに寄せた記憶あんな。」
「お?」
私の問いに逡巡した妃奈は、心当たりを思い出したのか、ポンと手を叩き、次いでベルを取り出し鳴らした。
「シュバルトー。」
シュバルト?
と、
後ろに気配
「お呼びでしょうか。魔王様。」
振り向くと、そこに居たのは老練な雰囲気を纏った執事服の男。
え、かっこよ…。




