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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第七章 ミクロな世界の交錯

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Code.4 (8)


{今日はすぐ返すんだね…。}


ハルド親子を返した後、一人貰った部屋でくつろいでいると、脳内から言葉がかけられた。


精神世界のグレイ・カートマンの魂本体だ。


はぁ。


ため息をつく。


世界の真実を、Code.の概要を説明し、かつCode.4で肉体の主導権を獲得してなおこの存在は消滅しなかった。


真実を知った直後は、完全に意気消沈し、存在すら自ら消そうとしていたが、結局カートマンは生き残ってしまった。


理由はごく単純。


(こっち)がCode.4の起動によって存在を確立できているのなら、カートマン(あっち)はCode.3、女神様の分身の欠片によって存在を確立させられている。


お陰で今のカートマンの肉体にはCode.4由来の僕とCode.3由来の僕が同居している状態になってしまった。


権能の力で固定されてはいるものの、魂の在り方としてはこれは極めて不安定だ。


早急にカートマンの魂を排除しなくてはならないのだが、女神様の完全なる同化がなされるまではそれも難しいだろうと思う。


それまではこの要領の悪い男と共に生きていかなくてはならない。


はぁ。


再度ため息をつく。


あの年の少女なら話術だけで十分掌握可能なんだよロリコン野郎。


{なっ…なっ…!君がいつも奔放に…むぐぐぐぐ}


精神世界にダイブし、カートマンの口を縄で結ぶ。


こっちの方針にいちいちギャーギャー騒がれてたらたまったもんじゃない。


カートマンからの干渉を完全にシャットアウトし、村長の蔵書から喜んで貸してもらった物を開く。


シミュレーション用に退化させられたとはいえ、1000年の月日とスキルという新技術を得た人類文明は、いくつかの分野においては崩壊前と同等かそれ以上の発展を遂げているものがある。


例に挙げるとするのならば、農作やエネルギー。後、武術や一部建築などで顕著な発展が見られる。


魔力や個人が作り出し、利用できるエネルギーがはるかに増大したことにより、いくつかの物理法則や維持のプロセスを色々すっ飛ばして考えることができる様になったのが1番大きな要因なんだろう。


また物質的な点においても魔物という自然法則に則らない構造を持ち、且つその運用が可能になっている観点から造形方向にも技術が進歩しているのが見て取れる。


とはいえ、旧人類文明のネットワークによる集合知がないこの世界では個人の持つ技術で、かつ再現性や拡散性において一般普及もなされないために結局中世ヨーロッパ程度の世界観が保たれているのが現状な様だった。


コンコン


この世界についてさらに詳しく情報を蓄えていると、唐突に扉がノックされた。


「はい。今開けますね。」


持っていた本を閉じ、村の人間に見せている“グレイさん”の仮面を被る。


村の人間は老若男女全て手中に収めたと言っても過言ではない。


まだ言葉を理解していないような赤子などは対象外だが、それらも親から僕に忠誠を捧げるよう洗脳されるだろう。


今の時刻は深夜2時半。


この時間に訪れてくるのなら、相手は村の女だろうか。


万人受けする表情を作りながら扉を開けた。


と。


ドス


「ん?」


腹部に熱い痛み。


ノックが聞こえた位置から逆算しておそらく相手の姿があるであろう場所に向けた眼球は夜の闇しか写さなかった。


視界の下隅に映るのは、夕方あたりに見た染められた白髪。


確かあの時は母親に抱かれていたはずだ。


そもそも歩けるかさえもわからないような存在だったと記憶していたが…。


「仮面をかぶってたのは…僕だけじゃなかった様だね。」


的確に肝臓を刺し貫いたナイフが捻って引き抜かれる。


噴水の様に吹き出る鮮血を浴びない様に横っ飛びに躱した少年、ハルド・レミウルゴスは、冷たい殺意のこもった目で僕を見据えていた。


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