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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第七章 ミクロな世界の交錯

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291 (強制)


「オッケー。ほいじゃそいつ殺しゃいいのね。」


妃奈が椅子から立ち上がると同時に、その背後に泥人形のようなものが形成される。


{「時空魔法」の発d「はいキャンセルで。」


「うお」


意気揚々とCode.1の元に行こうとした妃奈の手を取って再び椅子に座らせる。


歪みかけた空間が元に戻り、背後の泥人形は泥のまま崩れ落ちた。


「…それが問題2とやらか。」


石田が部屋の隅に投げ捨てられたままの妃奈の腕をチラリと見つつ、こちらに視線を戻す。


「その通り。これが問題2、Code.1を持っていられるだけの容量がある奴がいない。」


「…一応そこの2体はそれなりの魂の容量設定して出してみたんだけど。」


妃奈が後ろで崩れ落ちた泥人形の残骸を指さして言う。


「…多分足りない。」


「マ?」


「概要は知ってるとは思うんだけど、Code.1は昔の私を原初の女神たらしめてたエネルギーの根源みたいなもの。ほいで、こいつはCode.2の世界エネルギーみたいな別のエネルギータンクがあるわけじゃなくて、完全にその権能本体で確立されてる。覚醒前の圧縮した状態ならいざ知らず、私達みたいにある程度の容量があって且つ他のCode.を保有してたりすると相互作用で勝手にCode.1が解凍されちゃうわけ。」


「それで解凍された瞬間エネルギーに耐えきれず容量が全部埋まってドカンか。」


首をすくめる妃奈。


「では何故その権能に人類が耐えられている?解凍前とはいえど今の人類には過剰な力だ。」


石田が問いかける。


「多分、理由は二つくらいあると思う。一つ目が、(欠片保持者)の称号。私は権能の問題を無理矢理SP増やす感じで解消して、システム上で保護するようなものを作ってないから多分人類とか魔物にCode.がわたる過程でシステムの負荷が上がらないように自動生成されたやつなんだけど、アレにはそれぞれのCode.の権能に対応したそれぞれのプロテクトみたいな奴が働いてる。…鑑定文の『システム制御コードを保守し』ってとこがそれかな。で、おそらくCode.1の(欠片保持者)はエネルギーをそのまま魂の防御にあててそれぞれを相殺するシステムの自爆と同じような効果が働いてる筈。」


「私らがその称号を獲得しちゃダメなん?」


「私達管理者はそもそもシステムから脱却してる。ツールとしてスキルを利用することは可能だけど、そもそも称号はシミュレーション内で内部で動くキャラに特有の動きと役割を与えるためのものだから端から管理者に付与できるように作ってない。」


「一応私にも(管理者)と(魔王)っていう称号があるんだけど?」


口を窄めて自分のステータスをいじる妃奈。


「妃奈と石田のシステム上の役割はそれだからね。でも逆にいえばそれで役割が固定しちゃってるから妃奈も石田もそれ以外の称号は獲得できないし、私に至ってはステータスすらないから称号を私に付与することはできない。…と思ってたんだけども。」


「…思ってた?」


私の言に妃奈が首を傾げる。


「仕様的にお前は取れるんだよね。お前。」


会議開始からずっと縮こまって沈黙していた男を指差す。


「ヒィ」


情けない声を再びあげ、私の指先から逃れる様にさらに縮こまる。


「あー、そいつ気になってたんだよね。ここ1000年一回も会わなかったけど、明らか管理者っぽいし、石田の部屋には来てたみたいだけど。…何?おっさん◯ラブってこと?」


「んー。ラブかは個人の自由として、お前Code.10本体だよね?」


「…!」


私の言に石田が目を見開き、男はさらに萎縮する。


…このシミュレーション構築初期、そも地球に魔術を組み込む前、システムの管理にあたって新たに作り出した権能、それがCode.10だ。


地球という極小範囲で利用する簡易の権能といえど、逆にいえばその範囲内ならば他のCode.と同様に作用する権能でなければならない。


そう。

創世時、私を形造る上で付与されたこの世界自体の管理権限、零号が作り与えたそのものを作り出さなくちゃならなかった。


まぁ当然の様に普通の方法じゃ無理だった。


悩みに悩んだ私はシステムに意志のない神格を組み込み、そいつにシステムを運用させた上でそれの空っぽの権能に接続する形でCode.10を作り出したのだ。


んで、その神格が1000年間起こりまくったイレギュラーのせいでどういうわけか意思を持ち、地上に現れてる。


多分本体は別に有るから複製体みたいなものだろうけど、こいつの実態がCode.10そのものであることは間違いない。


まぁ私もさっきその正体の見当がついたんだけども。


うーん。こいつ初期は黒いスライムみたいな奴だった筈なんだけどなぁ。


まぁおっさんが天使やってて女子大生が魔王やってる世界だし、スライムもおっさんになるか。


とまぁそんなことは置いといて。


何が不味いって、Code.10だけど、こいつは神格といえどそもシステム由来の存在だから称号が獲得できる。


元よりCode.1はシステム運用のために使うつもりだったから、なんのトラブルもなかったならそれでよかったんだけど、ご存知の通りトラブルは起こっちゃった。


となるとこう今のこのCode.1という剣はあるんだけどそれに誰も手出しできず膠着状態になるっていう三すくみの形態が崩れかねない。


この会議中は石田やけに従順だけど、どうせ腹に一物抱えてるだろうし、どうもCode.10が石田派っぽい雰囲気を出してる以上、先手を打っといて損はない。


「それマジ?じゃあとりまこいつだけ先殺しちゃう?」


「ま、まま待て、もし私を殺そうものなら溢れたエネルギーが悲劇の引き金になりかねないという事をきちんと考えるべきだ!」


腕を振りながら立ち上がる妃奈に両手をわたわたさせながら叫ぶCode.10。


「今ここにいる肉体も本体ってわけじゃなさそうだし、これを物理的に叩いても無意味だろうね。」


「む…じゃどうすんの?」


「こうします。」


「わ」


{エラー。システム外の攻撃です。}

{エラー。システム外の攻撃です。}


妃奈と石田が意識を失い椅子に倒れ込む。


石田はどうでもいいけど、妃奈の尊厳は守らなくちゃね。


石田も眠らせたのは単純な学習の結果に過ぎないのだよ。


発動!ゴッドパワー!


私の肉体が変容する。


顕現するはかつての女神の肉体。


魔術的に、これをするならこっちの肉体のほうが何かと都合がいい。


完全に青ざめたCode.10に手を差し出す。


「僕と契約して魔法少女になってよ。…なんちゃって。」

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