Code.1(22)
怒涛の4/10連投
あのダンジョン事件から随分と月日が経った。
とはいえ、その間これと言って大きな事件は起こることもなく、魔物討伐外部実習や、冒険者の講演会、ギルド見学など、異世界学園にしてはややリアル嗜好なプログラムをこなしていた。
実技試験や筆記試験など、それなりの難所はあったが、俺もエイも、どうにか頑張ってなんとかレミウルゴスもその壁を突破してきた。
結果として、俺らは中等部に進学していた。
中等部のクラス割は、初等部の入学試験の時と同じ場所に貼られる。
「よーう、ユーリーン。またおんなじだなぁ!」
「私も同じです!」
1-Aに俺の名前がある事を確認していると、肩部に圧迫感。
背後から抱きついてきたのは初等部から随分身長が爆伸びしたレミウルゴスだった。
隣にはエイもいる。
「レミウルゴス…お前もう初等部のあれに懲りたらちゃんと筆記も頑張れよ?中等部からはもっと大変になるんだからさ。」
レミウルゴスは、確かに実技に関しては右に出るものがほとんどいない程に特出した才能がある。
が、彼の才能パラメータはそのフィジカルに特出され過ぎて座学の方はとことんダメだったのだ。
毎度テストの度に俺とエイが図書館に呼び出され、テスト範囲の講座を1からさせられていたのだ。
一応報酬は出ていたのだが…。
「そうですよ、レミウルゴス君。中等部からは報酬の帝都アイスを2本に増やしてもらいますからね。」
エイが口を尖らせて言う。
「それって…二人で計算か?」
「一人ずつに決まってるじゃないですか!」
「うわああああああああ!」
エイの抗議に頭を抱え、レミウルゴスが崩れ落ちる。
今年も楽しそうでなによりだ。
…。
…では、以上だ。何か質問ある者。…ではHRを終了する。」
1-Aの担当になった男教員がクラス名簿を閉じて初回HRを終わる。
去年まではAクラスはサラ先生が担当していた筈だが、やはり中等部となるとまた別の先生が出てくるんだな。
…いやまぁそりゃそうか。
同じ学校とはいえ、初等部と中等部は別の施設。
教員は一新されて然るべきだろう。
男教員が部屋から出て行き、教室が一気に喧騒の中に陥る。
先生がいなくなった瞬間大騒ぎになるのは異世界も地球も初等部も中等部も変わらないらしい。
と、ここでいきなり教室のドアが開かれる。
一気に教室が静まり返った。
入ってきたのは先ほどの男教員だった。
…これもあるあるか。
「諸君、静粛に!中等部に上がったのならそれ相応の落ち着きを見せたまえ。」
壇上に上がってきた男教員が一喝する。
前世でも今世でも、死ぬほど見た光景。
子供は目先の楽しさには敵わないのだ。
そんな事を考えていたら、ついで男教員が紙を取り出した。
「…そしてすまない。お知らせがもう一つ。以下の生徒は、午前のガイダンスが終了次第3ーK教室に行く事。
レーニン・ユーリーン、
ハンス・リメライン、
アーミン・ジェクト、
アーク・サイパー
エイ・セトレス
ハルド・レミウルゴス
以上だ。解散。」
教室から男教員が出ていく。
廊下を遠ざかっていく靴音をある程度まで聞いたところで、再び教室がざわめき出した。
「何でったって放課後に行かなきゃならないんだよ、なぁユーリーン。」
「レミウルゴス君がいるってことは成績上位者が集められてるわけでもなさそうですしね…。」
「それまぁまぁ傷つくんだが…。」
「ははは、勉強頑張ろうぜ。」
げんなりしたレミウルゴスに、楽しそうなエイ。
誰一人として今日呼び出された原因など気にしていなかった。




