282 100回死ぬ。
魔王城第59階層。
燦々と照りつける太陽の下、ゴシキンジャーは全員集合していた。
んなんかみんな服装が変わってんだけど、そんなに激闘だった?
{いや、私たち一応街の方まで行く関係上ワンチャン人と会いかねなかったからね?}
え?
うん。
{オリジナルが作ったTシャツオンリーで人とエンカウントしたら最低でも痴女の謗りは免れねーから!}
{それに世界観的にもTシャツって絶対目立つしな。}
{まぁ白髪白眼の時点で目立つような気もするけど…。}
あちゃぁ。
あはは…。
その質素な服装は各々の試行錯誤の結果だったわけね。
…そいじゃ、取り敢えずその最終報告だけお願いしやす。
{おk。}
{とりあえず、Code.2を保持してるやつの名前は安曇真澄。システム開始以前からいる初代Code.2保持者が今日まで生き残ったっぽいね。今は石田の庇護下で魔法学校の教師をやってる。}
{んで、Code.4の奴の名前はグレイ・カートマン。ちょうどCode.3を持った分体を取り込んで起動まで終わってるっぽい。帝都近くの森に拠点をつくっといてくれるっぽいから同化後はそっちに行く方がいいかもね。}
{Code.5は2の子と同じようにシステム開始以前からいる子で、名前は前村龍樹。さらに同じく今は石田の庇護下にいるっぽいけど、この子は最近までまた別のとこにいたっぽい。権能の性質的に庇護下に入る以前のことは調べた方がいいかも。}
{Code.6は北部高原にいる亜人型の魔物でした。権能の解放はなされていないようでしたが、欠片保持者の称号により魔法スキルのレベルがとても高く、強敵でした。}
{Code.1なんだけど、結局最後までどこにあるかわからなかった。}
ふむふむ。
Code.1は結局なかったわけね。
{いや…ごめんマジ。}
まぁしゃーないわな。
石田の動きを考えてもCode.1を発見したわけじゃなさそうだし、もし見つけてるんだとしても厳重に隠すだろうし。
この問題は同化後にどうにかしますかね。
…とりあえず、これで必要な情報は揃ったね。
鑑定にその情報は入った。
そいじゃ始めますか。
処刑のお時間です。
…
{「極闇魔法Lv.4」を起動しました。}
{「獄炎魔法Lv.5」を起動しました。}
{「獄氷魔法Lv.5」を起動しました。}
3種類の獄閻魔法が起動される。
五号の身に刻まれた鑑定が魔術の枠組みの設定を補助し、魔法陣がゆっくりと形成されていく。
赫と蒼の魔法文字が円となり環となりあたりを照らし、暗黒の魔法陣が空に展開された。
曇りを知らない砂漠が魔術に翳り始めた。
死亡後の転生において、システムの選別にあたって「傲慢」の称号がネックだった。
はるか昔、オリジナルがウイルスに逆襲された時に得た称号。
傲慢の称号は、死亡時に与えられる転生先の決定をする信号のようなもの。
「傲慢」にあたっては、そのような死に方をする者が次の生でシステム的に重要な役割を得ないように得られる肉体がランクダウンする効果がある。
それが払拭出来るまでの死亡回数は100回。
転生する前にオリジナルを100回殺す。
それが五号に与えられた使命だった。
獄閻魔法は、簡易的な輪廻システムが組み込まれている。
これは、主にダンジョンなどを作成するツールとして獄閻魔法が作られたことに起因する。
ダンジョン内で死んだ生物の経験値は、それを殺した存在がいない場合ダンジョン内でポップする別の生物に振り分けられる。
この際の魔術的な回路は詳しく配置する必要があるが、そのベースとして獄閻魔法の特性、「獄誘」効果がある。
擬似的な蘇生能力のある「獄誘」効果は獄閻魔法上で対象が死亡した時一時的にその肉体を生前と同じように再構築する。
この際魂も同時に存在する場合魂はその肉体に縛られ、システム的に生存扱いとなるため、再度肉体が崩壊し、HPが0になる瞬間にまた死亡と判定される。
58層に転移した際、壁にくっついた触手の欠片がサラの姿をしたのはこれが原因であった。
そして、今回オリジナルの同化に使用する魔法が獄閻魔法なのもこのためだった。
すなわち、
「獄閻魔法にてオリジナルを文字通り100回殺す。」
これが五号に与えられた最後の任務だった。
山:(傲慢)については77話くらいでしてます。
ア:ずいぶん昔の設定を持ってきましたね。
山:投稿してから数えると二年ちょっと、下書きから数えると五年ぶりの再登場ですわ。




