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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第七章 ミクロな世界の交錯

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293 女神命令

怒涛の2/30連投


「と、言うわけでこちら本日の夕食になりますー。」


「わーい。」


ダイニングにプレートを両手で持って戻ってきた妃奈に私はやんややんやと歓声を上げつつ歓迎する。


「和風おろし鳥天丼と、赤出汁の味噌汁、あとお好みで塩と出汁をいくつか。」


「ブラボー!」


妃奈のプレートに乗っていたのはやや大きめのどんぶりに溢れんばかりに積み上げられた海老天、カボチャ天、オクラ天、さつまいも天、蓮根天、海苔天、紫蘇天。

具材を完璧な塩梅で包んでいる衣は金色の輝きすら幻視する。

下に敷かれたホカホカの白米が発する蒸気が上の天ぷら達の香りを巻き上げ、最高に芳ばしい。


「どうぞお召し上がりくださ「いただきます!!」


妃奈の言葉が途切れる前にもう私の腕は動いていた。


ちょっぷすてぃっくをハンドでホールドし、めんつゆベースのタレがかかった海老天をピックアップ、そしてそのままマウスにスローイン!!!






…おいしい。


…美味しい。


…oisii


…オイシイ。


口内にハピネス。


最高にデリシャス。


脱法にアンビシャス。


ハッピーでラッキーでアッピーなわっぴーがダンシン。


口内に広がる情報量


噛み締めると溢れ出す原初の多幸感。


コレはあれだ。


しゃおって感じのヤツだ。


えんびふらい原産の海老天だ。


うめぇ


うめぇ


私の頬が熱くなる。


私の感情の昂りに耐えきれなくなった涙腺が決壊した。


「え?女神様泣いてる?」


肩を震わせ泣き始める私に困惑した様にうろうろする妃奈。


まずい。


鼻が詰まったまま食べるのは料理に対する冒涜だ。


{「風魔法」の発動を確認しました。}

{「時空魔法」の発動を確認しました。}


「ちょおおおおおおおお!?!?!?」


鼻腺あたりを風魔法で消し飛ばした。


よし。


これで料理の味が損なわれることは無い。


嗅覚はちゃんと働いてるし、味も100%働いてる。


鼻の頭辺りがなくなったけど、問題はないだろう。


欠片も時空魔法でどっかに飛ばしたし、完全にモーマンタイ。


「え?いやちょ、は?女神様?え、え??」


何か妃奈が発狂してる気がするが、まぁ気にしないでおこう。


きっと思春期だ。


自身の感情と行動が制御できないんだ。


私は違う。


私は神として、全ての原初として自身のするべき事を最優先に最大効率でこなすことが出来る。


そう。


それ即ちこの天丼を食す事!


いざゆかん、グルメのダンジョンその奥の奥にまで!!



…。



「女神様の自我って少なくとも私ベースなんだよね?」


「そうだよ?それが妃奈のお願いだったわけだし。」


たらふく飯を喰らい尽くした私は、膨れる腹を抑えソファに寝転がりながら、同じく寝転がる妃奈の質問に答えていた。


「何かコピーする段階でミスでもあったんじゃないの…?」


「まっさか。私神ぞ?最上位神ぞ?妃奈の事は妃奈以上に知っている且つ完璧なコピーだと言い切れるね。」


私の言に妃奈はひどい頭痛でもするのか頭を抑えて顔を顰めた。


「ない!絶対ない!私はあんな食い意地が張った女じゃない!」


「えー?」


「えー?じゃ、ない!」


私の間延びした声に妃奈は頬をプルプルさせて反論してきた。


あのくらいの食への執着は普通じゃない?


まぁ、ちょっと人見知り設定は盛り過ぎた感あったけども。


「とにかく!今後はごはん食べるたびに体を欠損させるの禁止!女神様最終的に七割くらい肉体削れてたから!顔面とかほぼ舌と眼球くらいしか残ってなかったから!飯食うってそう言う事じゃねーから!」


「美味しい飯を作る妃奈が悪い。」


「じゃあ今後の飯はピータンの生焼きとかになるが?」


「いやまじすんませんした。ナマ言いましたごめんなさい。」


「…よろしい。」


妃奈の言に咄嗟に土下座をする。


いやまじ…うん。


今後妃奈には逆らわんとこ…。



…。



テレビには崩壊以前のバラエティが流れている。


芸人がドッキリをかけられている中、私は妃奈に出してもらったポテトチップスを頬張りつつソファに沈み込んでいた。


…やっぱ甘さ控えめ炭酸のがポテチには合うな…。


「…そういえば、Code.を集めるに当たってなんか計画とかある感じ?」


ポリポリやってると、同じく半分液状化してんのかってレベルでソファに取り込まれてる妃奈が聞いてきた。


あー。


Code.ね。


「まずは初代勇者関連以外をとってきたいねー…。えーっと、確かCode.6とCode.4…あ。」


「ん?」


途中で言葉が止まった私に妃奈が訝しげに聞き返す。


「Code.4君放置しっぱなしだった…。」




feat.グレイ


「…っは。」


目が覚める。


後頭部の砂利感と、全身が硬直する様な筋肉の軋み。


そして口内に残った胃液の後味。


「うえっ…ぐ、ゴホッゴホッゴホッ」


うめきつつ起き上がる。


もうすっかり夜は明けていたが、村の連中はまだグレイの状態に気づいていない様だった。


「…クソ。」


体が酷く重く感じる。


それは自身の服の状態によるものだけではないだろう。


魔王に何百と殺され続けた。


経験値の大部分をロストし、Code.4もCode.3によるステータスの補助ももう無い。


カートマンは完全に沈黙している。


魂を女神に弄られたせいなのか、主権は完全に自分に移ったようだった。


「…取り敢えず着替えるか…。」


自身の排泄物で汚損した服が気持ち悪くて仕方がない。


半壊した自身の家に戻ろうとした時。


「どうも。」


虚空から二人の少女が現れた。


片方はつい昨夜グレイの心にトラウマとして刻みつけられた魔王その人。

そしてもう一人の少女は魔王とほぼ全く同じ容姿で、色だけが反転したように純白の姿だった。


白い少女はなぜか片手にポテトチップスの袋を抱えており、中身を頬張りながらグレイを柔和な表情で見ていたが、突如として微妙な表情になり、持っていた袋を魔王に手渡した。


それに魔王は呆れたような表情で袋を受け取った。


そしてその少女は微妙な表情のまま即座に口内のポテトチップスを飲み込み半歩下がってグレイに言い放った。


「とりま着替えて風呂入って臭いとって。これ女神命令ね。」


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