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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第六章 ミクロな世界の真実

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過去編 第二章 私の場合 ③


夕暮れ時。

校舎裏。


私の前にいるのは名前も知らない男子生徒。


多分三年かな。


わかんねーや。


その子は頭を下げて私に向けて手を伸ばしている。


状況から何となくさっせたと思うけど、これはアレだ。


告白とか言うやつだ。


今どきこんなテンプレみたいなノリで来られるとは思わなかったけど。


男子生徒は腕をプルプルさせながらずっと俯いている。


おおう。

すまんね。

長考し過ぎた。


男子生徒の手をゆっくりと下ろす。


ビクッと体を震わせこちらを見上げる彼。


顔は真っ赤になっている。


「ごめんなさい。」


笑みは崩さず。

できるだけ温厚に。


すまない名も知らぬ男子生徒よ。


私は家にいる根室妃奈(ニート)の世話をしなければならないのだよ。


私の断りの言葉を聞いた男子生徒は、真っ赤にした顔をさらに震わせ、消え入りそうな声で「ありがとうございました」とだけ言って去って行った。


一人ポツンと残される私。


カバンを漁る。


中にはまだ幾つかのラブレターが残っていた。


うーむ。


今日の分の呼び出しはもう終わったか。


カバンを背負い直し、校門に向かった。


ため息をつく。


…どうやら、私がかけた認識阻害が崩れかかっているっぽい。


原因は多分昨日の石田の記憶改竄。


あいつの魔術の扱いがまだ拙かったのか、それとも私への配慮だったのか。


事故か故意かはわからないけど、私の姿の一部が元に戻ってるっぽい。


こんなになってるけど、私はこれでも神だ。


そう。神なのだ。


上位存在なのだ。


私の素の姿は石田の例にもある通り、人間が直視できる程度の情報量で完結しない。


よって姿形、DNA、果ては魂の在り方まで忠実に根室妃奈をコピーしようとも私の本来の情報量が浮き出て完璧な人間の根室妃奈になることはできない。


それは根室妃奈との契約違反になる。


だからそこを認識できないように認識阻害をかけてたんだけどなぁ。


イメージで言うと、私が元々かけてた認識阻害は魂の視力を極端に下げると言った感じのものだ。


精細度を失わせるって言った方が正しいかな。


私自身の情報量を認知できないようにそもそも脳に情報を認知できないようにする。


ただのイメージとして捉えて欲しいんだけど、例えば視力1.0で私の姿が100%見える状態になってしまうとしたら、視力を0.1

くらいにして私の姿情報のうちの10%だけを知覚させるって感じ。


その逆眼鏡みたいな認識阻害が緩んで、今私を見る人間からした認識阻害が視力0.4くらいしか抑えられなくなってる。


単純計算情報量4倍。


顔面偏差値は正確な数字で測れるもんじゃないとは思うけど、ある日突然隣の陰キャが4倍イケメンになったらどうなるか。


今その現状コレ。


はぁ。


いや別に、ただモテるだけならいいんだよ。


確かにめんどくさいけど、青春って感じでいいじゃん。


問題はこれ。


「おいテメェ。」


今私はおそらく同級生と思しき女子生徒達に壁ドンされている。


足で。


私を囲う女子生徒は四人。


帰り道の途中の路地で今やられてる。


「お前さ、流石に最近調子乗ってね。」


「急にモテ期が来たとかイキってんじゃねぇぞ陰キャ。」


恐ろしい。

女の嫉妬というものの片鱗を味わっているぜ。


どうやら私がごめんなさいした相手の中にこの子らの逆鱗に触れる奴がいたようだった。


「どうせこの中シリコンばっかなんだろ、え?」


女子生徒のうち一人、姫カットが私の顔をつねりながら顔を近づけてくる。


「えー、でもこいつそんな金持ってなそー。」


「体売ってるとか?」


「あーw確かにパパ受けしそうだわ。」


半笑いでオカッパ頭の女子生徒が私のカバンをひっくり返し中身をぶちまける。


「うっわ。あんた大切にラブレター保管してんじゃん!」


「えらーい。」


「そんな優しいのに男は振るんだ。」


「あれじゃね?好意を受けてるっていうのできもちよくなってるタイプ。」


「うっわ。」


「こんなブスの自己肯定感のオカズにされる男の子たちかわいそー。」


あー。


このまま黙ってやり過ごしてもいいけど、この体が傷つくと妃奈怒るしな。


ふっふっふ。


ぱっと見只の女子高生。

だがその正体は!


見せてやろう。

私の真の実力を!


「智かぶー。」


いて。

舌噛んだ。


おのれ姫カット。


いつまで顔面触ってんだ。


「ハァ?」


「お前の彼氏?こんなとこで呼んだってこねぇよ。」


私の声に薄く笑いながらミディアムヘアが私の腹を蹴る。


「ゴフッ」


鈍痛。


いやお前初手で蹴るやつあるか。


ビンタでしょ女の喧嘩の初手って!


前屈みになった私の髪を掴み、セミロングが顔を近づけて言った。


「あはっ。お前、その顔でパパにあった方がいいんじゃない?多分お金出してくれるよ。」


そう言って髪を掴んだまま私を突き飛ばした。


地面に転がる。


さらに追撃を加えようと女子生徒達が群がってくる。


と。


「ガフッ」


一番後ろにいたオカッパ頭が突如横に吹き飛ばされた。


一瞬の悲鳴に女子生徒達が振り向く。


そこには根室智和の肉人形が立っていた。


オカッパ頭は智和の足の下で伸びてる。


「えっ」


たじろぎ、状況が把握できていないセミロングが声を上げる。


智和は体勢を低くし、接近したのち下から突き上げるようなアッパーカットを繰り出した。


成人男性175センチ体重80キロから放たれる全力の拳。


セミロングは紙切れみたいに吹き飛び、姫カットとミディアムを巻き込んで転んだ。


セミロングを押し除け慌てて立ちあがろうとするミディアム。


が、うまい具合に手足が絡まり起き上がれない。


それに馬乗りになった智和は五発ほど顔面に拳を入れる。


歯と血が周囲に飛び散った。


残った姫カットが私の方に縋ってくる。


「ねぇちょっとねぇ!誰あいつ!あんたの彼氏?やめさせてよ!ねぇ!聞いてんの!?」


泣き叫ぶ姫カット。


が、智和は容赦なかった。


私から姫カットを引き剥がし、持ち上げる。


悲鳴を上げようとするがその前に智和が口を塞いだ。


そしてそのまま顔面を掴み姫カットを地面に叩きのめした。


この間わずか30秒足らず。


残るは地面に泥だらけで座る私と若干の返り血を浴びた智和肉人形だけだった。


地面に転がるボロ雑巾達を触る。


うーん。


大丈夫か。

生きてるね。


いやー。

智和つえー。


さすが毎日妃奈をサンドバックに鍛え上げた体だわ。


つーかこんな暴力を妃奈は受けてたの?


最悪だなこいつ。


しかしてこれは大変好ましくない。


少なくとも妃奈が望むような生活代行になってない。


ラブレターもらっては放課後に不良グループを叩きのめす生活ってどこの魔法少女だよ。


うーん。


どうしたもんかな。


智和に返り血を処理させ、帰路に着く。


気付くと、家の前についていた。


鍵を開け、中に入る。


「おかえりー。」


間延びした声が聞こえた。


「ってえ?服めっちゃ汚れてね?」


階段から降りてきた妃奈が私をみて驚きの声を上げる。


「引っ越すか。」


「へ?」


「引越しします。」


「うぇ?」


私の言葉に妃奈は素っ頓狂な声をあげた。


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